安全。でも、安心できない…/中谷内一也
僕らの日常生活の中で、他人の手に委ねられていな物はあるんだろうか?僕の生活の中では、ほとんど思いつきません。
ほとんどを外部に依存している生活において、その物の安全性、そして得られる安心感は、とっても重要ですね。
最近、「安全・安心」に対する意識が高くなっていて、「安全・安心」は行政のスローガンにさえなっています。
ただ、「安全」と「安心」を得るためには、違ったアプローチが必要なんじゃないかと、漠然と思っていました。「安全」は科学的に捉えることができるけれど、「安心」は心の問題と・・・
「安全。でも、安心できない…」は、少し逆説的なタイトルですが、そのあたりのことが上手く説明されています。
物を供給する側(リスク管理者)は、「安全・安心」を捉える場合、どうしても「安全」について重点を置く傾向にあると思います。それは当然のことで、ある物のリスクを最小限にしなければ、安全な物として供給できないでしょう。(昨今は、安全性をまったく無視した論外の問題もありますが・・・)
しかし、筆者は安全の担保だけではリスク管理者の対応は不十分だと、それだけでは消費者は安心はしないと論じます。
安全が安心に直接結びつくのは、消費する側もその対象に十分な知識がある場合に限られると分析します。
僕らを取り巻く物や事象に対して、僕らは深い知識を持ち合わせていないことが多いと思います。ひとつひとつを深く勉強していたら、とても生活なんてできないものね。
そうした時、僕らはどうやって安心を得るか?
物を供給する側にリスクを管理する能力があると、僕らが信じられるかどうかが重要なんだそうです。そこには、リスクを管理する側の技術的な能力ばかりでなく、価値観までもが信頼に影響するのだと。
そのとおりなだろうと思うけれど、リスクを管理する側にとっては結構難しいことなんだろうなあ。
「安全」と「安心」を考える時、読んでおいても損のない本だと思いました。
安全。でも、安心できない… - 信頼をめぐる心理学
中谷内一也/筑摩書房(筑摩新書)/2008
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