豚インフルエンザの真実/外岡立人
外岡立人さんは、昨年まで小樽市保健所長を務めた公衆衛生学や小児科学の専門家です。
また、ウェブサイト「鳥及び新型インフルエンザ海外直近情報集」で以前から鳥インフルエンザや新型インフルエンザの海外の情報をまとめ考察していて、僕も時々閲覧しています。
ただ、著作を読むのはこの「豚インフルエンザの真実」が初めてです。
今、世界的に感染が拡大しているパンデミックH1N1 2009(新型インフルエンザ)は、当初、その性状も詳しくわからず豚由来ということもあって、豚インフルエンザと呼ばれていました。そして、メキシコや米国から世界の国や地域にヒトからヒトへ感染拡大をしていきました。その経緯をトレースしてみようと思って、この本を読みました。
パンデミックH1N1 2009 は病原性が低く、慢性疾患がある人や妊婦など感染した時に症状が重くなるなるリスクのある人以外は、毎年発生する季節性のインフルエンザに準じた対応をしていればいいのかもしれません。
ただ、この本を読んでこれまでの僕には、感染した時、いかに周囲に感染させないかという視点が弱かったのかなと感じました。
感染した時は極力、人との接触を避け、どうしても接触しなければならないときは、高機能マスクをつけて相手に感染させない。そのことが感染の拡大を防ぐ大事なことだと再認識しました。
また、「豚インフルエンザの真実」には、新型インフルエンザとしてもっとも変異が懸念されている鳥インフルエンザA/H5N1亜型の最近の動向が書かれていて興味深く読みました。
WHOの発表によると、2009年はこれまでのところ鳥インフルエンザH5N1の人の発病は、インドネシアとベトナムに替わってエジプトが多くなっています。各国の事情もあるでしょうしWHOの統計がどこまで正確に実態を表しているかわからないけれど、それでもエジプトでの発生が増えていることに僕は興味を持っていました。
今年に入ってからエジプトのH5N1の発病者の大多数が2歳以下の幼児であり、多くが回復しているとのことです。2歳以下の幼児は家禽の世話をすることが少なく、家禽から直接H5N1に感染する可能性が少ない。けれども、成人の発病者も少ないため幼児の感染ルートがよくわからないようです。
そこで、WHOの一部の人は、H5N1ウイルスが変異し病原性を弱め、成人に無病感染をしているのではと考えているそうです。もしそうだとしたら、新型インフルエンザの出現になるかもしれませんね。
WHOとエジプト政府は家禽で発生したH5N1の周辺の成人の抗体の有無の調査を始めたということだから、新たな状況がわかるかもしれませんね。
鳥インフルエンザの状況も含め「豚インフルエンザの真実」は、今起こっている新型インフルエンザ騒動を冷静に見つめ直すには、いい本かもしれません。
豚インフルエンザの真実 - 人間とパンデミックの果てなき戦い
外岡立人 (Tonooka Tatsuhito)/幻冬舎(幻冬舎新書)/2009
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