素数たちの孤独/パオロ・ジョルダーノ
いきなり引用です。
素数は1とそれ自身でしか割り切ることができない。自然数の無限の連なりのなかの自分の位置で素数はじっと動かず、他の数と同じくふたつの数の間でおしつぶされててこそいるが、その実、みんなよりも一歩前にいる。彼らは疑い深い孤独な数たちなのだ。(159ページ)
大学一年の授業で素数の一部にさらに特殊な数があることを知った。それは数学者達が”双子素数”と呼ぶもので、隣りあったふたつの素数、いや、より正確に言えば、ほとんど隣りあった素数のペアのことだった。ここで”ほとんど”と言うのは、このふたつの素数の間に必ずひとつの偶数があって、両者が本当に触れあうことを妨げているからだ。例えば11と13、17と19、41と43といった素数がそうだ。辛抱強くさらに数えていくと、先に進めば進むほどこうしたペアが滅多に現れなくなることが分かる。ひとつの素数から次の素数までの距離はますます遠ざかり、数だけでできた静かでリズミカルな空間でそれぞれが途方に暮れているように見え、次第に、これまでに出会ったペアはどれも単なる偶然に過ぎず、素数の本当の宿命はやはり、ひとりぼっちでいることなのではないか、そんな気がしてくる。そして、もう降参してしまおう、数えるのも止めようと思ったまさにその時、そこでしっかりと抱きあっている新たな双子に出くわすのだ。(159-160ページ)
長い引用になっちゃったけど、ここで「素数たちの孤独」で描かれる物語の大切な部分が現れているんじゃないのかな。読んでいて強く印象に残りました。
「素数たちの孤独」は、子どもの頃に深い心の傷を負ったマッティアとアリーチェ、この自分の中に閉じ篭もる二人の物語です。
御互い惹かれながら寄り添いながら、でも決して結びつくことのない孤独な恋が描かれます。
この二人の間に入った偶数とは何なのか考えさせられる作品です。
素数たちの孤独 (LA SOLITUDINE DEI NUMERI PRIMI)
Paolo Giordano/飯田亮介(訳)/早川書房/2009
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コメント
ニャンゴロさん、こんにちは。
「0」は変わっていますね。僕も感じます。他の数とまったく性質が違っているんじゃないかと。
西暦0年はないんですよね。紀元前1年の次は紀元後1年。
始まりは1からで。
今、思ったのだけど、背番号「0」に違和感があったのはそれだからかも。
投稿: Kaze | 2009.10.02 05:02
Kazeさん、連投済みません。
数と言うのはちょっとだけ僕も気になることがあって・・・。僕が好きな数は「0」と「1」です。なぁーんだ2進法だと思わないでください。2進法は「0」と「1」があるから、あるわけでして。
「1」という数字は、もうものすごい威力を感じるんです。数の元祖みたいな。数学的にはどうでもいいのかもしれませんが、概念的なモノを勘定するための最小ユニットとしての「1」。で、それに引けを取らないのが「0」と、僕の感覚ではそうなんです。
数(すう)って不思議ですね。奥が深すぎて、見えません。
投稿: ニャンゴロ | 2009.10.01 23:59
ニャンゴロさん、こんにちは。
確かに物語を構成する上でのこじつけかもしれません。ジョルダーノが物理の研究者ということが関係しているんだと思います。
ただ、双子素数と呼び方をはじめて知りました。
素数は基本的な数であるにもかかわらず、その振る舞いが謎な不思議な数字ですね。
投稿: Kaze | 2009.10.01 05:36
Kazeさん、こんにちは。
ただのこじつけのように思いますよ。「2」も「4」も孤独な偶数ですよ。11には22が、13には26がお友達にいるじゃないですか。
小説を書くのには、都合のいいお話ではあると思いますけど・・・。
って、それを言っちゃあお終いか。
投稿: ニャンゴロ | 2009.10.01 02:55