食品中の放射性物質の暫定規制値が見直されるそうだ
厚生労働省が来年4月を目処に食品に含まれる放射性物質の暫定規制値の見直しに着手したと、少し前の時事通信が報じていました。
放射性物質の食品衛生法上の暫定規制値は、福島第一原子力発電所の事故にともない急遽、2011年3月17日に原子力安全委員会の「飲食物の摂取制限に関する指標」(原子力施設等の防災対策について)を基に決められたものだから、しっかりと議論し見直されるべきものなのでしょう。
参考資料
・ 原子力施設等の防災対策について (1980.06 最終改定 2010.08)/原子力安全委員会 PDF 2.50MB
・ 放射能汚染された食品の取り扱いについて (2011.03.17)/厚生労働省医薬食品局食品安全部長
見直しは、10月に食品安全委員会が公表した「放射線量による影響が見いだされるのは、通常の一般生活において受ける放射線量を除いた生涯における累積の実効線量として、おおよそ100mSv以上」を基に行われるようです。
その100mSv以上の判断に至った経過は、食品安全委員会の「評価書 食品中に含まれる放射性物質 (2011.10)」に詳しく書かれています。
参考資料:評価書 食品中に含まれる放射性物質 (2011.10)/食品安全委員会 PDF 1.52MB
評価書を読むと数多くの報告を参考にしていますが、低線量放射線による健康影響の確固たる知見が少ない中での100mSvの設定になっています。また、100mSv未満の影響については、知見が少ない中で言及をしていません。
それだけ、低線量放射線の影響はわかっていないということなのでしょう。
現時点の放射性セシウムの暫定規制値は、飲料水、牛乳・乳製品が200Bq/kg、野菜類、穀類、肉・卵・魚・その他が500Bq/kgとされています。
この基準は実効線量5mSv/年を基に定められています。食品安全委員会が示したは100mSv/生涯で基準とする時間が違うけれど、新聞記事にあるように新しい基準は、現在の暫定規制値の1/5程度になるのだろうか。
それと、食品安全委員会の基準は実効線量のシーベルト(Sv)、暫定規制値は放射能のベクレル(Bq)と単位が違い核種ごとにベクレルからシーベルトに換算が必要でややこしいですね。
また、放射性セシウムの現在の暫定規制値は、○飲料水 ○牛乳・乳製品 ○野菜類 ○穀類 ○肉・卵・魚・その他の大雑把な5分類ですが、新たに設定される基準はもう少し食品ごと細かいものになるのだろうか。
規制値見直し着手=食品の放射性物質―厚労省
厚生労働省は31日、薬事・食品衛生審議会を開き、食品に含まれる放射性物質の暫定規制値の見直しに着手した。食品に含まれる規制値については現在、放射性セシウムの上限を暫定的に年5ミリシーベルトとしている。小宮山洋子厚労相は「年1ミリシーベルト」と5分の1にして規制値を厳格化する方針を打ち出している。来年4月にも新しい規制値を設ける。
内閣府の食品安全委員会から食品に含まれる放射性物質が健康に与える影響の目安として「生涯の累積線量がおおよそ100ミリシーベルト以上」との答申を受けた措置。審議会では「安全委の評価結果を基に新しい規制値を設けるのは難しい」との意見もあったが、厚労省は「規制値を厳しくしてほしいとの意見も参考に、見直しを進めていかないといけない」としている。
2011/10/31/時事通信
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