6月下旬頃から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の陽性者数が増えてきています。行動制限の緩和によるウイルスの伝播はある程度予想されていたことですが、連日テレビでは専門家もそうでない人もいろいろな見解を述べ、不安になるばかりです。
僕もSARS-CoV-2と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を知りたくて、少しづつ本を読んでいて、「コロナの時代の僕ら」もその1冊です。
作者のパオロ・ジョルダーノは「素数たちの孤独」の筆者です。「素数たちの孤独」は偶数を挟んで隣り合う双子の素数に重ね、近づけど決して交わらないふたりを描いた恋愛小説で面白かったです。素粒子物理学を専攻したジョルダーノが、COVID-19に関するエッセイを書いているというので読みました。
このエッセイは、今年の春、感染爆発が起こり非常事態宣言が出されたイタリア・ローマで書かれています。
ジョルダーノはCOVID-19の専門家ではありませんが、科学的な視点で冷静にそれでも異常事態のもとで様々な考えが書かれています。
下の引用はエッセイの最後に書かれた一文です。恐らく、ジョルダーノが書くようにSARS-CoV-2の陽性者が増加すれば行動制限し、減少すれば緩和することを何度か繰り返し終わりを迎えるのでしょう。そしてSARS-CoV-2は、新型インフルエンザといわれたA/H1N1pam2009のように定着してしまうと思います。
ただ、その時に次に起こる他の病原体によるパンデミックに僕らは備えられるかというところですね。
もっとも可能性の高いシナリオは、条件付きの日常と警戒が交互する日々だ。しかし、そんな暮らしもやがて終わりを迎える。そして復興が始まるだろう。
支配階級は肩を叩きあって、お互いの見事な対応ぶり、真面目な働きぶり、犠牲的行動を褒め讃えるだろう。<中略>一方、僕らはきっとぼんやりしてしまって、とにかく一切をなかったことにしたがるに違いない。<中略>
もしも、僕たちがあえて今から、元に戻ってほしくないことについて考えない限りは、そうなってしまうはずだ。まずはめいめいが自分のために、そしていつかは一緒に考えてみよう。僕には、どうしたらこの非人道的な資本主義をもう少し人間に優しいシステムにできるのかも、経済システムがどうすれば変化するのかも、人間が環境とのつきあい方をどう変えるべきなのかもわからない。実のところ、自分の行動を変える自信すらない。でも、これだけは断言できる。まずは進んで考えてみなければ、そうした物事はひとつとして実現できない。
コロナの時代の僕ら 114~115ページ/パオロ・ジョルダーノ/飯田亮介(訳)
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コロナの時代の僕ら
パオロ・ジョルダーノ(Paolo Giordano) 訳:飯田亮介
早川書房/2020
・ 書籍の紹介一覧 B0156


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