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2007.09.12

蚊と感染症

動物が病原微生物を人間に伝播する例は沢山あるけれど、今回は蚊が伝播するウイルスのちょっと気になる記事を見つけました。

ひとつは、ウエストナイルウイルスの伝播が日本在来の蚊でも可能であるという動物衛生研究所の研究結果です。
西ナイル熱は日本国内での感染、発病の例がまだないと思うけれど、将来的になんらかの形でウイルスが蚊とともに国内に進入し、野鳥と在来の蚊の中を行き来して、定着してしまうとやっかいですね。
動衛研のウェブサイトには、「蚊の情報ページ」があって参考になります。

もうひとつは、少し前の記事だけど、日本脳炎の予防接種の再開が難航して、日本脳炎のリスクが少しずつ高まっているという記事です。
日本脳炎ウイルスは、豚と蚊の間を行き来して、ある程度は日本に定着しているのでしょう。

日本脳炎にしても西ナイル熱にしても、感染しても発病する確率は低いみたいで、むやみに心配することはないと思うけれど、発病すると重篤な状態になる場合があるから、その動向に注意が必要ですね。

温暖化が少しずつ進むと、昆虫など、病原微生物の運び屋さんの成育環境も変わるから、今まで日本では余り心配しなくてよかった感染症が問題になるかもしれません。

引用文西ナイル熱、日本の蚊も媒介力 ウイルス実験で確認
重い脳炎を起こして死亡することもある西ナイル熱の原因となるウエストナイルウイルスが、日本在来の蚊の体内でも増殖し、哺乳(ほにゅう)類に感染させる力のあることが、農林水産省系の動物衛生研究所(茨城県つくば市)の実験でわかった。日本にウイルスが侵入した場合、日本の蚊が、人間などへの感染、媒介を担う可能性が示された。9月2日から北海道で開催される日本獣医学会で発表する。
西ナイル熱は、ウエストナイルウイルスに感染した野鳥の血を吸った蚊が、人間や馬などの哺乳類を刺すことで広がる。
ウイルスはアフリカ、中東が原産だが、航空機で蚊が運ばれるなどして北米などにも広がった。厚生労働省は成田空港で、ウイルスを持った蚊の上陸を厳重警戒している。その蚊が空港周辺の鳥を刺して国内で西ナイル熱が流行する心配があるからだ。
そこで同研究所の人獣感染症研究チームは、アカイエカ、ヒトスジシマカなど日本在来の蚊を使い、ウイルスの感染実験をした。
直接、ウイルスを腹に注射した蚊と、ウイルスに感染したジュウシマツを刺させた蚊を、1~2週間室温で飼ったところ、どちらの蚊も体内でウイルスが増殖していた。
さらに、蚊にマウスの血を吸わせたら、大半のマウスは8日以内に体の一部がマヒし、12日以内に死んだ。マウスの体内からはウイルスも見つかった。
同チームは「日本にウイルスが入れば、野外で日本の蚊が鳥類から哺乳類へ媒介させてしまう可能性が示された」と分析している。
米国では昨年、4000人以上が西ナイル熱を発症、177人が死亡。99年にニューヨークで流行したときはパニックも起きた。日本国内での感染例はないが、05年、米ロサンゼルスで蚊に刺されて感染したとみられる川崎市の男性が発症している。
2007/08/26/朝日新聞

引用文日本脳炎、接種中断が4年以上に 新ワクチン開発が難航
副作用の影響で、05年から事実上中断されている日本脳炎の定期予防接種の再開が、新型ワクチン開発の遅れから、大幅にずれ込むことが分かった。再開は09年以降になる見通しという。当初1年程度とみられた中断期間が4年以上に延びることになり、専門家からは感染者の増加を心配する声も出始めている。旧型ワクチンはすでに製造体制がなく在庫量も限られており、厚生労働省は対応に苦慮している。
日本脳炎はウイルスをもつブタの血を吸った蚊に刺されて感染する。60年代には年間2000人以上発症したこともあり、76年に予防接種法に基づく定期予防接種が始まった。中断前の標準的な接種は、3歳で2回、4歳1回、9歳1回、14歳1回だった。
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定期接種の中断が4年になると、09年には6歳以下の大半は免疫をもたないことになる。昨年9月には熊本県内で3歳児が発症。15年ぶりに5歳以下の発症が確認された。これを受けて同省は今年5月、旧ワクチンの接種希望者への情報提供や、医療機関などの在庫を調べて不足地域に融通することなどを求める通知を都道府県に出した。
2007/07/15/朝日新聞

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