ハクチョウに感染したH5N1ウイルスの感染ルートの糸口?
4月下旬から5月上旬にかけて鳥インフルエンザH5N1亜型に感染したハクチョウについて、「家きん疾病小委員会」の検討結果の概要が、農林水産省のサイトにアップされています。
参照:食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会家きん疾病小委員会 第27回(平成20年5月13日) 概要/農林水産省(PDF:10KB)
それによると、
・ 十和田湖、北海道別海町、サロマ湖のH5N1ウイルスとの相同性が高いこと
・ 国内のニワトリで発生したH5N1の京都のウイルスとも、宮崎・岡山のウイルスとも別系統であり、また、インドネシアやベトナムで発生しているウイルスとも別系統であること
ということまで事実が確認されているようです。
農水省のサイトには概要しかまだ載っていないので、それ以上詳しいことはわかりません。(会議資料がアップされれば、もう少し詳しいことがわかると思います。)
それで、新聞で報道されている委員のインタビューなどを読むと、恐らくまだ推測の域をでないのでしょうが、H5N1ウイルスのハクチョウへの感染経路の可能性がわかります。
ひとつは、それぞれの感染したハクチョウは見つかった場所は違うけれど、感染した場所は同じではないかということ。(別々の場所で感染したとなると、同系統のウイルスが広範囲の野鳥にあることになる?)
そして、国内にはカモなどのH5N1に耐性のある水鳥により持ち込まれ、そこからハクチョウに感染したのではないかということです。
ただ、毎日新聞の記事によると、環境省の調査では、感染したハクチョウが発見された北海道や秋田の付近の湖沼の鳥の糞からH5N1は見つかっていないとのことです。
昨年年初の宮崎や岡山の発生のときも、綿密な調査にもかかわらず、熊本のクマタカ1羽以外の野鳥からH5N1は見つかっていません。
参照:高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チームの報告書は、推理小説のようで面白い(2007.10.25)
これから、全国的な調査や、現在韓国で広がっているH5N1ウイルスとの相同性の調査が行われ、もう少しはっきりしたことがわかるのでしょう。
なかなか、感染ルートの解明は一筋縄ではいきませんね。
食料・農業・農村政策審議会消費・安全分科会家畜衛生部会 第27回家きん疾病小委員会(5月13日)(概要)
2 野鳥からの高病原性鳥インフルエンザウイルス(強毒タイプ)の検出について
(2) ウイルス性状分析
ア 山口委員から、今回、我が国の野鳥から分離されたウイルスの性状分析を行った結果について次のように報告があった。
・分離されたウイルス(秋田株、北海道2株)はH5N1亜型であり、また鶏への接種試験にて高病原性であることが確認された。
・分離されたウイルスは、互いに遺伝子レベルで非常に近縁である。
・過去に国内で確認された高病原性鳥インフルエンザウイルス(山口株(平成16年分離)、宮崎株(平成19年分離))との比較では、遺伝子レベルで異なっており、過去に国内で確認された高病原性鳥インフルエンザウイルスとは異なる。
・分離されたウイルスは、インドネシアやベトナムで流行しているウイルスとは異なる。
2008/05/13/農林水産省
秋田・北海道の鳥インフル 同じ場所で感染か
同委員会の委員長を務める北海道大学の喜田宏教授は記者会見で「ほぼ同じ種類のウイルスといえる。死んだハクチョウは同じ場所でウイルスに感染した可能性が高い」と話した。感染した場所が十和田湖か、それより南にある別の湖沼なのかは不明という。
今回のウイルスは、昨年に宮崎県や岡山県でニワトリの大量死を引き起こした「青海湖型」と呼ばれるタイプや、インドネシアやベトナムで流行を続けているタイプとも遺伝的には異なるという。
喜田教授は「鳥インフルエンザの流行が続いている韓国から水鳥によって持ち込まれたのではないか」との見方を示した。
2008/05/14/日本経済新聞
鳥インフルエンザ:野鳥へまん延なし 主要渡来地ふん陰性--環境省
環境省は14日、秋田、青森両県の十和田湖周辺や北海道野付半島など水鳥の主要渡来地10カ所で、ガン・カモ類の野鳥のふん1173個を集め検査した結果、強毒型の鳥インフルエンザウイルス(H5、H7亜型)は検出されなかったと発表した。
十和田湖などでオオハクチョウの死骸(しがい)から強毒型のウイルス(H5N1型)が続けて見つかったのを受け、今月初めに同省職員がふんを採取。国立環境研究所が検査した。その後、10日に強毒型ウイルスが見つかった北海道サロマ湖周辺では、12日にふん100個を集め、現在検査中という。同省は「まだ安心はできないが、少なくとも各地点で鳥インフルエンザがまん延していないことは確認できた」と説明している。
陰性が確認されたのは 大沼▽クッチャロ湖▽濤沸湖▽屈斜路湖▽野付半島▽尾岱沼▽風蓮湖▽厚岸湖▽ウトナイ湖(以上北海道)▽十和田湖(青森、秋田県)。【山田大輔】
2008/05/15/毎日新聞
----------
PDF形式のファイルの閲覧には、Adobe Readerが必要です。Adobe Readerをお持ちでない方は、下のバナーのリンク先からダウンロードしてください。
| 固定リンク
「ニュース」カテゴリの記事
- 3月29日から静鉄電車に急行が復活(2025.03.14)
- 静岡県の2024年産荒茶生産量が鹿児島県に抜かれたというけれど(2025.02.19)
- 静岡県知事公舎 売却の方針(2025.02.14)
- 富士山の標高が3775.51mから5cm高い3775.56mに(2025.02.12)
- 何時になったら改修が終わるのか -静岡市民文化会館(2025.02.10)
「ウイルス、細菌、微生物」カテゴリの記事
- 季節性インフルエンザは急激に減ってきました(2025.02.17)
- 依然、インフルエンザの流行は止まりませんね(2025.01.23)
- ’24/25シーズンのインフルエンザの患者数はここ10年で最大になるかもしれない(2024.12.31)
- 鳥インフルエンザで初の死者 -米国(2025.01.07)
- 静岡県の季節性インフルインザが警報レベルに(2024.12.29)
コメント