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2009.05.07

インフルエンザウイルスと豚

インフルエンザウイルスと豚の関係の記事が、少し前の読売新聞と朝日新聞に掲載されていました。

読売新聞の記事は、現在、メキシコ、米国、カナダを中心に感染が拡大しているインフルエンザA/H1N1が、カナダの養豚場の豚に感染したというカナダの保健当局の発表です。
メキシコでH1N1に感染した養豚場の従業員から、飼育している豚が感染したとのこと。
今回のH1N1が人の間で感染するように変異した経緯は、まだわかっていないません。ただ、豚の中で変異し、人に感染力を持ったという可能性が有力ですが。
今回の人から豚への感染は、今回のH1N1が人と豚に適合したウイルスということになるのかなあ。

そして、もうひとつは、朝日新聞の鳥インフルエンザH5N1が、インドネシアの豚に感染していたという神戸大学感染症センターの調査結果の記事です。
調査結果は、調査したインドネシアの豚420頭うち52頭(12%)が鳥インフルエンザH5N1に感染していて、そのうち1頭からは人に感染しやすいタイプに変異していたというものです。

下の表のように今回のH1N1と鳥インフルエンザH5N1の今のところの人間に対する致死率は相当違っています。
そんなこともあって、世界的に感染が拡大しているH1N1より病原性の強い鳥インフルエンザH5N1の変異のニュースのほうが、僕は気になります。

インフルエンザA/H1N5と鳥インフルエンザH5N1の患者数と致死率

もともとA型インフルエンザウイルスは、鴨を宿主としていたそうです。これまでの出現した新型インフルエンザ、H1N1(スペイン風邪)、H2N2(アジア風邪)、H3N2(香港風邪)も鳥のインフルエンザだったものが変異したといわれています。
その変異の過程で、鳥、人両方のウイルスに感染できる豚が関与しているのだとも。
その変異の過程について、岡田晴恵さんの「感染症は世界史を動かす」にわかりやすい図が載っていたので、下に引用しました。

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引用文
感染症は世界史を動かす/岡田晴恵(ちくま新書) P228 図6-4 新型インフルエンザ出現経路
引用資料
・ 感染症は世界史を動かす/岡田晴恵(ちくま新書) P228 図6-4 新型インフルエンザ出現経路
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引用文豚への感染、カナダで初めて確認…ウイルス遺伝子変異なし
カナダの保健当局は2日、アルバータ州の養豚場で、豚が新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)に感染したことを確認した。豚の感染が明らかになったのは初めて。
感染源は、メキシコから4月12日に帰国した作業員とみられる。作業員が14日から仕事に戻ったところ、2200頭のうち約200頭が24日から発症した。豚は軽症で全頭が回復した。ウイルスは人間に流行中のものと同じで、遺伝子の変異はなかった。
今回の新型インフルエンザのウイルスは、豚の間で流行するウイルスの特徴を持っているが、豚からは全く検出されていなかった。

豚にも感染が広がったことについて、喜田宏・北海道大獣医学部教授は「もともと豚で受け継がれてきたウイルスなので、人から豚に感染してもおかしくない。今後、新型ウイルスが豚の中で受け継がれていくこともありうる」と話す。
ただ、豚肉の安全性には変わりがない。世界保健機関(WHO)の食品安全担当のピーター・ベンエバレク氏は3日、記者会見し、カナダで人から豚への感染が確認されたことをめぐり、「豚肉は加熱すれば問題ない」と述べ、消費を控える必要はないと強調した。
2009/05/04/読売新聞

引用文鳥インフルにインドネシアの豚1割感染 人感染タイプも
全身感染性の強毒型として心配される鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)がインドネシアの豚に広がっていることが、神戸大感染症センターの調査で分かった。人に感染するタイプに変異したウイルスも見つかった。鳥インフルエンザの脅威も確実に高まっていることを示す結果だ。
神戸大チームは05~07年、現地のアイルランガ大熱帯病研究所と共同で4州の豚計402頭の感染状況を調べた。
その結果、全体の1割を超える52頭からH5N1型ウイルスが見つかった。うち1頭から分離されたウイルスは鳥にも人にも感染するタイプとみられることが分かった。
鳥のインフルエンザウイルスが豚に感染を繰り返すうちに、人にも感染するタイプに変化したとみられるという。
H5N1型ウイルスは東南アジアの水鳥などに流行し、人にも感染する事例が散発している。世界保健機関(WHO)によると、03年11月~09年4月に421人が感染し、うち257人が死んでいる。
研究を支援した理化学研究所感染症研究ネットワーク支援センター(東京・有楽町)の永井美之センター長は「今問題になっているものだけが新型インフルエンザではない。今回の調査結果は、鳥インフルエンザが新型ウイルスに変異する危険が依然大きいことを示している。引き続き監視が必要だ」と話している。
2009/05/03/朝日新聞

・ MediaMarker

感染症は世界史を動かす
岡田 晴恵
筑摩書房 ( 2006-02 )
ISBN: 9784480062864
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