3ヶ月で地位を剥奪されたボスザル
朝日新聞に面白い記事が掲載されていました。
それは、兵庫県洲本市にある淡路島モンキーセンターの新任のボスが、就任わずか3ヶ月で交代に追い込まれた話です。
この新任のボスは、弱いサルに追い払ったり、餌を奪ったり、メスにも人気がなかったみたい。その横暴さが目に余ったのか、若いサル3頭(20歳前のサルを若いと言っていいものかわからないけれど…)が、協力してボスの座から引きずり下ろし、そのうちの一頭が新たなボスに就任したとのことです。
それで、思い出したのが以前このブログでも紹介したことのある日本のサルや霊長類の研究を研究者のインタビューを中心にまとめた立花 隆の「サル学の現在」です。
この本には、ニホンザルの研究も紹介されています。
その中で、屋久島のニホンザルのフィールドワークを通した京都大学の岡田直比さんの研究の紹介で、一見、群れにはオスのボスが君臨しているように見えるけれど、実際の決定権を持っているのはメス、特にナンバー1のメスではないのではないかという話が掲載されています。
また、宮城教育大学の伊沢紘生さんのニホンザルには、いわゆる群れをリードするボスザルはおらず、群れの行動はお互いサル同士が相手の雰囲気を察しながら何となく行動が決定されるという話も載っています。
* 肩書は本で紹介されている当時のものです。
この本を読むまで、力のあるボスザルが群れをリードしているものと思っていた僕には、意外で面白い話でした。
ただ、1991年に出版された本で、それから新たな知見が出ているのかもしれませんが。
「サル学の現在」の話にしても、淡路島モンキーセンターの話にしても、単に力で群れは支配できないところが、興味深いです。
ボスはボスで、気配り、人気取りで大変なのかもね。
横暴ボスザル、3カ月でクビ 淡路島、いじめに若手反撃
兵庫県洲本市にある野生ザルの見学施設「淡路島モンキーセンター」で、8代目のボスザルに昇格したイッチャンがわずか3カ月でその座を追われた。弱い者いじめを繰り返す横暴ぶりに業を煮やした若いサルたちが集団で反撃したのだ。センターで抗争によるボス交代が確認されたのは1967年の開所以来初めて。イッチャンの在任期間は歴代最短だった。
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ボスは5年ほどで交代してきたが、7代目で32歳のマッキーは15年にわたってトップに君臨。子ザルや弱いサルに優しく、メスにも人気があったため、長期政権になったという。そのマッキーが今年3月下旬、他のサルに餌を奪われるようになった。他地域の集団にみられるような実力行使によるボス交代の気配はなく、マッキーが身を引いたらしい。
センターはナンバー2だった27歳のイッチャンがボスに昇格したと認定。ところが、イッチャンは弱いサルを追い払ったり、エサを奪ったりと、大人げない行動が目立った。メスにも不人気で、毛繕いをしてもらえずに1匹で寝ていることが多かった。
6月21日には、ナンバー4だった17歳のタマゴを押さえ込み、しつこく背中にかみついた。その翌日の午後2時ごろ、タマゴ、ナンバー2で19歳のアサツユ、ナンバー3で18歳のカズの3匹が一斉にイッチャンを襲撃。かみつかれるなどして手足や腹に大けがをしたイッチャンは柏原山のふもとにある売店まで逃げてきた。
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間もなく群れに戻ったイッチャンは、すっかりおとなしくなった。センターはこの事件を機に、アサツユが9代目ボスに昇格したと認定。アサツユはメスに人気があり、弱いサルにも優しいという。
延原所長は「平和主義者で優しいマッキーをみんなが支持していたが、乱暴者のイッチャンがボスになり、これまでの秩序が崩れると危機感を募らせた結果の抗争劇だったのではないか」とみる。
2008/08/25/朝日新聞
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