ウィニー裁判、高裁は無罪
作った道具が犯罪に使用されたとき、作った人はその犯罪の幇助に当たるか当たらないか、ファイル交換ソフト「ウィニー2(Winny)」をめぐる裁判は、その点が争点だったと思います。
2006年12月13日の京都地方裁判所の判決は、ウィニー自体は中立的な存在だけど、ウィニーの作者は著作権の侵害にも使われることを認識した上で不特定多数の者が入手できる状態で提供したから、幇助に当たり有罪でした。
関連エントリー:ネットvs.リアルの衝突/佐々木俊尚 (2007.02.16)
2009年10月8日の大阪高等裁判所の判決は、作者が違法行為にも使われることを認識し、実際に違法行為に使われただけじゃ駄目で、違法行為にのみ使わせるよう提供しなければ幇助に当たらないと、無罪にしました。
地裁と高裁と幇助の解釈がわかれた判決ですね。
これが、包丁だったら・・・
包丁自体は包丁でしかない中立的存在だけど、作る人は人を傷つけることにも使えることは知っているでしょう。そして、実際に包丁を使った傷害事件も発生しているでしょう。でも、これだけでは、包丁を作り、不特定多数に販売することは傷害事件の幇助には当たらないと僕は思います。
ただ、包丁を作って、あんた、これを使って人を刺しなさいと言って人に渡して、その人がその包丁で傷害事件を起したら幇助に当たるのかな。う~ん、ちょっと違うような気もします・・・
じゃぁ、ウィニーの場合はどうだろう。
僕自身はウィニーを使ったことがないので、どんな使われ方をされているのかわからないけど、使われたうちのどのくらいが著作権侵害に当たるのかその割合が問題になるのかな。それはそれで、その割合の判断が問題になるけど。
正直なところ僕には、地裁と高裁の判断のどちらが正しいのかわかりません。
最高裁で争われるのかなぁ。
【ウィニー裁判】 判決要旨
「ウィニー」という新技術(ソフトウェア)を使うと映画や音楽がインターネットを通じてやり取りできる。2002年にこの新技術を開発し自らのサイトで無料公開した東大の元助手が著作権法違反ほう助の罪に問われた。一審は有罪だったが、大阪高裁が2009年10月8日に言い渡した控訴審判決は一転無罪となった。その判決要旨を以下に紹介する。
【ほう助の成否】
(1) ソフトについて検討
ウィニーはP2P技術を応用したファイル共有ソフトであり、利用者らは既存のセンターサーバーに依存することなく情報交換することができる。
その匿名性機能は、通信の秘密を守る技術として必要にして重要な技術で、ダウンロード枠増加機能などもファイルの検索や転送の効率化を図り、ネットワークへの負荷を低減させる機能で、違法視されるべき技術ではない。
したがってファイル共有機能は、匿名性と送受信の効率化などを図る技術の中核であり、著作権侵害を助長するような態様で設計されたものではなく、その技術は著作権侵害に特化したものではない。ウィニーは多様な情報交換の通信の秘密を保持しつつ、効率的に可能にする有用性があるとともに、著作権の侵害にも用い得るという価値中立のソフトである。
(2) ほう助が成立するか
ネット上のソフト提供で成立するほう助犯はこれまでにない新しい類型で、刑事罰を科するには慎重な検討を要する。
原判決は、ウィニーは価値中立的な技術であると認定した上で、ホームページ上に公開し不特定多数の者が入手できるようにしたことが認められるとして、ほう助犯が成立するとした。
しかし、2002年5月に公開されてから何度も改良を重ね、03年9月の本件に至るが、どの時点からどのバージョンの提供からほう助犯が成立するのか判然としない。
利用状況を把握することも困難で、どの程度の割合の利用状況によってほう助犯の成立に至るかや、主観的意図がネット上において明らかにされることが必要かどうかの基準も判然としない。したがって原判決の基準は相当でない。
被告は誰がウィニーをダウンロードしたか把握できず、その人が著作権法違反の行為をしようとしているかどうかも分からない。価値中立のソフトをネット上で提供することが正犯の実行行為を容易にさせるためにはソフトの提供者が違法行為をする人が出ることを認識しているだけでは足りず、それ以上にソフトを違法行為のみに使用させるように勧めて提供する場合にはほう助犯が成立する。
被告はをネットで公開した際、著作権侵害をする者が出る可能性を認識し、「これらのソフトにより違法なファイルをやりとりしないようお願いします」と著作権侵害をしないよう注意喚起している。
また、被告は02年10月14日には「コンテンツに課金可能なシステムに持ってゆく」などと著作権の課金システムについても発言しており、ウィニーを著作権侵害の用途のみに使用させるよう提供したとは認められない。
被告は価値中立のソフトであるウィニーをネットで公開した際、著作権侵害をする者が出る可能性は認識していたが、著作権侵害のみに提供したとは認められず、ほう助犯の成立は認められない。
【結論】
被告にはほう助犯の成立が認められないのに一審判決がほう助犯の成立を認めたのは刑法62条の解釈適用を誤ったもので、検察官の所論は理由を欠き、いれることはできない。よって被告は無罪とする。
2009/10/08/共同通信
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