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2006.01.26

薬はなぜ効かなくなるか/橋本 一

前回、三瀬勝利の「薬が効かない」を紹介しました。今回、紹介する橋本 一の「薬はなぜ効かなくなるか」も一般向けの本ですが、「薬が効かない」よりも耐性菌が発生する仕組がもう少し詳しく書かれています。
文中に出てくる薬剤の名前や化学式などは、僕には手に負えないと思うところもあるけれど、細菌の薬剤耐性化する仕組は面白く読めました。

細菌が耐性化する方法も攻撃的な方法と守備的な方法があるところなど、人間社会と似ていると感じます。

まず、攻撃的方法として細菌を無力化する薬剤の構造を壊してしまう方法。そして、「修飾」と呼ばれる薬剤の構造に余計なものを付け加えて薬剤の効力を失わせてしまう方法が挙げられています。

守備的な方法としては、薬剤が作用し不活性化される細菌の酵素の量よりも多くの酵素を作る方法や攻撃対象の酵素の機能を維持しながら攻撃されないよう形態を変えてしまう方法。また、細胞内に薬剤が侵入されないように透過性を変化させたり、逆に入った薬剤を細胞外に排出する機能の強化などが挙げられています。

細菌も生き残るため、あの手この手を使って耐性化する方法に、やっかいなものと感じながら変な感心をしてしまいました。

それともうひとつ面白かったのは、細菌は薬剤耐性の遺伝情報を水平遺伝により伝達しているところです。簡単に言うと細菌にもメスとオスがいて接合により遺伝子の交換が行われるということ。
本書143ページには、接合の状況の顕微鏡写真が8枚掲載されています。オスが線毛でメスを捕らえる写真やメスに逃げられる写真があったりして、面白く読めました。
細菌はもっとも古い生物と考えられているけど、男女関係ってその頃からの永遠のテーマなんですね。

まあ、薬剤耐性ひとつとっても細菌はかなりしたたかなわけで、それを相手にしなければならない人間も大変です。

本薬はなぜ効かなくなるか - 病原菌は進化する -
橋本 一/中公新書/2000

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