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2006.02.11

プリオン説はほんとうか?/福岡伸一

年末に米国産牛肉の輸入が条件付で再開されたと思ったら、牛海綿状脳症(BSE)の病原体がたまりやす特定危険部位である脊柱が混入されていて、再び輸入が中止されました。
以前もブログに書きましたが、BSEの問題が話題になるたびに、病原体とされる異常型プリオンタンパク質についての疑問がわきます。
どうやって飼料に混入してた異常型プリオンタンパク質が、分解されず体内にとり込まれ、脳や脊髄などの特定危険部位に到達するのか。
そして、異常型プリオンといえどもタンパク質が正常型プリオンタンパク質に働きかけて異常型に変えてしまうのか。
そのような疑問です。

病原体といえばウイルスにしろ細菌にしろ遺伝子を持っていて、そのプログラムに基づいて増殖する過程で病原性が発現するのだと、僕は理解していました。
ですから、遺伝子のプログラムによって作り出されるタンパク質が自らの意思があるかのように増えていくことが、不思議でなりません。

まあ、それだからこそプリオン説を唱えたスタンリー・プルシナーは、新しい病原体の感染原理としてノーベル生理学・医学賞を受賞したのでしょう。

今回紹介する「プリオン説はほんとうか?」は、プリオン説の不完全さを指摘するとともに、レセプター仮説を提示しています。

本の巻末に書かれているように「不溶性の凝集タンパク質が、経口的に体内に入った後、消化を免れることはともかくとして、消化管を突破し、末梢のリンパ組織で増殖してから全身に広がり、最後は、脳血管関門を超え脳に侵入し大増殖する」ことに対する疑問から筆者の研究は出発しています。
この疑問は、プリオン説に対して誰もが抱く素朴な疑問だと思います。

そして、筆者の提示するレセプター仮説は、異常型プリオンタンパク質が病原体ではなく、真の病原体は未知のウイルス(あるいは何らかの核酸を持った病原体)としています。そして正常型プリオンタンパク質は、病原体の感染レセプターとして機能し、ウイルスが感染した結果、その副産物として異常型プリオンタンパク質が蓄積されるのだという仮説です。
確かにこの仮説は、とても理解しやすいものです。
ただ、未だにウイルスやその断片である核酸すら見つからない。プリオン説を覆す決定的な証拠がつかめないようです。

プリオン説が正しいのか、レセプター仮説が正しいのか、それとも他の原因があるのか、これからの研究が待たれるところです。

しかし、それはそれとしてこの本は、読んでいて面白いし、BSEの原因についての知識を得るにはいいかもしれません。

本プリオン説はほんとうか? タンパク質病原体説をめぐるミステリー
福岡伸一/講談社 ブルーバックス/2005

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・ この記事は「プリオンの話はもちろん」(茂木健一郎 クオリア日記)と「脳年齢、はやぶさ、海洋酸性化、プリオン説?」(中村正三郎のHOT CORNER)にトラックバックしました。

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