いつか王子駅で/堀江敏幸
僕が初めて堀江敏幸の名前を知ったのは、NHK BS2で日曜日の朝8時から放送している「週刊ブックレビュー」で、彼の著作「バン・マリーへの手紙」が紹介されていたからです。その中で「思考の寄り道」といった表現を紹介者の方が使っていて、興味を持ちました。
そして、最初に読んだのが「熊の敷石」という作品です。「思考の寄り道」というだけあって、物語が進んでいく中で、主人公の考えや思いが、記憶や知識の中を浮遊し、しばらくするもとの物語に戻っていく、それがひとつの物語の中で何度も何度も繰り返される、不思議な読後感があります。
それで、もう一冊読んでみようと思い読んだのが、今回紹介する「いつか王子駅で」です。
僕が小学生の頃、祖母が東十条に住んでいて、夏休みになると東京へ帰省していました。王子は、京浜東北線で東十条のひとつ東京よりの駅で、駅前の飛鳥山公園の名主の滝に、夏の昼下がりよく遊び行きました。
そんなこともあって、「王子」のタイトルに惹かれてこの作品を読もうと思ったのです。
物語は、主人公の知人の印鑑職人が或る日、姿を消してしまうという話なのだけど、この作品も主人公の考えや思いが幾度となく浮遊します。
下町や昭和の情緒が雰囲気を持って描かれ、それはそれで心地よいものです。
でも、物語はなかなか進まず、何処にもたどり着かず終わります。
その浮遊感、今の僕には少々しんどいかも。
いつか王子駅で
堀江敏幸/新潮社(新潮文庫)/2006
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