iPS細胞/八代嘉美
このところ、iPS細胞(人工多能性幹細胞 induced pluripotent stem cell)に関する一般書を何冊か読んでいます。
10年以上前に脳死をめぐる話に興味があって、やはり一般書を数冊読んだのだけど、脳死が問題になるのは臓器移植との関係なんだろうなと思いました。
心臓や呼吸が止まって、瞳孔の反射がなくなり、医者が死亡と診断すれば、僕らは死を受け入れていたのでしょう。
ところが人工呼吸器など技術が発達して、脳の機能が停止し再生しない段階になっても、心臓や肺を器械の力を借り動かし、いくつかの臓器は脳の機能停止後も生かしておけるようになりました。
臓器移植の場合、脳死の状態の新鮮な臓器を使えば、かなり移植の成功率が高いんだろうね。
ただ、脳死の判定の技術的な問題と脳死を人の死とするかという倫理的な問題なんかがあって、当時、社会的な話題になっていたんだと思います。
そんなことが、頭にあったので、去年の11月に京都大学の山中新弥教授が、iPS細胞を開発したというニュースを聞いた時、凄い技術が開発されたもんだと感心しました。
細胞の特化した機能をリセットし多能性を持たせる技術として、ES細胞の技術が先行しているけれど、卵細胞を使うなど倫理上、クリアしなければならない問題がありました。
でも、iPS細胞の場合は、体細胞そのものに多能性を持たせるわけで、倫理上の問題は起こりにくいし、本人の細胞だから拒絶反応も起きない、そういった意味で凄い技術だなあと。
この本「iPS細胞」は、ES細胞とiPS細胞の仕組や再生医療への活用、その展望と問題点などが平易にわかりやすく解説されています。
筆者は、若くまだ駆け出しの研究者だそうですが、そのことがかえってiPS細胞をめぐる情勢を全般的に捉え説明することができ、僕など一般の読者には理解しやすい本になっているのかもしれません。
以前、紹介した田中幹人の「iPS細胞 ヒトはどこまで再生できるか?」と同じように、iPS細胞や再生医療の本を読もうとする時の最初の1冊にいい本だと思います。
iPS細胞 世紀の発見が医療を変える
八代嘉美/平凡社(平凡社新書)/2008
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