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2009.06.02

新たなインフルエンザA/H1N1の高校生から親や10歳未満の子どもへの二次感染は少ないそうだ

新たなインフルエンザA/H1N1亜型の国内患者の疫学調査が進められていますが、時事通信に大阪での調査の状況のレクチャーの内容が掲載されていました。
なかなか、興味深いです。

下の図は、厚生労働省の発表の新たなH1N1の全国と大阪府の年齢階層別の患者数です。

国内の新インフルエンザA/H1N1の年齢階層別患者数 2009.05.31 12:00 現在/厚生労働省

10歳代が圧倒的に多いのは、高校生を中心として感染が広がったためなんだろうなあと思っていました。
ただ、レクチャーの内容を読むと、広がり方に従来の季節性のインフルエンザとは違った特徴があるようです。

集団で行動する高校生間で感染が広がるというのはある意味当然のことかもしれません。ただ、いったん発病すれば、看病をする人や一緒に生活をともにする兄弟など家族が、一番感染のリスクが高くなると思います。その割には両親などの感染が少ないそうです。
今回のH1N1に対し、1957年以前、スペイン風邪などのH1N1に感染したことなある人は免疫を持っているの可能性があるとのCDCの発表もあります。

関連エントリー:今回のインフルエンザに対する免疫がある人がいるみたい (2009.05.23)

ただ、高校生の親に当たる世代は40歳代が多いでしょうから免疫を持っていることも考えづらいとのことです。

今回のH1N1の国内の患者数は、371人(2009.06.01現在/厚生労働省)で、普通の季節性のインフルエンザの患者が毎年100万人程度いるのに対し極めて少ない患者数です。

国内のインフルエンザの感染状況

今回のH1N1の患者が少ないのは、ウイルスの感染力が弱いのか、他に感染した人が多数いるのに病原性が低いため気がつかずに済んでしまっているのか、実は多くの人に免疫があるのか、防疫対策が功を奏したのか、秋の第2波に爆発的な感染拡大が起こるのか、わからないところが多いですね。

いずれにしても、これから調査が進められるのでしょうし、第2波の発生に向けて対策も進められると思うので、興味を持って情報を見ていきたいと思っています。

引用文「親や幼児の感染まれ」原因調査へ=大阪の新型インフル-感染研
大阪府の新型インフルエンザ患者らの疫学調査に当たった安井良則国立感染症研究所主任研究官が27日、厚生労働省内で記者会見し、高校生ら10代が感染の中心で、親や10歳未満の子どもに二次感染した例は少ないと報告した。
安井研究官は「高校生は行動範囲が広く感染しやすいが、それだけが理由とは言えないように思う」と話し、詳しい調査を進めるとした。
季節性の場合、患者の両親、特に母親は看病に当たる際に二次感染することが多いとされているが、今回調査した約90人のうち、親が発症したのはわずか数例だった。1957年以前に生まれ、新型と同じH1N1型であるスペイン風邪などに感染したことがある中高年は、新型に対しても免疫を持つ可能性が指摘されているものの、患者の両親は40代が中心でこの世代には該当しない。 
また季節性であれば、感染歴が少なく、集団生活を送る5歳から9歳の感染者が最も多いはずだが、今回は少なかったという。安井研究官は「高校から感染が始まったとしても、本来なら小学校や幼稚園でも集団感染が起こっていたはず」と首をかしげた。
2009/05/27/時事通信

引用文新型インフル厚労省定例レク詳報(27日午後4時)
出席者
難波吉雄 新型インフルエンザ対策推進室長
江浪武志 結核感染症課課長補佐
安井良則 国立感染症研究所感染症情報センター研究協力官
難波室長 WHOの26日6時現在、感染者は1万2954人で439人増。死亡者数は92人で増加が1。検疫所への応援は106人。27日正午現在の国内患者数は352人で、10人の増加。

Q、韓国などアジアの感染拡大についてはどう評価しているか
A(江浪補佐)、WHOでも各地域の広がりを評価しているが、現時点ではアメリカ大陸で限定されている。他でも報告数は増えているが、引き続き注視している段階だ。
Q、重症例の報告は
A(難波室長)、現在もない
Q、疫学調査で新しいことは
A(難波室長)、大阪府がデータをまとめて午後に公表したが、現状を把握する上では分かりやすいので紹介する。大阪府全体で確定者が153人。発症から7日以上たち、解熱後2日ですべての症状がなくなった人が122人。経過観察中が残りの31人。お昼の時点では、入院はないという報告を受けている。今まで質問があった患者の今の状況が、かなりの数が軽快して経過観察を終了したということが分かった。
Q、大阪と兵庫とリンクでは何か分かったことはあるか
A(安井研究協力官)、大阪の調査に携わった。大半は患者さん一人一人が誰から感染したか、他からどうつながったのかが分かる。ただ、そこにどこから入ったかはなかなか難しい。われわれや大阪府が認識する前に流行があったのではないかと調査中だが、確定診断されていない人がいる。いまからその方々に面談などはできない。それは犯人捜しのようになってしまいかねないからだ。今後どうしていくかだが。
確定した方はほとんどどのような状況で感染したかが分かる。たった1例が切れているのが、リンクが切れたということかどうか。地域の多くの患者はリンクが追えているのは間違いない。数人、分からない人の調査を続けている。大半は誰から感染したかが分かる状態で、地域が今まん延状態だとは言えないだろう。疫学調査できる患者はリンクがあるに決まっている。見逃しているケースがあるかどうか調査が必要だ。当初は、大阪南部で切れている人がいるのではと重点的に検査をしたが、北摂地域にまとまって患者が出ていただけだった。
Q、親子感染が少ないのはどういう状況か
A(安井研究協力官)、5人以下だけだった。通常の季節性インフルエンザなら、学校から持ち帰って、母親が感染し、他の兄弟に感染させると解釈され、学会発表もされている。今回は本当に感染がなかったかどうかは分からず、感染しても発症しなかったのかもしれないが。ご両親には感染させていないが、他の兄弟にはうつっている。小学生でも、他の兄弟に感染してもお母さんには感染をしない。
母親が感染をしていても発病していないのかも、今後、調べていかないといけない。事実として。通常の季節性と異なっているのはなぜなのか。子供たち同士の距離は10代以下のほうが近いのだが、なぜ高校生なのか。感染はどんどん広がっていってはいないので、どこでもらったか想定できる。理由は分からないが、年齢層が絞られた状態で広がっていっている。
濃厚接触者の定義にも関わるが、同じような接触をしていても発症の有無がある。家族は最も濃厚なはずだが。長時間、相手と話をする関係にある人が感染をすることが多かったのではと解釈している。海外でも高校生が多い。親子関係が少ないとは聞いていなかったが、ご家庭に子どもさんがいられるときにご両親に会っているが、症状もなくぴんぴんしている。ご兄弟は熱が出ているとか、先に発病されている方がいる。そこからうつったと思われる。
みんなで首をひねって、さらに追及していかねばならない。
Q、感染力はどうみているか
A(安井研究協力官)、なかなか数字では表せない。クラス単位で広がってはいるが、季節性と一緒だ。すれ違っただけで感染した可能性は極めて低い。長時間、近い距離にいて、広がっていった。空気感染するのではといわれているが、印象としては教室内で飛沫感染で広がっていった。席が近い人が会話を繰り返して、飛沫で感染を繰り返したり、席が離れていても近しい関係で広まったという印象だ。通常の季節性インフルの感染力よりずば抜けて大きいという印象は持っていない。
Q、母親の抗体検査はできないのか
A(安井研究協力官)、できるだけやっていきたいが、抗体を作らないといけない。分かる可能性はあるが、まず態勢を整えたい。今のところ謎だ。数カ月かかってそれで結果が出るのが来年度になるのではまずい。世界でもやれていないので、データがない。それを早く作り上げたいが、まだ分からない。
Q、現地での調査手法は、どうだったのか
A(安井研究協力官)、手元に資料はないが、実際に面談して対面調査したのは32例だったと思う。学校に調査をしていただいたのがそれに加えて48人だ。確定診断されていない方も含めてお願いした方は1000人を超える、学校全体の調査だ。高槻市などのデータは入っていない。学校側には電話の調査票を作ってお願いした。
もう一度検査をというのは非常に言いにくい。誰も悪いことはしていないのだが、お前ところの学校が悪いという電話が行くようなことがあるので、それはやめて欲しい。疫学的な調査は、貴重な先駆けとなるものだということをマスコミの皆さんから発信して欲しい。それで調査を行える環境に慣ればと思う。
みんながいつか感染・発病する可能性があるのがインフルエンザで、誰もがかかる病気だ。インフルエンザはこれまでも、こうやって生まれて人類に定着してきたが、いまはその始まりをわれわが見ているのかも知れない。悪いことをしているとか、犯人とかではないと言うことを分かっていただきたい。学校や、面接していただいた方は協力的だが、非常に気の毒な状況だ。
Q、発症日はどうなっているか
A(安井研究協力官)、神戸の高校も大阪も、学校関係者は5月11日から熱が出て早退や欠席などが増えたという。大阪では11、12日にお医者さんがインフルエンザと診断をした患者が急に増えて、倍増していった。これは、流行している学校で共通にみられることだ。6日まで連休があり、7、8日には目立ってないが、集団に感染の暴露があったのだろう。その時期に発病者がいたのだろう。その前は分からない。確定診断されていない。GWをはさんでいるので分からない。海外渡航歴のある大人が数人いたが、体調も悪くない。どこからというのはなかなか難しい。数名いた熱発患者を呼び出して話を聞くのは、今からは難しい。お前が犯人ではということになり、われわれが聞けない。先生方にそれとなく聞いていただくことができるか。それがどこでも壁になる。大騒ぎになっているので、犯人捜しにしてはいけないので難しい。
患者さんに会ったが、新型インフルエンザの症状は、われわれが見る限りでは通常のインフルと変わらない。重症者もいない。患者さんも症状が消失している方は、臨床的に入院の必要がなく、訪問しても子どもさんが家の中で走り回っている状態でホッとした。そういった方をいつまで家に置いておくのか、現場では問題になる。
Q、大阪と神戸はどちらが早いと思われるのか
A(安井研究協力官)、それぞれお互いにあっちが早いという。言えるのは、大阪の学校はマンモス校で、大阪以外からも来ている。大阪では、他の学校での流行はそこから発生したのだろう。学校から予備校や友達関係などにいったのではないか。兵庫県は担当ではないが、複数の学校で出ている。大阪では気付いたらその学校で相当数の感染が出ていた。
Q、終息傾向には1週間ぐらいまで見ると言うが、それは今週の金曜か土曜か
A(安井研究協力官)、潜伏期間は1週間ぐらいという印象を持っているので、新しく出るなら、この1週間以内に発病者が出るだろう。大阪も神戸も全校閉鎖という思い切ったことをやったので、流行抑制にはかなり効果があったと思う。効率は悪かったかも知れないが。
Q、CDCが秋へ向けての体制整備に切り替えをと指摘してるとのことだが
A(江浪補佐)、国会でも第2波への備えという質問もいただいている。第2波がいつになるのか分からないが、それに向けての備えが大きな検討課題だと考えている。
2009/05/27/時事通信

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