東京漂流/藤原新也
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僕は、藤原新也を1981年に創刊された写真週刊誌 FOCUS で初めて知りました。当時、写真週刊誌という形態は珍しく、その珍しさも手伝って創刊号を購入しました。そして、創刊号に彼の 東京漂流 の第1回が掲載されました。
東京漂流 は、藤原の力強いけれど重く暗く硬質な写真と文章で、東京で起こっている事象を綴った連載でした。それは人の心の深い澱みのようです。
しかし、この連載は6回で突然終了してしまいました。
当時、連載中止の理由について、いくつかの憶測がありました。でも、今思うに FOCUS は、たとえば駅の売店で買い、通勤・通学の途中に読むような大衆紙を目指していたのではないか。そのような雑誌の読者は、自分自身の心の影をえぐられるような記事を求めるのだろうか。とりあえず自分は安全な場所においておけるゴシップ記事を求めるんじゃないかな。そんなふうに思います。
今回、紹介する「東京漂流」は、FOCUS の連載を含め、1980年代の東京を描いたものです。
彼はあとがきに「東京漂流」を書いた理由を次のように記しています。
日本人はかつての「いつくしみ」の血は、「憎しみ」の血へと変質したのではないか。街行く誰もが、小さな憎悪の矢をつがえており、時に、それは選ばれたいけにへに向かっていっせいに放たれ、体のよい血祭りをあげた。
何が、そんなに憎いの?
私は、あの「いつくしみ」から「憎しみ」に至る日本の二〇年とは何だったのか、はっきり見極めたいと思った。(P444-445)
そこに描かれる'80年代の東京は、きっと現在だって変わらないんだろうし、開高 健が「ずばり東京」で描く'60年代とも変わらないんじゃないかな。
だからこそ、藤原の
「いつくしみ」は人を変えるが、「憎しみ」は変えない。(P445)
というメッセージに、僕は希望を感じるのだけど。
東京漂流
藤原新也/情報センター/1983
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