カテゴリー「書籍の紹介」の150件の記事

2017.11.30

バースデイ・ガール/村上春樹

新作かと思って読み始めたら、どこかかなり前の村上春樹の雰囲気がする物語だと感じました。
あとがきを読むと、15年ほど前にバースディ・ストーリーを集めて翻訳した本に、村上が書き下ろした短編だそうで、それで納得しました。読んでいませんでした。

「バースデイ・ガール」は、彼女が二十歳の誕生日に経験した不思議な出来事とその後についての物語です。

村上作品らしく物語には結論がありません。

ただ、

人間というのは、何を望んだところで、どこまでいったところで、自分以外にはなれないねっていうこと。ただそれだけ
という彼女の言葉が何を意味するのか、考えるより感じることかも。

そして、

あなたはきっともう願ってしまったのよ
と、主人公の「僕」に向けられる彼女の言葉は、読んでいる僕にも向けられた言葉です。

村上の短編を久し振りに読んで、はっとさせられました。

本バースデイ・ガール
村上春樹 (Murakami Haruki) イラストレーション:カット・メンシック(Kat Manschik)/新潮社/2017

書籍の紹介一覧 B0150

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バースデイ・ガール
村上 春樹
新潮社 ( 2017-11-30 )
ISBN: 9784103534358

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2017.11.23

小澤征爾さんと、音楽について話をする/村上春樹 小澤征爾

発売当初に購入したもののずいぶん長い間積んでおいて、ようやく読み終えました。
なんでもっと早く読まなかったんだと思うほど面白かった。

「小澤征爾さんと、音楽について話をする」は、2010年冬から'11年夏にかけて療養中の小沢征爾に対する6回にわたる村上春樹のロングインタビューをまとめたものです。

小沢があとがきに「音楽好きの友人はたくさん居るけれど、春樹さんはまあ云ってみれば、正気の範囲をはるかに越えている。」と記すように、村上の豊富でマニアックな知識と感性で行うインタビューは、長期療養中の小沢を刺激したようで、実に興味深く面白く読めます。

インタビューというより小沢と村上の対話です。

バーンスタイン、カラヤン、ボストン、サイトウ・キネン..... 小澤が深く関わった指揮者、演奏家、オーケストラをとおして、小澤の音楽が語られます。

特に面白かったのはマーラーについての対談です。
マーラーの交響曲は、様々なものが一緒に出てくる脈絡のなさというか、難しく聴くのに骨が折れます。そんなわけで、僕は何枚かマーラーのCDやLPを持っていますが、ずいぶん久しく聴いていません。

小澤は楽譜を深く深く読み込むそうです。そして、自らの思いよりも音楽を音楽として捉えているのだと。
そうかと思い、このところマーラーを聴くようになりました。

また、この本の中で語られた楽曲について3枚組のCDが出ていて、あわせて聴くととても興味深いです。

音楽について村上は他にも書いているし、彼の小説中にも描かれていますが、村上の文章は音楽を聴ききたくなります。

 「小澤征爾さんと、音楽について話をする」と「『小澤征爾さんと、音楽について話をする』で聴いたクラシック」
・ 「小澤征爾さんと、音楽について話をする」と「『小澤征爾さんと、音楽について話をする』で聴いたクラシック」

本小澤征爾さんと、音楽について話をする
村上春樹 (Murakami Haruki) 小澤征爾 (Ozawa Seiji)/新潮社/2011

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小澤征爾さんと、音楽について話をする
小澤 征爾, 村上 春樹
新潮社 ( 2011-11-30 )
ISBN: 9784103534280

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2017.07.06

サラダ記念日/俵 万智

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
サラダ記念日/俵万智

7月6日はサラダ記念日ということで俵 万智の「サラダ記念日」を読み返しています。

言わずと知れた俵 万智の最初の歌集でベストセラーになりました。

短歌には縁のなかった僕でも、五七五七七 31文字に凝縮された新鮮な言葉による心に惹かれました。

また、朝日パソコン(廃刊)で俵さんがPCと奮闘する連載があって親しみを持って、その後の歌集やエッセイを折に触れて読んできました。

改めて読み返してみると、どこかふんわりしていて20代の心が表れています。その後の作品は、どんどん情念が滲み出て怖いなあと凄みを感じるものね ^^;

本サラダ記念日
俵 万智 (Tawara Machi) /河出書房新社(河出文庫)/1987

書籍の紹介一覧 B0148

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サラダ記念日 (河出文庫―BUNGEI Collection)
俵 万智
河出書房新社 ( 1989-10-01 )
ISBN: 9784309402499

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2017.06.02

新・敬語論/井上史雄

僕は、普段から敬語に対して心もとなく苦手意識がある中で、たまたまAmazonで目に付いたので読んでみました。

果たして面白かったです。

敬語の間違った使い方について、いろいろな場面でやり玉にあげられることがあります。
この本は、単に間違えを指摘するのではなく、なぜそのような使われ方がされるようになったのか、間違った使われ方が世間でどの程度受け入れられているのかなどが書かれていて、面白かったです。

「させていただく」という表現があります。
たとえば、「ただいまから、会議を開催させていただきます。」。僕はこの言い方は気になっていて、「開催します。」と丁寧語でいいんじゃないかと感じています。でも、実際は「させていただく」に違和感を持つ人は少なく、謙譲語の新たな形態として定着しつつあるそうです。

「よろしかったでしょうか?」という表現があります。
混んだ店に入って、入口で「相席でよろしかったでしょうか?」と聞かれるような場合です。
この表現には違和感を持つ人が多いようで、コンビニ敬語とかマニュアル敬語とか批判されます。
ただ、本によると「た」には過去形を表す以外の使われ方が、北海道や東北ではされるとのこと。
そういえば、僕も電車がホームに近づくと「来る」ではなく「電車が来た」と言うものね。

このようにこの本では、多くの敬語の間違った使われ方とその理由、現在どの程度受け入れられているかが解説されています。

敬語は、人間関係が複雑になる社会に出てから取得し使うようになるので、その使われ方は社会的な背景に影響を受け、変化をするものと筆者は分析します。
戦後、日本に民主主義が定着し縦の関係から横の関係に変化する中で、尊敬語、謙譲語が丁寧語化しているのではと。

なるほどなあと、思わされた一冊です。

本新・敬語論 - なぜ「乱れる」のか
井上史雄 (Inoue Fumio)/NHK出版新書/2017

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2017.04.20

河は眠らない/開高 健・青柳陽一

僕は、開高 健の「河は眠らない」を30年ほど前にレーザディスク(LD)で観ました。

開高がアラスカ・キーナイ川でキングサーモンを釣るという60分程度のビデオです。

プログラムの中で、森と川、アラスカの大自然を背景に開高は釣りや酒、環境、人生...様々なことを語ります。たいていこのようなことを語られると、どこか胡散臭くて僕は逃げ出したくなりますが、何故かはわからないけれど開高は例外でストンと腑に落ちます。

ヘラクレイトスの「万物は流転する」とか、「熱力学第一法則」とか、西田幾多郎の「絶対矛盾的自己同一」とか、開高節で語られそれが嫌味ではないんだよね。

書籍版の「河は眠らない」は、青柳陽一のスチール写真と開高の語りの書き起こしで構成され、没後20年を記念して発行されました。

かくして
魚のいのちは終わった。
釣り人もやがては死ぬ。
しかし
河は眠らない。
河は眠らない/開高 健・青柳陽一

名言です。

人の心にとっての「ナース・ログ」は何か。

無駄を恐れてはいけないし
無駄を軽蔑してはいけない。
河は眠らない/開高 健・青柳陽一

こちらも名言です。

河は眠らない/開高 健・青柳陽一

本河は眠らない
開高 健 (Kaiko Takeshi) 写真 青柳陽一(Aoyagi Yoichi)/文藝春秋/2009

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河は眠らない
開高 健
文藝春秋 ( 2009-02-25 )
ISBN: 9784163711300

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2016.05.10

富士山 大自然への道案内/小山真人

静岡に住んでいると富士山はいつも(実際は少しでも見えるのは一年のうち6割くらいだけど)見ているありふれた山です。

 田貫湖(富士宮市) 2015.12.07
・ 田貫湖(富士宮市) 2015.12.07

ありふれていると言っても、富士山の成り立ちは特異的なものだと感じます。
そもそも伊豆半島を含むフィリピン海プレートが、関東地方がのっかった北米プレートと東海地方がのっかったユーラシアプレートにぶつかり沈み込む交差点のような場所にできた山だもの。

「富士山 大自然への道案内」は、宝永噴火、貞観噴火、東麓、南東麓、西麓~南西麓、北麓、山頂登山の7つのコースに分けて、実際に見て歩けるガイドマップ風に解説したものです。

といっても、筆者は火山学、歴史地震学の専門家で、それぞれのコースが科学的に説明されています。

たとえば、864年に北西斜面で起こった貞観噴火により大量に流れ出た溶岩によって、青木ヶ原樹海の地形やせのうみが分断され西湖と精進湖ができたことなど、親しみのある場所の見る目が変わります。

富士山は大小の噴火を繰り返し、周辺の地形を含め形を変えてきており、それは現在も進行中であることが、この本を読むとよくわかります。

そして、今の美しい姿は暫定的であり、僕はいい時代の富士山を見ているんだなと感じます。

本富士山 大自然への道案内
小山真人 (Koyama Masato)/岩波新書/2013

書籍の紹介一覧 B0145

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2016.03.25

田宮模型全仕事[増補版] 1 ミリタリーモデルズ/タミヤ編

懐かしくなって少し高かったけれど買ってしまいました。

「田宮模型全仕事[増補版] 1 ミリタリーモデルズ」は、タミヤが1946年からこれまでに発売した約700点のミリタリーモデルを収録したカタログです。

僕は10代の頃、1/35ミリタリー・ミニュチュア・シリーズを中心にお世話になりました。

250ページにもなるボリュームのある本で、製品のカラー写真や解説が掲載されていています。
タイガーⅠ、パンサー、ロンメル、キュベールワーゲン、ジープ・ウイルス… 懐かしいです。

田宮模型全仕事[増補版] 1 ミリタリーモデルズ/タミヤ編

全仕事は、ミリタリーモデルズの他、カー・モーターサイクルモデルズ、シップ・エアクラフトモデルズの2冊、計3冊で構成されています。
残り2冊も買ってしまうのだろうな ^^;

本田宮模型全仕事[増補版] 1 ミリタリーモデルズ
株式会社タミヤ編/文藝春秋/2016

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2015.07.03

3652/伊坂幸太郎

「3652」は、2000年から2015年までに書かれた伊坂幸太郎のエッセイと2編の数ページの短編が収められています。
タイトルの「3652」は、作家10周年を記念したエッセイ集として最初に単行本として出版したので、365日×10年+うるう年の2日=3652日に因んでいるそうです。文庫化でその後のエッセイが追加されています。

エッセイには、彼の小説のインサイド・ストーリー的なことが書かれていて、伊坂ファンには楽しくまた興味深く読めると思います。

また、本や音楽などが多数紹介されているので、新たなジャンルを開拓するのにいいかもしれません。

その中で、若い頃、影響を受けた本として大江健三郎の比較的初期の作品「叫び声」が紹介されています。
僕は大江作品はある程度読んできたつもりでいましたが、「叫び声」は未読でした。

それで懐かしくなってAmazonで注文しました。Amazonの「叫び声」のページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」には、伊坂作品や「3652」で紹介された書籍が多く表示されます。
大江と伊坂の読者はあまり重ならないように思ったけれど、なるほど「3652」を読んで大江作品を購入したのですね。

確かにこのエッセイで紹介された本や音楽は読んだり聴いてみたくなるものね。

Amazonの大江健三郎「叫び声」のページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」で表示される書籍
・ Amazonの大江健三郎「叫び声」のページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」で表示される書籍

本3652 - 伊坂幸太郎エッセイ集 -
伊坂幸太郎 (Isaka Kotro) /新潮社(新潮文庫)/2015

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2015.05.16

四次元時計は狂わない/立花 隆

「四次元時計は狂わない」は、科学から国際情勢まで幅広く立花 隆がエッセイ風に書き記したもので、2011年から3年間「文藝春秋」に連載したものだそうです。

僕がこれまで読んだ立花の著作は、社会の事象も自然科学もひとつのテーマを綿密な取材で書かれたものがほとんどだったので、立花のエッセイは珍しいと思って読みました。

「日本再生」「革命の世紀」「知の新時代へ」の章に歴史、国際情勢、時事問題、科学技術、立花自身のことなど、極めて広範囲なテーマ39項目について語られています。

1項目6ページほどの短い文章ですが、それぞれについて1冊本が書けるのでと思うくらい、内容は深いです。きっと取り上げたい対象はたくさんあるのでしょうが、ひとつのテーマに膨大な時間をかける立花にとっては、74歳という年齢は余りにも時間がないのでしょう。

そのこともあるのか、世代交代、若者たちに確信を持って未来を託していること。
そして、21世紀に展開される科学技術に、そして日本の技術に明るい未来を感じていることに共感します。

さらにいえば、その未来が実現する時、僕は生きておらず目の当たりにできないことにも‥ 。

本四次元時計は狂わない - 21世紀 文明の逆説 -
立花 隆 (Tachibana Takashi) /文藝春秋(文春新書)/2014

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2014.11.15

恋する伊勢物語/俵 万智

俵 万智さんが古文の先生だったら、もっと古典に興味を持て古文の授業が楽しくなったと思う一冊です。

「恋する伊勢物語」は、あまりにも有名な平安時代初期に書かれた古典の代表作のひとつ「伊勢物語」を俵 万智が解説したものです。
そう、「むかし、男ありけり」で始まる章段の多いあの「伊勢物語」です。

平安貴族の恋愛と男の友情が書かれた物語を、俵さんの時にはっとさせられる解釈が加えられとても面白く読めます。もしかしたら解説というよりも「伊勢物語」を題材にしたエッセイに近いものかもしれません。

昔の言葉で書かれた古典は内容がよくわからずどうしても敬遠してしまいます。
でも、俵さんのフィルターを通した「伊勢物語」を読むと、昔も今も人の考えや行動は変わらないんだなと感じます。

この内容が古文の時間に教えられていいものなのかな。それくらい「伊勢物語」は艶めかしく情けない物語だったんだ。

本恋する伊勢物語
俵 万智 (Tawara Machi) /筑摩書房(ちくま文庫)/1995

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恋する伊勢物語 (ちくま文庫)
俵 万智
筑摩書房 ( 1995-09 )
ISBN: 9784480030795

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