新型インフルエンザと Influenza A(H1N1)
今朝のエントリーで、WHOが4月30日から今回発生しているインフルエンザの呼び方を、今までの"Swine influenza"から"Influenza A(H1N1)"としたことを書きました。
・ WHOのサイトから引用
メキシコや米国での発生当初からしばらくの間、日本のマスコミもWHOも今回のインフルエンザを「豚インフルエンザ(Swine influenza)」と呼んでいました。
そして、WHOのパンデミック・アラートのレベルがフェーズ3から4に引き上げられた4月28日頃から、日本のマスコミは「新型インフルエンザ」と呼ぶようになりましたが、WHOは依然として"Swine influenza"と呼んでいました。そして、昨日、WHOは今回のインフルエンザの呼び方を"Swine influenza"から"Influenza A(H1N1)"と変えました。
この日本とWHOの呼び方の違いを、僕は少し不思議に思っていました。
それで、少し調べてみました。
厚生労働省は、4月28日にWHOの警戒レベルのフェーズ4の引き上げにともない、今回のメキシコや米国などで人への感染が確認された豚インフルエンザ(H1N1)を新型インフルエンザ等感染症として位置づけたという健康局長の通知を出しています。たぶん、この通知を契機に日本では今回のインフルエンザの呼び方が、豚インフルエンザから新型インフルエンザに変わったのだと思います。
「新型」の定義については、国立感染症研究所 感染症情報センターの「インフルエンザ・パンデミックに関するQ&A」に掲載されていました。それによると新型インフルエンザは、「過去数十年間にヒトが経験したことがないHAまたはNA亜型のウイルスがヒトの間で伝播して、インフルエンザの流行を起こした時、これを新型インフルエンザウイルスとよぶ。」とされています。今回、人に感染しているインフルエンザウイルスA/H1N1亜型は、スペイン風邪やソ連風邪と同じ亜型で、ソ連風邪は今年も発生しているので、これだけでは今回のウイルスは新型とは呼べないのかなあ。
ただ、日本では「WHOフェーズのフェーズ4以降は、流行しているウイルスについてこの言葉を使用することとなり、ここからフェーズ6までの過程にあるものをすべてひっくるめてこう呼ぶことになります。」としているので、今回のH1N1を「新型」と呼んでいるのですね。
一方、WHOは人に感染する亜型が出現した時、そのウイルス(例えば鳥インフルエンザH5N1が人から人に感染するように変異した場合)を"novel influenza virus"、"novel influenza strain"や"new strain"と呼び、今回のH1N1のような新しい亜型でない場合は、フェーズ6になって初めて"pandemic strain"と呼ぶようです。
だから、フェーズ5の今の段階では、単に"Influenza A(H1N1)"と呼んでいるってことかな。
ややこしいね。
新型インフルエンザに係る対応について
今般、メキシコや米国等において、豚インフルエンザ(H1N1)の感染が多数発生していましたが、本日、WHOにおいて、継続的に人から人への感染がみられる状態になったとして、インフルエンザのパンデミック警報レベルをフェーズ4に引き上げる宣言が行われました。
こうした事態を受け、新型インフルエンザのまん延を防止するとともに、健康被害を最小限にとどめるため、今般メキシコや米国等で確認された豚インフルエンザ(H1N1)を、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第6条第7項に規定する新型インフルエンザ等感染症として位置づけたところです。
2009/04/28/厚生労働省健康局長
インフルエンザ・パンデミックに関するQ&A
1.「新型インフルエンザ」、また「インフルエンザ・パンデミック」とはどういう意味でしょうか?
厚生労働省の「新型インフルエンザ対策報告書」(2004年8月)によると、「過去数十年間にヒトが経験したことがないHAまたはNA亜型のウイルスがヒトの間で伝播して、インフルエンザの流行を起こした時、これを新型インフルエンザウイルスとよぶ。」と定義され、本邦においては、WHOフェーズのフェーズ4以降は、流行しているウイルスについてこの言葉を使用するとされています。つまり、動物、特に鳥類のインフルエンザウイルスが人間世界に侵入し、その遺伝子に変異を起こしたり、ヒトのインフルエンザウイルスとの間で遺伝子の組み換えを起こしたりして、ヒトの体内で増えることができるようになり、ヒトからヒトへと効率よく感染できるようになったものが新型インフルエンザウイルスですが、本邦においては、WHOフェーズのフェーズ4以降は、流行しているウイルスについてこの言葉を使用することとなり、ここからフェーズ6までの過程にあるものをすべてひっくるめてこう呼ぶことになります。この新型インフルエンザウイルスが人に感染して起こる病気が、新型インフルエンザです。
注: なお、WHO(世界保健機関)などによる英語文中の、“novel influenza virus”、“novel influenza strain”、 “new strain”などは、直訳すると新型インフルエンザということになりますが、この語彙の意味するものは、「これまでにヒトで検出されていなかった亜型のウイルス」のことであり、日本語の「新型インフルエンザ」という言葉と必ずしも同じではありません。日本語における「新型インフルエンザウイルス」に近い英語の語彙としては、“pandemic strain”という言葉がありますが、これは通常は、ヒトからヒトへ効率よく感染する能力を持ち、「パンデミック」を起こす能力のあるウイルスという意味で、通常WHOフェーズの6で用いられます。
2006/12/インフルエンザ・パンデミックに関する Q&A(2006.12 改訂版)国立感染症研究所 感染症情報センター
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