木材の酸素同位体比によって1年単位で年代が決定できるんですね
静岡県埋蔵文化財センター主催の総合地球環境科学研究所 中塚 武教授の講演「気候と歴史の関係から何を学ぶべきか?」を聞いてきました。
・ 歴史記念講演「気候と歴史の関係から何を学ぶべきか?」パンフレット/静岡県埋蔵文化財センター
中塚さんは遺跡から出土した木製品などの年輪に含まれる酸素同位体比を分析して、過去2000年以上の日本列島の気候の復元に取り組んでいる研究者です。
木材の年輪に含まれる酸素のほとんどを占める16Oとそれより重い同位体18Oの比を調べることによって、4300年前に遡って年単位(精度を上げれば月単位)で年代を決定できるようです。
月単位になんてできるのかと最初は思ったけれど、講演で紹介された最近の実測した月単位の湿度のデータと酸素同位体比の数値の推移が同じ傾向を示しており、過去に遡って同位体比から湿度が推定できたらすごいことだと感じました。
今のところ日本では降水量のデータが復元できているとのことです。
このことによって過去の気候変動の様子がわかり、古文書などに記録された史実と照合すると、大きな歴史的な出来事と気候変動の関連が推察されるそうです。
面白かったのは、飢饉や政変など大きな出来事の起きる前の数十年間は比較的気候が安定した期間であったこと。そして、その間は作物の収穫量が増えるとともに、技術や社会システムが洗練され環境収容力(人を養える力)が大きくなるそうです。そして、その状態で気候変動が起きると作物の生産量が落ち環境収容が下がり、社会が混乱し歴史的な出来事が起こるという推察です。
この講演を聞いていて、もしかしたら現代は気候変動による環境収容力が低下するところにきているのかもと思いました。
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