感染爆発/マイク・デイヴィス
インフルエンザウイルス関係の本を読んでいると、特に新型インフルエンザの恐ろしさとともに、生物としての巧みさ、したたかさを同時に感じてしまいます。
そして、新型インフルエンザにヒトがどこまで対応できるのか、個人のレベルで何ができるのかを考えてしまいます。
「感染爆発」は、1918年のH1N1(スペイン風邪)、'57年のH2N2(アジア風邪)、'68年のH3N2(香港風邪)などの新型インフルエンザウイルス、2003年のSARSウイルス(重症急性呼吸器症候群)、そしてアジアからヨーロッパに広がっている鳥インフルエンザH5N1を軸に、過去から現在までのパンデミックの経過が記されています。
筆者は生物学の専門家ではないため、生物学的というよりも社会的な観点からパンデミックが描かれています。少し文章に迫力を持たせ過ぎだなと感じるところもありますが。
記憶に新しいSARSの感染拡大の経過は、新型インフルエンザのパンでミックを具体的にイメージするのに役立つと思います。ただ、SARSウイルスは発病後に感染力を持つのに対し、インフルエンザウイルスはもっと早くから感染力を持つという違いがありますが。
新型インフルエンザが発生した際、いかに初期に点としての発生で押さえ込むことの大切さを教えてくれる本です。
感染爆発 - 鳥インフルエンザの脅威
(THE MONSTER AT OUR DOOR - THE GLOBAL THREAT OF AVIAN FUL -)
MIKE DAVIS/柴田裕之 斉藤隆央(訳)/紀伊国屋書店/2006
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コメント
三島の畜産人さん、ブログ読んでいただきありがとうございます。
ご指摘の点、言葉足らずか僕の理解不足の点があるかもしれません。
「感染爆発」の中で、デイヴィスはJ.PeririsとY.Guanの"Confronting SARS:A View from Hong Kong,"を引用しながら、SARSウイルスについて、「SARSは潜伏期間が五日ほどで、通常、発熱や空咳の症状が出始めてからかなりたつまで感染しない。感染力がピークに達するのには約一〇日かかるし、発病しない無症候性の感染がほとんどないことも研究でわかっている。」(P98)と記しています。
一方、インフルエンザウイルスについては、「インフルエンザとなると、まったく話が違う。感染が速いうえにそれとわかりにくく、感染したら発病するともかぎらない。感染者は、実際に症状が現れる一日以上前から大量のウイルスをまき散らし、病気を盛んに感染させるようになる。」(P99)とあります。
このデイヴィスの記述が、本当に正しいものか専門家ではない僕には判断できないところがありますが、これに従えばSARSウイルスの方が防疫措置がまだとりやすいと思いブログの記述になりました。
インフルエンザウイルスの本を少しづつ読んでいて、その性状にとても面白さを感じています。
駄文を書いていますが、何か気づいた点がありましたら指摘してください。
投稿: Kaze | 2007.02.06 22:38
いつもながらの、好奇心の塊には驚かされます。
ところで「ただ、SARSウイルスは発病後に感染力を持つのに対し、インフルエンザウイルスはもっと早くから感染力を持つという違いがありますが」の記述が良く理解できないのですが、もう少し詳しく教えてください。
投稿: 三島の畜産人 | 2007.02.06 21:24