インフルエンザ パンデミック/河岡義裕,堀本研子
インフルエンザ パンデミックの表紙は、細胞に感染したパンデミックH1N1 2009(新型インフルエンザ)ウイルスの写真です。
ただ、この本を読み進めるまで、これがインフルエンザウイルスの写真だとは気がつきませんでした。
僕が目にするインフルエンザウイルスの写真や模式図は球形をしているので、紐状に絡み合って細胞に取り付くなんて思ってもいませんでした。
この本によると、実験室で何度も継代させたウイルスは球状になることが多いんだけど、患者から分離したばかりのウイルスは紐状なんだそうです。
細胞の表面にカビのように絡み合ってへばりついている姿は、なんともすごい光景です。
「インフルエンザ パンデミック」は東京大学医科学研究所の河岡義裕の監修のもと部下の堀本研子が執筆したもので、インフルエンザの基礎的なことから最新の研究の状況まで素人の僕が読んでもわかるように書かれています。
河岡さんの一般向け本は、以前このブログでも紹介した「インフルエンザ危機」(2005年)以降出ていないんじゃないかな。
もっとも、第一線の研究者は研究に忙しくて一般向けの本など書いている暇はないののでしょうね。
「インフルエンザ パンデミック」は、面白かったです。現在、感染を拡大しているパンデミックH1N1 2009 について、そういうことだったのかと思う箇所が随所にありました。
例えば、今回のパンデミックウイルスに対する免疫が、スペインインフルエンザH1N1に感染した人にあるそうですが、季節性インフルエンザ Aソ連型H1N1に感染した人にはないことがあります。スペインインフルエンザ流れを組むウイルスが長い時間をかけブタの中で変異を繰り返し、再び人間に感染するウイルスになったなんてミステリーですね。
それと、パンデミックH1N1 2009 の病原性は低いと安心してはいけないということ。このことは、「パンデミックH1N1 2009 と季節性インフルエンザの病原性」(2009.11.03)のエントリーで触れましたので、そちらを参照してください。
パンデミックH1N1 2009 はまだわからないことが多いようだけれど、現時点でわかっていることを知るうえではいい一冊だと思いました。
インフルエンザ パンデミック - 新型ウイルスの謎に迫る
河岡義裕 (Kawaoka Yoshihiro) ,堀本研子 (Horimoto Kiyoko)/講談社(ブルーバックス)/2009
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