人類進化の700万年/三井 誠
チンパンジーがヒトより、瞬間的に表示されたものに対する記憶力は優れているという、京都大学霊長類研究所の研究結果は面白いですね。
人類がチンパンジーと1,000万年位前に枝分かれし、両者とも現在まで絶滅せずに生き残っているわけだけど、チンパンジーは能力を維持しヒトは退化させた、その原因は何なんだろう?
研究をした京大霊長類研の松沢所長は、「ヒトとチンパンジーの共通の祖先が持っていた記憶能力を、人は進化の過程で言語や複雑な思考を獲得するのと引き換えに失ったのではないか」と言っているけれど、そのあたりにヒントがありそうですね。
「人類進化の700万年」は、チンパンジーから枝分かれして現生人類(ホモ・サピエンス)に至るまでの人類が歩んだ経過が書かれた本です。
生物の歴史は38億年とも40億年とも言われ、それに比べ人類が歩んだ700万年は余りにも短い時間だけど、その短期間にそれまでの生物が持ち得なかった特長を持った人類が出現したことに驚きを覚えます。その間に何が起こったのだろう?
700万年前にアフリカで誕生した人類が、いくつも枝分かれして、その間に絶滅してしまった人類も結構あるんですね。
そして、運良く?上手く環境に適応して生き残ることができた現生人類は、その過程で、新たな能力を手に入れ不必要になった能力はなくなってしまった、そのひとつが、冒頭のチンパンジーにはできてヒトには難しい瞬間的な記憶能力かもしれません。
なかなかロマンティックな本です。
人類進化の700万年 -書き換えられる「ヒトの起源」-
三井 誠/講談社(講談社現代新書)/2005
・ 書籍の紹介一覧 B0065
チンパンジー 優れた記憶力
京都大学霊長類研究所の松沢哲郎所長のグループは、5歳半のチンパンジーの子ども3匹と、大学生の男女9人の記憶力を比較しました。実験では、事前に小さな数字から大きな数字への順序を覚えさせたチンパンジーと大学生をモニター画面の前に座らせ、5つの数字をばらばらに3段階で瞬間的に表示して数字を小さい方から順番に答えさせていきました。大学生は、それぞれの段階で50回ずつ実験を行った結果、表示時間が短くなるにつれて正答率が80%程度から40%程度に下がっていきましたが、チンパンジーは、500回ずつ行った結果、80%前後の高い正答率を維持したということです。松沢所長は、「ヒトとチンパンジーの共通の祖先が持っていた記憶能力を、人は進化の過程で言語や複雑な思考を獲得するのと引き換えに失ったのではないか」と話しています。
2007/12/04/NHK
・ MediaMarker
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