原油やトウモロコシのファンダメンタルな価格
原油にしろトウモロコシにしろ、少し価格が落ち着き、原油は120ドル/バレル前後、トウモロコシは5ドル/ブッシェル前後になっています。
ただ、安くなったといっても数年前に比べれば、かなり高いわけで、どの当たりで価格が落ち着くのか、まだわからない状態です。
落ち着き先、ベースラインがわからなければ、どのような対策が効果があるのかもわからないわけで、悩ましいところです。
そうした中で先月、経済産業省から出された「通商白書」に面白い分析がありました。
参照:通商白書2008/通商産業省
通商白書では、過去の原油、銅、小麦、トウモロコシの価格と在庫量から、2008年5月時点の供給と消費の実需に基づいたファンダメンタルな部分の価格を推計しています。(通商白書2008 449-450頁)
原油については、'08年5月時点の価格が125.5ドル/バレルに対し、ファンダメンタルな価格は74.7ドル/バレルと推計しています。
とうもろこしについては、6.0ドル/ブッシェルに対し、3.1ドル/ブッシェルと推計しています。
つまり、原油については価格の40%が、とうもろこしは48%が実需以外のということになります。この部分が、地政学リスクや投資や投機によるいわゆるプレミアムと呼ばれる部分なんでしょう。
少し前の日本経済新聞には、 阮 蔚農林中金総合研究所主任研究員の分析として、'07年12月末のトウモロコシ4.56ドル/ブッシェルに対し、ファンダメンタルな部分は2.63ドル/ブッシェルとしています。
エネルギー白書では、原油価格の'07年第3・4四半期の試算として、ファンダメンタルな部分が50~60ドル/バレル、プレミアムな部分が30~40ドル/バレルとしています。
関連エントリー:エネルギー白書て、結構面白い(2008.06.21)
また、米国農務省(USDA)が発表した「Agricultural Projections to 2017」では、'17年の原油価格の予測を80ドル/バレル程度としています。
関連エントリー:ベースライン(2008.03.09)
このように、価格の分析の結果は様々だけど、ファンダメンタルの部分から見ると、今の価格は相当高いということだね。
ただ、ファンダメンタル以外の部分は、地政学的リスクであったり、投資・投機資金の流入であったりして、よくわからないのだけど。
経済教室 - 世界的な穀物価格の高騰 先進国の補助金も一因 -
トウモロコシで今回の価格高騰の構造を簡単に分析しよう。90-05年の穀物相場を調べると、毎年12月末のシカゴ商品取引所(CBOT)期近価格と翌年8月末(穀物年度末)の在庫率の間に一定の相関(R2=0.7135)が見られた。これをもとに08年8月末の在庫率の予測が約11%であることを考慮し、穀物の「あるべき価格」を上記の相関係数を用いて推計すると、07年12月末では1ブッシェル当たり2.63ドル(1ブッシェルは25.4キログラム)であり、これは05年12月末の実際の価格(2.16ドル)から0.47ドルの上昇となる。これがエタノール向けを主とする新規の実需が、在庫率に影響して押し上げた部分とみてよいだろう。
実際には07年末の価格は4.56ドルに達した。「あるべき価格」との差は1.93ドルに上り、このうちエタノールなどによる押し上げ分として説明できる0.47ドルを除いた残り1.46ドルは投機マネーの影響による部分と見るのが妥当だ。穀物への投機マネー流入はこうした穀物価格の割安感と人為的政策によるエタノールの需要促進への期待感が背景にあった
2008/07/23/阮 蔚(Ruan Wei) 農林中金総合研究所主任研究員 日本経済新聞
・ このエントリーは「上下する原油価格」(夜明け前)にトラックバックしました。
| 固定リンク
「ニュース」カテゴリの記事
- 「週刊朝日」が2023年5月をもって休刊(2023.01.19)
- 高橋幸宏さんが亡くなられた(2023.01.15)
- 県道清水富士宮線バイパスと清水いはらICがつながり新東名から清水港や三保半島に行きやすくなる(2023.01.04)
- DAZNが今年も値上げ(2023.01.12)
- 静岡新聞が3月をもって夕刊を廃止(2023.01.10)
「食糧・資源・エネルギー」カテゴリの記事
- 静岡のガソリンは前回から9円下がって160円(2023.01.28)
- 静岡のガソリンは前回と同じ169円(2022.12.17)
- 静岡のガソリンは前回から2円上がって169円(2022.11.03)
- 静岡のガソリンは前回から1円上がって167円(2022.09.18)
- 諸外国に比べ穀物自給率を低下させた日本 -2021年度食糧自給表 2(2022.08.08)
コメント