カテゴリー「書籍の紹介」の147件の記事

2017.06.02

新・敬語論/井上史雄

僕は、普段から敬語に対して心もとなく苦手意識がある中で、たまたまAmazonで目に付いたので読んでみました。

果たして面白かったです。

敬語の間違った使い方について、いろいろな場面でやり玉にあげられることがあります。
この本は、単に間違えを指摘するのではなく、なぜそのような使われ方がされるようになったのか、間違った使われ方が世間でどの程度受け入れられているのかなどが書かれていて、面白かったです。

「させていただく」という表現があります。
たとえば、「ただいまから、会議を開催させていただきます。」。僕はこの言い方は気になっていて、「開催します。」と丁寧語でいいんじゃないかと感じています。でも、実際は「させていただく」に違和感を持つ人は少なく、謙譲語の新たな形態として定着しつつあるそうです。

「よろしかったでしょうか?」という表現があります。
混んだ店に入って、入口で「相席でよろしかったでしょうか?」と聞かれるような場合です。
この表現には違和感を持つ人が多いようで、コンビニ敬語とかマニュアル敬語とか批判されます。
ただ、本によると「た」には過去形を表す以外の使われ方が、北海道や東北ではされるとのこと。
そういえば、僕も電車がホームに近づくと「来る」ではなく「電車が来た」と言うものね。

このようにこの本では、多くの敬語の間違った使われ方とその理由、現在どの程度受け入れられているかが解説されています。

敬語は、人間関係が複雑になる社会に出てから取得し使うようになるので、その使われ方は社会的な背景に影響を受け、変化をするものと筆者は分析します。
戦後、日本に民主主義が定着し縦の関係から横の関係に変化する中で、尊敬語、謙譲語が丁寧語化しているのではと。

なるほどなあと、思わされた一冊です。

本新・敬語論 - なぜ「乱れる」のか
井上史雄 (Inoue Fumio)/NHK出版新書/2017

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2017.04.20

河は眠らない/開高 健・青柳陽一

僕は、開高 健の「河は眠らない」を30年ほど前にレーザディスク(LD)で観ました。

開高がアラスカ・キーナイ川でキングサーモンを釣るという60分程度のビデオです。

プログラムの中で、森と川、アラスカの大自然を背景に開高は釣りや酒、環境、人生...様々なことを語ります。たいていこのようなことを語られると、どこか胡散臭くて僕は逃げ出したくなりますが、何故かはわからないけれど開高は例外でストンと腑に落ちます。

ヘラクレイトスの「万物は流転する」とか、「熱力学第一法則」とか、西田幾多郎の「絶対矛盾的自己同一」とか、開高節で語られそれが嫌味ではないんだよね。

書籍版の「河は眠らない」は、青柳陽一のスチール写真と開高の語りの書き起こしで構成され、没後20年を記念して発行されました。

かくして
魚のいのちは終わった。
釣り人もやがては死ぬ。
しかし
河は眠らない。
河は眠らない/開高 健・青柳陽一

名言です。

人の心にとっての「ナース・ログ」は何か。

無駄を恐れてはいけないし
無駄を軽蔑してはいけない。
河は眠らない/開高 健・青柳陽一

こちらも名言です。

河は眠らない/開高 健・青柳陽一

本河は眠らない
開高 健 (Kaiko Takeshi) 写真 青柳陽一(Aoyagi Yoichi)/文藝春秋/2009

書籍の紹介一覧 B0146

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河は眠らない
開高 健
文藝春秋 ( 2009-02-25 )
ISBN: 9784163711300

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2016.05.10

富士山 大自然への道案内/小山真人

静岡に住んでいると富士山はいつも(実際は少しでも見えるのは一年のうち6割くらいだけど)見ているありふれた山です。

 田貫湖(富士宮市) 2015.12.07
・ 田貫湖(富士宮市) 2015.12.07

ありふれていると言っても、富士山の成り立ちは特異的なものだと感じます。
そもそも伊豆半島を含むフィリピン海プレートが、関東地方がのっかった北米プレートと東海地方がのっかったユーラシアプレートにぶつかり沈み込む交差点のような場所にできた山だもの。

「富士山 大自然への道案内」は、宝永噴火、貞観噴火、東麓、南東麓、西麓~南西麓、北麓、山頂登山の7つのコースに分けて、実際に見て歩けるガイドマップ風に解説したものです。

といっても、筆者は火山学、歴史地震学の専門家で、それぞれのコースが科学的に説明されています。

たとえば、864年に北西斜面で起こった貞観噴火により大量に流れ出た溶岩によって、青木ヶ原樹海の地形やせのうみが分断され西湖と精進湖ができたことなど、親しみのある場所の見る目が変わります。

富士山は大小の噴火を繰り返し、周辺の地形を含め形を変えてきており、それは現在も進行中であることが、この本を読むとよくわかります。

そして、今の美しい姿は暫定的であり、僕はいい時代の富士山を見ているんだなと感じます。

本富士山 大自然への道案内
小山真人 (Koyama Masato)/岩波新書/2013

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2016.03.25

田宮模型全仕事[増補版] 1 ミリタリーモデルズ/タミヤ編

懐かしくなって少し高かったけれど買ってしまいました。

「田宮模型全仕事[増補版] 1 ミリタリーモデルズ」は、タミヤが1946年からこれまでに発売した約700点のミリタリーモデルを収録したカタログです。

僕は10代の頃、1/35ミリタリー・ミニュチュア・シリーズを中心にお世話になりました。

250ページにもなるボリュームのある本で、製品のカラー写真や解説が掲載されていています。
タイガーⅠ、パンサー、ロンメル、キュベールワーゲン、ジープ・ウイルス… 懐かしいです。

田宮模型全仕事[増補版] 1 ミリタリーモデルズ/タミヤ編

全仕事は、ミリタリーモデルズの他、カー・モーターサイクルモデルズ、シップ・エアクラフトモデルズの2冊、計3冊で構成されています。
残り2冊も買ってしまうのだろうな ^^;

本田宮模型全仕事[増補版] 1 ミリタリーモデルズ
株式会社タミヤ編/文藝春秋/2016

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2015.07.03

3652/伊坂幸太郎

「3652」は、2000年から2015年までに書かれた伊坂幸太郎のエッセイと2編の数ページの短編が収められています。
タイトルの「3652」は、作家10周年を記念したエッセイ集として最初に単行本として出版したので、365日×10年+うるう年の2日=3652日に因んでいるそうです。文庫化でその後のエッセイが追加されています。

エッセイには、彼の小説のインサイド・ストーリー的なことが書かれていて、伊坂ファンには楽しくまた興味深く読めると思います。

また、本や音楽などが多数紹介されているので、新たなジャンルを開拓するのにいいかもしれません。

その中で、若い頃、影響を受けた本として大江健三郎の比較的初期の作品「叫び声」が紹介されています。
僕は大江作品はある程度読んできたつもりでいましたが、「叫び声」は未読でした。

それで懐かしくなってAmazonで注文しました。Amazonの「叫び声」のページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」には、伊坂作品や「3652」で紹介された書籍が多く表示されます。
大江と伊坂の読者はあまり重ならないように思ったけれど、なるほど「3652」を読んで大江作品を購入したのですね。

確かにこのエッセイで紹介された本や音楽は読んだり聴いてみたくなるものね。

Amazonの大江健三郎「叫び声」のページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」で表示される書籍
・ Amazonの大江健三郎「叫び声」のページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」で表示される書籍

本3652 - 伊坂幸太郎エッセイ集 -
伊坂幸太郎 (Isaka Kotro) /新潮社(新潮文庫)/2015

書籍の紹介一覧 B0143

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2015.05.16

四次元時計は狂わない/立花 隆

「四次元時計は狂わない」は、科学から国際情勢まで幅広く立花 隆がエッセイ風に書き記したもので、2011年から3年間「文藝春秋」に連載したものだそうです。

僕がこれまで読んだ立花の著作は、社会の事象も自然科学もひとつのテーマを綿密な取材で書かれたものがほとんどだったので、立花のエッセイは珍しいと思って読みました。

「日本再生」「革命の世紀」「知の新時代へ」の章に歴史、国際情勢、時事問題、科学技術、立花自身のことなど、極めて広範囲なテーマ39項目について語られています。

1項目6ページほどの短い文章ですが、それぞれについて1冊本が書けるのでと思うくらい、内容は深いです。きっと取り上げたい対象はたくさんあるのでしょうが、ひとつのテーマに膨大な時間をかける立花にとっては、74歳という年齢は余りにも時間がないのでしょう。

そのこともあるのか、世代交代、若者たちに確信を持って未来を託していること。
そして、21世紀に展開される科学技術に、そして日本の技術に明るい未来を感じていることに共感します。

さらにいえば、その未来が実現する時、僕は生きておらず目の当たりにできないことにも‥ 。

本四次元時計は狂わない - 21世紀 文明の逆説 -
立花 隆 (Tachibana Takashi) /文藝春秋(文春新書)/2014

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2014.11.15

恋する伊勢物語/俵 万智

俵 万智さんが古文の先生だったら、もっと古典に興味を持て古文の授業が楽しくなったと思う一冊です。

「恋する伊勢物語」は、あまりにも有名な平安時代初期に書かれた古典の代表作のひとつ「伊勢物語」を俵 万智が解説したものです。
そう、「むかし、男ありけり」で始まる章段の多いあの「伊勢物語」です。

平安貴族の恋愛と男の友情が書かれた物語を、俵さんの時にはっとさせられる解釈が加えられとても面白く読めます。もしかしたら解説というよりも「伊勢物語」を題材にしたエッセイに近いものかもしれません。

昔の言葉で書かれた古典は内容がよくわからずどうしても敬遠してしまいます。
でも、俵さんのフィルターを通した「伊勢物語」を読むと、昔も今も人の考えや行動は変わらないんだなと感じます。

この内容が古文の時間に教えられていいものなのかな。それくらい「伊勢物語」は艶めかしく情けない物語だったんだ。

本恋する伊勢物語
俵 万智 (Tawara Machi) /筑摩書房(ちくま文庫)/1995

書籍の紹介一覧 B0141

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恋する伊勢物語 (ちくま文庫)
俵 万智
筑摩書房 ( 1995-09 )
ISBN: 9784480030795

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2014.10.28

猫田びより/久楽

先日紹介した週刊少年ジャンプの電子版「少年ジャンプ+」で、毎日「猫田びより」が配信されています。

「猫田びより」は、毎回2~3話、1話当たり数ページの短編で、毎日無料配信され9/22から今日まで37回になります。

猫田さんと呼ばれる人の言葉を話すことのできる怠惰な猫と、その家の学生の亜美ちゃん、近所に住む彼女のいとこのてっちゃんを軸に、なにげない毎日が描かれています。

「猫田びより」1回の表紙(iPhone5)<br />
・ 「猫田びより」1回の表紙(iPhone5)

関連エントリー:週刊少年ジャンプの電子版 (2014.09.22)

なかなかほのぼのとしてよくて、毎日楽しみに読んでいます。
それにしても作者の久楽さんはどんな人なのだろう? ネットで検索してもプローフィールが見つからないんだ ^^;

本猫田びより
久楽 (kuraku) /集英社(少年ジャンプ+)/2014

書籍の紹介一覧 B0140

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2014.07.22

私説 ミジンコ大全/坂田 明

20年以上も前、静岡市内の短期大学の市民向けの公開講座で、坂田 明のミジンコをテーマにした公開講座がありました。

坂田は日本を代表するジャズマンです。僕は、彼がミジンコに造詣深いことを知ってはいましたが、きっとジャズとの関連で講演するものと思い、興味をもって聞きにいきました。
果たして予想に反して、講演は生物としてのミジンコについてであって、かなり本格的な内容で面白く聴講したのを憶えています。

「私説 ミジンコ大全」は、長年の坂田のミジンコの観察・研究の成果をまとめた本です。

最初に坂田とミジンコの出会い、ミジンコとは何か、その生態などが書かれていて、ミジンコを知る入門書としてもよいかも知れません。
また、彼自身が撮った多くのミジンコのとても美しい顕微鏡写真が掲載されています。

さらに後半は、坂田と陸水生態、海洋ミジンコ、分子生物のそれぞれの分野の研究者との対談になっています。
対談の内容が専門的で、生物好きには十分楽しめます。

坂田 明は広島大学水産学部の出身で、もともと生物の観察とその存在の意味を考えるのが好きだったんだと納得させられる一冊です。

ところで、この本には「海」というタイトルのCDが付属しています。
付録にしておくにはもったいないすばらし演奏で、このCDについては改めて書きたいと思います。

本私説 ミジンコ大全 - 人間とミジンコがつながる世界認識 -
坂田 明 (Sakata Akira) /晶文社/2013

書籍の紹介一覧 B0139

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私説 ミジンコ大全
坂田 明
晶文社 ( 2013-01-17 )
ISBN: 9784794967640

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2014.05.19

山頭火随筆集/種田山頭火

「茶の花や身にちかく冬が来てゐる」 茶の花/草木塔/種田山頭火

種田山頭火の「山頭火随筆集」を読んでいてこの句に出会いました。この句に添えて山頭火の次の言葉が前に置かれています。

「梅は春にさきがけ、茶の花は冬を知らせる(水仙は冬を象徴する)。
茶の花をじっと観ていると、私は老いを感じる。人生の冬を感じる。私の心身を流れている伝統的日本がうごめくのを感じる。」

この句にハッとさせられたのは、僕がこれまで茶の花をそのような視点で観て感じてこなかったことにあります。

また、山頭火は次に記しています。

「季節のうつりかわりに敏感なのは、植物では草、動物では虫、人間では独り者、旅人、貧乏人である(この点も、私は草や虫みたいな存在だ!)。」 草と虫とそして/愚を守る/種田山頭火

山頭火ならではの感性ですね。

本山頭火随筆集
種田山頭火 (Taneda Santoka) /講談社文芸文庫/2002

書籍の紹介一覧 B0138

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山頭火随筆集 (講談社文芸文庫)
種田 山頭火
講談社 ( 2002-07-10 )
ISBN: 9784061983021

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