インフルエンザと異常行動
インフルエンザが発症した際の異常行動・異常言動と治療薬タミフルの因果関係について、厚生労働省の研究班の調査報告を朝日新聞が報じていました。
朝日新聞の記事によると、18歳未満のインフルエンザ患者約1万にを対象にした調査結果では、タミフルを服用した場合の異常行動は7,181例中700例で9.7%、服用しない場合は2,477例中546例で22.0%と、タミフルを服用しない場合のほうが異常行動を起す割合が高くなっています。
班長の広田良夫大阪市立大学教授は、まだ予備的な分析とし結論は出していないけれど、サンプル数としては十分と思えるので、結論が待たれるところですね。
ところで、タミフルの因果関係よりも、インフルエンザにより異常行動を起す頻度に僕は驚きました。全体の9,658事例調査中、1,246例の12.9%で異常行動が確認されています。18歳未満の人がインフルエンザに感染し、発病した場合約1割強が異常行動を起すと数字は示しているのだけど。
インフルエンザと異常行動の関係は、前からいろいろとアナウンスされていましたが、これほど高率とは思っていませんでした。18歳以上の場合はわからないけれど、相当注意しなければね。
ところで、異常行動てどういったメカニズムで起こるのだろう?
タミフルについていえば、いずれ異常行動との因果関係がわかるのでしょう。でも、普通のインフルエンザでも重篤な症状の場合は使わざるを得ないでしょうし、新型インフルエンザともなれば、治療の選択肢が少ない現状では、どこまで効果があるかわかりませんが切札的存在でしょう。
大切に使いたいものですね。
タミフル、10代の使用制限継続 影響なお不明 厚労省
インフルエンザ治療薬タミフルをめぐり、厚生労働省は25日、10代への使用を制限している措置を続けることを決めた。昨季の患者1万人を対象に、服用と飛び降りなどとの因果関係を調べていた同省研究班(班長、広田良夫・大阪市立大学教授)は、「タミフルを飲んでも異常行動全般のリスクは高まらない」とする分析を発表しながらも、「まだ結論は変わる可能性がある」として、措置解除には踏み込まなかった。
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厚労省はタミフル輸入販売元・中外製薬や同省研究班に調査を指示。今季のインフルエンザシーズンまでに因果関係を改めて検証し、使用を控える措置が妥当かどうか判断するとしてきた。
調査は、薬が脳にどう作用するかの動物実験や、服用後の睡眠時の脳波を調べる臨床試験など、四つのグループで分析してきた。しかし、関係を裏づけるデータは得られなかった。
今回の研究班は、四つの調査で最後の報告だった。対象が1万人と大規模で、異常行動の分類も詳細なことから、特に結論が注目されていた。
対象となったのは、06~07年の18歳未満の患者約1万例で、タミフルを服用していたのは7181例。うち、「大声で叫ぶ」「理由もなく笑う」などの異常行動を起こしたのは10%の700例。一方、服用しなかった2477例のうち、同様の異常行動をしたのは22%の546人だった。
数値をもとにリスクを計算すると、タミフルを飲んだ人の方が、飲まない人よりも異常行動のリスクが大幅に低かった。
ただ、対象を10歳以上に限り、飛び降りなど死亡事故につながりかねない異常行動に絞って比較すると、飲んだ場合と飲まない場合のリスクの差ははっきりしなかった。
全般的にみると、「リスクはむしろ低くなる」という傾向だったことに、広田教授は「あくまで予備的な分析で、結論を出せる段階ではない。さらに検討しないといけない」と説明している。
2007/12/25/朝日新聞
追記
上記調査結果は、厚生労働省の「平成19年度第5回 薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会 安全対策調査会」の資料「インフルエンザ随伴症状の発現状況に関する調査研究」にPDF(全体版 5,142KB、相当重いファイルです)として掲載されています。
全体データ、10歳以上のデータ、タミフルのリスクを最大限に見積もった場合、重度の異常行動の場合などが掲載されています。(PDFの画像精度が悪く少し残念ですが)
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