リスクのモノサシ/中谷内一也
ひとつのリスクを軽減するために行った行為が、別のリスクを増大させてしまう「リスクのトレードオフ」として、有機塩素系殺虫剤DDT(Dichloro-diphenyl-trichloroethane)が、よく例にあげられます。
DDTは、終戦直後の日本の衛生状態の改善や農作物の生産性の向上に貢献する一方で、環境中での長い残留が問題視され、また、環境ホルモン作用、発癌性などが当時疑われれたこともあって、1970年代の初めに農薬としての使用が禁止されました。
多分、他の低毒性であったり低残留性であったりする代替というかより優れた農薬があった日本では、DDTの使用禁止はさほど大きな問題にならなかったのでしょう。
ただ、貧しい国では安価なDDTに代替する農薬や薬剤がなく、マラリア原虫を媒介する蚊の防除ができず、一時は減少したマラリアが増えてしまった。そこで、一部の発展途上国ではDDTが、今でも使われているそうです。
DDTのリスクを低減したがために、マラリアのより生命に関わるリスクを増大させた「リスクのトレードオフ」の現象なんでしょうね。
中谷内一也の「リスクのモノサシ」は、100%安全なんてない現実の中で、リスクの程度を評価し、より安全な選択をするにはどうしたらよいかが、よく書かれています。
何か危険だという情報に接した時、それが何に比べてどの程度危険なのか、じっくりと考えて判断する、それが「リスクのものさし」なんだろうね。
リスクのモノサシ 安全・安心生活はありうるか
中谷内一也/日本放送出版協会/2006
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