タミフルと副作用と新型インフルエンザ
インフルエンザ治療薬「タミフル」の10代の患者への使用を制限する厚生労働省の発表を朝日新聞が報じています。
薬には副作用がつきもので、だからこそ医師の処方が必要だと思うけれど、タミフルと異常行動の因果関係がはっきりしない状況では、やむを得ないことなのでしょう。
僕は、タミフルのようなインフルエンザ治療薬は、新型インフルエンザの対策との関連で興味を持っています。
もう四半世紀も前の学生時代、それも植物の話ですが、ウイルスに効く薬はないと教わりまた。ウイルスを弱毒化したワクチンとしての予防策はありましたが、カビや細菌に対する殺菌剤のような治療薬はウイルスにはなく、植物が感染し生育が不良になった場合は、その株を焼却などして、他への感染を防ぐ消極的な方法しかありません。
ですから、朝日新聞の記事にコメントしている菅谷憲夫さんの「インフルエンザ 新型ウイルスの脅威」を読んで、インフルエンザ治療薬の存在を知った時は凄いと思いました。(この本は1999年が初版なので、タミフルやリレンザのようなノイラミニダーゼ阻害剤は、開発中のものとして紹介されています。)
でも、素人の勝手な想像ですが、DNAウイルスにしてもRNAウイルスにしても、ヒトのDNAを利用して増殖するから、ウイルスに特異的に効果のある薬を開発するのは難しいじゃないかと思います。
厚生労働省の人口動態調査によると、2005年にインフルエンザが原因の死亡数は1,818人で、10万人当たりの死亡率は1.4人です。'01~'05年の平均では851人、10万人当たり0.7人です。
一方、鳥インフルエンザH5N1型が、鳥にみられる全身症状を出すような病原性を持ってヒトのインフルエンザに変異した場合、多分、10万人に1人程度の死亡率ではおさまらないように思います。
鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議の「新型インフルエンザ対策行動計画 平成19年3月再改訂」によれば、新型インフルエンザの病原性が中程度の場合の死亡者数の上限値は約17万人、重度の場合は約64万人としています。10万人当たりの死亡率に直すと、それぞれ140人、530人程度になります。あくまでも上限値としての推計値ですが、ちょっと怖い数字です。
参考:「新型インフルエンザ対策行動計画 平成19年3月再改訂」のPDF
それまでに有効なワクチンが開発されるのか、タミフルの他、複数の治療薬が開発されるのか?
有効な対策が少ない中で、病原性の強い新型インフルエンザの感染爆発が起こったら、現時点での特効薬(体内でのウイルスの増殖を抑える)とされるタミフルの不足による社会不安が心配です。
事故相次ぎ、一転「禁止」 現場混乱も タミフル制限
インフルエンザ治療薬としてもてはやされている「タミフル」が、10代の患者への使用を制限されることになった。薬と異常行動との因果関係に否定的な姿勢をとっていた厚生労働省が、服用後の転落事故が新たに2件報告されたことを受け、21日未明、記者会見で発表した。インフルエンザの流行さなかの緊急措置に、医療現場や家庭での混乱が予想される。
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神奈川県のけいゆう病院の菅谷憲夫小児科部長の話 本来なら10代だけがタミフルを使わないというのはおかしい。個々の転落事故の事情は不明だが、やむを得ずということだろう。インフルエンザにかかった10代の場合、重症患者や基礎疾患のある患者には使う必要が出てくる場合があるかもしれない。ただ心配なら、別のインフルエンザ治療薬のリレンザを使う手もある。
2007/03/21/朝日新聞
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