インフルエンザウイルスの強毒化の鍵を握る酵素
以前、河岡義裕東大教授らの研究チームが、鳥インフルエンザH5N1亜型が、ヒトの体温でも増殖しやすくなっているという研究結果を報じる、日本経済新聞の記事を紹介しました。
・ 関連エントリー:少しずつ新型インフルエンザに近づく鳥インフルエンザ (2007.10.06)
今度は、河岡教授らが高病原性の鍵を握る酵素を作る遺伝子について確認した旨を、共同通信が年末に報じていました。
気道下部で増殖する性質を持ったインフルエンザウイルスは、重い肺炎を起すなど高病原性を示すそうです。そして、この性質を現す遺伝子がわかってきたようです。
この発見につながる試験の仕方が面白いね。高病原性のインフルエンザウイルスH1N1(スペイン風邪)の遺伝子を、現在、流行しているH1N1(ソ連風邪)に組み込んで、高病原性を示す遺伝子を確認したんだって。
これが、少しずつ人間に感染しやすくなっている鳥インフルエンザH5N1の病原性を低下させるのに役立つといいね。
それにしても、スペイン風邪とソ連風邪は同じH1N1なんだけど、その関係って不思議ですね。
・ 参考エントリー:インフルエンザ危機/河岡義裕 (2006.02.03)
強毒の鍵握る成分特定 スペイン風邪で東大チーム
1918年に世界で大流行し、約4000万人が死亡したとされるインフルエンザ「スペイン風邪」の強い毒性の鍵を握るとみられるウイルスの成分を、東京大医科学研究所の河岡義裕教授らのチームが特定し、米科学アカデミー紀要(電子版)に29日付で発表した。
毎年流行するインフルエンザウイルスは鼻やのどなど気道の上部で増えるが、スペイン風邪ウイルスは肺など気道の下部で増える性質があり、これが重い肺炎を引き起こすなど強毒性の原因とみられている。
アジアなどで鳥から人に感染し、新型インフルエンザへの変異が心配されている鳥インフルエンザ(H5N1型)も気道の下部でウイルスが増殖するため、今回の成果は、H5N1型の治療のターゲットに関する研究にも役立ちそうだ。河岡教授らは、計8種類あるスペイン風邪ウイルスの遺伝子を、単独や複数組み合わせて、現在流行しているAソ連型インフルエンザウイルスに組み込み、実験動物のフェレットに感染させた。
その結果「RNAポリメラーゼ」と呼ばれる酵素など計4種類の遺伝子を組み合わせた成分を入れたときに、スペイン風邪ウイルスと同様に肺でも増殖が確認され、この成分が、気道の下部で増えやすい性質の鍵を握っているらしいと分かった。
2008/12/30/共同通信
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コメント
コニコさん、明けましておめでとうございます。
Haruki手帳を使い始めましたか
素敵ですね。僕の手帳は、保存版として本棚の片隅で眠ってしまいそうです。
僕は、インフルエンザウイルスについて興味があって、このブログに少しずつ情報を書きためています。
鳥インフルエンザは、Hが16、Nが9の144パターンが現在までに確認され、そのうち人のインフルエンザに変異したのは、H1N1(スペイン風邪、ソ連風邪)、H2N2(アジア風邪)、H3N2(香港風邪)の3つだけと言われています。次の新型インフルエンザとして有力視されているのが、鳥インフルエンザH5N1ですが、多くのパターンがあるから、どの亜型のウイルスが変異するのか、実際、起こってみなければわからないですね。
そして、何時、新型インフルエンザが発生するかわかりませんが、毒性の弱い変異であって欲しいです。
投稿: Kaze | 2009.01.06 22:12
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
先日録りためていたNHKの新型ウィルス、コック博士の番組を見たばかりです。H5N1型だけでなく、鳥インフルエンザで他のウィルスの警告も出ているそうで、今年も目が話せないニュースですね。参考になります。
ところで、Haruki手帳を使い始めました。やっぱり気恥ずかしいのでお手製のカヴァーをしっかりかけました
今年もよろしくお願いします。
投稿: コニコ | 2009.01.06 09:58