オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎
「アヒルと鴨のコインロッカー」に始まり「ラッシュライフ」「チルドレン」「陽気なギャングが地球を回す」「重力ピエロ」「死神の精度」「陽気なギャングの日常と襲撃」そして「オーデュボンの祈り」と、この半年ほどの間に、伊坂幸太郎の作品を断続的に読んでいます。
伊坂作品の時間と空間の絡め方の上手さ、そして、語り口の新鮮な軽妙さに惹かれて、僕は何作か読むことになったんだと思います。
今回紹介する「オーデュボンの祈り」は、彼の最初の頃の作品です。読んでいて、ふと思ったというか感じたというか、もう30年近く前に「群像」に書き下ろされた村上春樹の「1973年のピンボール」を読んだ時のことが頭に浮かびました。
「1973年のピンボール」に感じた浮遊感に似たものを「オーデュボンの祈り」にも感じました。
「オーデュボンの祈り」は、世の中から隔離された島に古くから佇む喋るカカシの優午を軸に話が進みます。
ミステリー小説には違いないんだろうけれど、もう少し深いところで読者に何かを感じさせる作品です。
今まで読んだ伊坂作品の中では一番好きです。
彼の多くの作品は娯楽性の高いものに仕立てられているけれど、彼が40歳、50歳になった時にどんな世界を提示するのか、ちょっぴり興味があります。
オーデュボンの祈り
伊坂幸太郎/新潮社(新潮文庫)/2000
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