X線天文衛星ASTRO-H「ひとみ」の運用は断念された
2月17日の打ち上げ、軌道投入に成功したものの、その後、通信が途絶え制御不能になっていたX線天文衛星ASTRO-H「ひとみ」の運用を、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は断念しました。
姿勢制御系コンピューターの誤作動により、実際には衛星が回転していないにもかかわらず回転を止めようし、逆に衛星が異常に回転し、回転状態で発生する力に対して弱い太陽電池パドルの一部や伸展式光学ベンチ(EOB)などが破断して分離しまったと推定できるそうです。
・ X線天文衛星ASTRO-H「ひとみ」 ※ JAXAの画像に文字を加筆
何にでも失敗はつきもので、失敗があってこそ進歩があるのだけれど、今まで見ることのできなかったブラックホールの周辺の状況が観測できなくなって残念です。
関連エントリー:X線天文衛星ASTRO-Hの名称は「ひとみ」 (2016.02.17)
X線天文衛星ASTRO-H「ひとみ」の今後の運用について
X線天文衛星ASTRO-H「ひとみ」については、異常事態発生後、理事長を長とする対策本部を設置し、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)をあげて不具合の全容解明を行うとともに、衛星状態の把握に努め、衛星の機能回復に向け全力を尽くしてまいりました。しかしながら、JAXAとして技術的に検討した結果、以下2つの結論に至りました。
(1) 物体の分離に至る推定メカニズムについてシミュレーションを含めた解析の結果がほぼ確定し、構造的に弱い部位である太陽電池パドルが両翼とも根元から分離した可能性が高いこと。
(2) 物体が分離した後も電波を受信できていたことを根拠とし、通信の復旧の可能性があると考えていたが、得られた電波の周波数が技術的に説明できないこと等から、受信した電波はASTRO-Hのものではなかったと判断されること。
また、複数の海外機関からも太陽電池パドルの両翼分離を示唆する情報を得たことから、これらの情報に基づき、今後衛星が機能回復することは期待できない状態にあるとの判断に至りました。
以上の判断を踏まえ、衛星の復旧に向けた活動は取りやめ、今後、今回の異常に至った原因究明に専念することとし、ASTRO-Hとしての設計/製造/検証/運用の各段階において今回の事態に至った要因を調査し、背後要因も含めた原因を徹底的に究明いたします。
2016/04/28/国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
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