「負けるが勝ち」の生き残り戦略/泰中啓一
お茶の害虫のひとつにカンザワハダニという赤い色をした0.5mmほどの小さなダニがいます。このダニを防除するために、合成ピレスロイド剤を使うと、いったんはいなくなるのですが、暫くすると以前にも増して大発生することがあります。
このような現象はリサージェンスと呼ばれます。その原因は、カンザワハダニとともに天敵のケナガカブリダニ(ダニを餌にするダニ)も一緒に防除されたため、いったんいなくなったカンザワハダニの天下になるためと言われています。
こんなことを泰中啓一の<「負けるが勝ち」の生き残り戦略>を読みながら思っていました。
この本では、生物の進化を軸に人間社会まで、「利他主義」が生き延びるための最適な戦略であることを、コンピュータ・シミレーションの結果や様々な事例などをとおして説明されます。
短期的には自分の利益にのために行動する「利己主義」のほうが有利だけれど、長期的には他を助けて行動するほうが絶滅せず生き残ると語ります。
集団の中では助け合ったほうが、その集団の寿命が長いということだろうか。
この考えがどのくらい生物の進化や人間社会にフィットするものか、僕には判断できません。ただ、どうしても目先の利益にとらわれてしまう僕にとって、少し考えされられる本です。
この本の筆者は、静岡大学工学部システム工学科の研究者です。以前紹介した「素数ゼミの謎」の著者、吉村 仁さんも静大工学部の研究者です。工学分野(といっても幅が広いと思いますが)からの進化の研究のアプローチも面白いですね。
「負けるが勝ち」の生き残り戦略 - 何故自分のことばかり考えるやつは滅びるか -
泰中啓一/KKベストセラーズ/2006
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