カテゴリー「書籍の紹介」の93件の記事

2009.06.25

脳死/立花 隆

臓器移植法改正法案が国会で審議されています。
マスコミでもこのことに関わる記事を目にすることが多いのだけど、そこであれと思ったのは、「脳死は人の死か」という点です。
10年前くらいにそのことは議論されて、脳死は人の死とされているんじゃなかったけ、ということです。
平成9年に制定された「臓器の移植に関する法律」では、第6条第1項で脳死を人の死のひとつとして定義しているものね。
あ、人の死がいくつかあって、脳死がそのひとつというところが混乱の原因なんだろうか。

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臓器の移植に関する法律 (平成9年7月16日法律第104号)
(臓器の摘出)
第6条 医師は、死亡した者が生存中に臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がいないときは、この法律に基づき、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。
2 前項に規定する「脳死したものの身体」とは、その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものの身体をいう。

臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案 (第164回 衆第14号)
(臓器の摘出)
第6条 医師は、次の各号のいずれかに該当する場合には、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。
一 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないと気又は遺族がいないとき。
二 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であって、遺族が当該臓器の摘出について書面により承諾しているとき。

2 前項に規定する「脳死したものの身体」とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたの身体をいう。

青字は改正部分 (改正案は衆議院通過時)
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どの時点からを人の死とするかは、臓器移植のようなケースでない限り余り問題にならないでしょうし、そもそも人は、個々の器官や細胞がある時点で一斉に死んでしまうのではなく、だんだんとその機能を停止していくのだと思います。
また、脳死という状態も、人工呼吸器のような医療機器とそれを利用する技術が進んで、脳が不可逆的に機能を停止した後も、心臓や肺を動かしておくことができるようになってきたのでしょう。

以前、脳死とはいったいどういった状態なんだろう? と思って、脳死関係の本をまとめて呼んでいた時期がありました。
立花 隆の「脳死」もその中の一冊です。
発行日が昭和61年10月25日になっているから、もう20年以上前の話なんですね。

「脳死」では、脳死とはどういう状態なのか、脳死と臓器移植の関係、脳死の判定基準と問題点などが、詳しく書かれています。

この本を読んで、脳死を人の死とすることは納得できました。ただ、脳死であることを判定するのは難しい点もあると思いました。
その時から20年以上も経っているから、判定技術も進歩しているのかな。

20年以上も前に書かれた内容だから、それ以降状況は変わっていると思います。ただ、脳死とはどういったものなのかを知るのには、読んでおいて損のない一冊だと思います。

他人の臓器を移植する医療は、いろいろな意味で過渡的な技術だと思います。ただ、その方法でしか助からない命があることも事実だよね。
本当はiPSなどの技術を利用した再生医療が本命なんだろうけど、再生医療が一般的に利用されるまでには、相当の時間がかかりそうだし。

脳死/立花 隆

本脳死
立花 隆/中央公論社/1986

・ 書籍の紹介一覧 B0093

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立花 隆
中央公論社 ( 1986-10 )
ISBN: 9784120015281
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引用文社説ウオッチング:臓器移植法改正 毎日・朝日「参院で審議尽くせ」
◇読売・日経・産経、A案可決を積極評価
臓器移植法改正4法案をめぐる採決が18日、衆院本会議で行われ、最初に採決された「A案」が可決された。現行法で禁止している15歳未満の子どもの臓器提供に道を開き、大人の場合も含めて家族の承諾があれば提供を可能にする内容で、脳死を人の死とした。
A案可決により、死の定義は変えずに、臓器提供可能な年齢を下げるB、D案や現行法の脳死判定条件を厳格化するC案は採決されなかった。
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19日社説は「死生観を問われる難しい問題だが、これ以上、結論を先送りすることはできない」とする読売と日経、産経が積極評価派、「各案が十分に検討されたとはいえず、議員や国民の間に理解が行き渡っているとは思えない」とした毎日と朝日が慎重審議派と、一応は分類できる。しかし、各社とも本文は一本調子ではなく、衆院議員同様、死生観や幼い子の命の重さに悩んだ跡が見える。
積極評価派は(1)脳死を「人の死」とするのは世界保健機関(WHO)の指針や主要各国の臓器移植法とほぼ同じ(2)現行法が規定する臓器提供の条件が世界の中で突出して厳しいため法律施行約12年で脳死移植は81例にとどまり、毎年数千例の米国、数百例の欧州主要国と比べあまりにも少ない(3)多くの子どもが海外で移植を受けてきたが、外国頼みに国際的な批判も強く、WHOも渡航移植自粛を求める新指針を決めようとしている(4)3年後としていた現行法の見直し時期が過ぎて10年近く、これ以上の放置は許されない--などを理由にA案を評価した。
慎重審議派は(1)本人同意を条件から外しても提供が確実に増えるとは限らない(2)子どもは脳死判定が難しい(3)親の虐待による脳死を見逃さないようにする課題が残る(4)親族に優先的に臓器提供できる規定は公平性の点で問題がある(5)医学の進歩で生まれた新しい死である脳死を法律で人の死と定めることの影響は多方面に及び、まだ国民的合意ができていない--などをあげ、参院でより良い法案に修正することを期待している。
◇多くの地方紙は懐疑的
地方紙にはA案に懐疑的な社説が目立った。インターネットの各紙ホームページで見ると、<参院でこそ徹底論議を>(北海道新聞)、<国民合意へもっと議論を>(東奥日報)、<禍根残さぬ議論不可欠>(秋田魁)、<参院でさらに議論深めよ>(北日本新聞)、<参院はしっかり審議を>(岐阜新聞)、<議論は十分尽くされたか>(山陽新聞)、<まだ議論の余地がある>(中国新聞)、<国民の合意得る努力を>(南日本新聞)、<国民的なコンセンサスを>(琉球新報)などの見出しが並ぶ。
<ともかく一歩踏み出した>(西日本新聞)、<15歳未満に光は見えたが>(神戸新聞)との積極評価派もあるが、逆に<成立を急いでは禍根残す>の新潟日報は、わずか9時間という拙速の委員会審議は現行法を根幹から変えるのに不十分とし「国民合意のないまま、国会の多数決で死の定義を決めることには疑問がある」、「疑問を残したまま法が成立すれば大きな禍根を残す。参院ではゼロから徹底審議すべきだ」と結んでいた。<あまりに乱暴な改正だ>の信濃毎日新聞は「『脳死は人の死か』という命にかかわる重い問いを、あまりに乱暴に決めてしまった。とても納得できない」、「参院は法案の問題点を細部まで詰めて、修正を図るべきだ」と主張した。
地方紙の分布を見る限り、保守性の強い旧来の地域コミュニティーが残る地域の新聞ほどA案への違和感が強いようにも見える。
「海外依存からの脱却」などを前面に、積極推進派の日経など都会派新聞や都市部にターゲットを絞った新聞が「クリアできる」と判断した「国民合意」の一点について、地方紙が疑問を呈していると言えるかもしれない。
18年前に出た岩波新書「医療の倫理」の中で京都大学医学部教授・倫理委員会初代委員長を歴任した星野一正氏は「人の死として社会が容認する死の定義は、国や社会によって異なってしかるべき」としたうえで、医学・医療技術の進歩で日本の社会的死生観、生命観が将来、急速に大きく変化する可能性を指摘。「それゆえ、死の現象などについての法制化は好ましくないと考える」と書いた。
◇死生観、変化せず?
その後、臓器移植法が成立したものの、日本人の死生観はそれほど変化しなかったことを今回の法案採択への反応が示したのかもしれない。グローバル化した世界の中で生命倫理問題をどう考え、対処するか--。参院が大きな責任を負っていることは間違いない。
2009/06/21/毎日新聞

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2009.06.10

資本主義はなぜ自壊したのか/中谷 巌

先日、内橋克人の「もうひとつの日本は可能だ」を紹介しました。そして、この本と平行して読んでいたのが、今回、紹介する中谷 巌の「資本主義はなぜ自壊したのか」です。

この立ち位置が以前は違っていた二人の著者のこの2冊の本に書かれている内容は、似通ったものになっています。
すべてを市場に判断に委ねる市場原理主義は、制御不能になり人間社会を破壊すると。

中谷は、小泉政権が進めた米国の市場原理主義を範にした、構造改革政策のブレイン的存在でした。その彼が、自らの考えの間違いを認め、これからの日本はどうあるべきかを語っています。
内橋のように一貫して人間中心の社会の在り方を提言し、市場原理主義、構造改革の危険性、暴力性を批判してきた人にとっては、中谷の主張の転換は、今更何をてところなんでしょうね。

僕自身も、10年前に言ってくれればよかったのにと思いながら、この本を読んでいました。

ただ、市場原理主義者だった著者の自戒の書ということもあって、経済の混乱、雇用の不安、貧困の増大など、今起こっている問題が理解しやすい面もあります。
ちょっと、観念的な雰囲気を感じないわけではないけどね。

本資本主義はなぜ自壊したのか - 「日本」再生への提言
中谷 巌/集英社/2008

・ 書籍の紹介一覧 B0092

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資本主義はなぜ自壊したのか
中谷 巌
集英社 ( 2008-12-15 )
ISBN: 9784797671841
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2009.05.30

もうひとつの日本は可能だ/内橋克人

随分前から、時々、テレビに出ている内橋克人さんを見ていて、主張というか考えというか、一貫していて、軸足のぶれない人だなあと思っていました。
ただ、これまで経済の分野にほとんど興味を持てなかった僕は、彼の著作は「匠の時代」(それも第1巻のみ sweat01)を読んだだけでした。

経済音痴な僕でも、ここ数年来の経済の変化に、どういうことなんだろうと思って、少しずつ経済関係の本を読んでいます。

今回紹介する「もうひとつの日本は可能だ」は、そんな中で読んだ一冊です。

この本では、市場の決定に任せた経済、市場原理主義をかなり強い口調で批判しています。それは、結果として人間の営みを破壊するものだと。
そして、経済のあり方をマネーではなく、人間を中心に据えたものに変えなければならないと主張します。それは、恐らく内橋の一貫した主張なんだと思います。

そして、この本は、昨年秋から米国発の金融危機に端を発した経済の混乱が起こるはるか前の2003年(単行本)に書かれています。そして、書かれた懸念が今現実のものとなっている・・・

主張の是非は別として、耳を傾ける必要のある主張のひとつですね。

本もうひとつの日本は可能だ
内橋克人/文藝春秋(文春文庫)/2006

書籍の紹介一覧 B0091

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もうひとつの日本は可能だ
内橋 克人
文藝春秋 ( 2006-12 )
ISBN: 9784167717179
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新版 匠の時代〈第1巻〉
内橋 克人
講談社 ( 2003-04 )
ISBN: 9784062737104
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2009.04.16

四畳半神話大系/森見登美彦

以前、このブログで紹介した「夜は短し歩けよ乙女」や「有頂天家族」でも、今回紹介する「四畳半神話大系」でも感じたことですが、森見登美彦の作品は、独特の文体といい、登場人物の怪しさといい、好き嫌いがわかれるんだろうなあと思います。

「四畳半神話大系」は、大学3年生の主人公が1年生の時に、映画サークル「みそぎ」、「弟子求ム」という奇想天外なビラ、ソフトボールサークル「ほんわか」、そして秘密結社<福猫飯店>のひとつを選択することによって、一話の物語が進みます。
登場人物は、どの物語も設定は違うもののほぼ同じで、どの選択をしても主人公の求める「薔薇色のキャンパスライフ」とはほど遠い、奇想天外で切なくも哀れな物語が語られます。

どんな選択をしても過程や結末はそれほど変わらないという深い意味があるのかないのか、それはさておき、主人公の青年に同情してしまいました。

本四畳半神話大系
第一話 四畳半恋ノ邪魔者
第二話 四畳半自虐的代理代理戦争
第三話 四畳半の甘い生活
最終章 八十日間四畳半一周
森見登美彦/角川書店(角川文庫)/2005

書籍の紹介一覧 B0090

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四畳半神話大系
森見 登美彦
角川書店 ( 2008-03-25 )
ISBN: 9784043878017
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2009.03.05

“トウモロコシ”から読む世界経済/江藤隆司

トウモロコシは、僕らにとって、焼いたりして直接食べるスイートコーンのイメージが強いのだけど、日本は年間1,200万トン程度、主に米国から輸入し、その多くは家畜の餌として使われています。

トウモロコシの国際価格は、天候不順などによる一時的な高騰はあったものの、2.5~3ドル/ブッシェルのあたりでした。それが、2006年秋頃から上昇しはじめ、2008年8月には6.99ドル/ブッシェルまで高騰し、今は3.5~4ドル/ブッシェル程度に落ち着いています。
この高騰は、世界的な人口や中国などの経済発展による食肉の需要、トウモロコシのバイオエタノール利用などが増加し、そこに投資や投機の資金が流入したためと言われています。

トウモロコシの国際価格の推移

そんなトウモロコシの価格がどのように形成されるのか興味を持って読んだのが、江藤隆司の「“トウモロコシ”から読む世界経済」です。
筆者は、伊藤忠商事でトウモロコシの輸入に関わっていたため、この本では、トウモロコシの生産から流通、価格形成の仕組などが、リアルにわかりやすく書かれています。
そして、三大穀物(小麦、トウモロコシ、米)のひとつであるトウモロコシの需要と供給、そして価格を見ることにより、世界の経済の動向が読み取れる記します。

この本は、今回の高騰以前(2002年)に書かれた本ですが、トウモロコシの価格形成の仕組を理解するにはいい本だと思いました。

本“トウモロコシ”から読む世界経済
江藤隆司/光文社(光文社新書)/2002

書籍の紹介一覧 B0089

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“トウモロコシ”から読む世界経済
江藤 隆司
光文社 ( 2002-05 )
ISBN: 9784334031411
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2009.02.13

フィッシュストーリー/伊坂幸太郎

売れないロックバンドの最後のレコーディング、一発録りのやり直しなしの録音、曲の間奏でボーカルの亮二が唐突にのんびりと言った言葉。

「なあ、誰か、聴いているのかよ。今、このレコードを聴いている奴、教えてくれよ。届いているのかよ。」 フィッシュストーリー 157-158ページ

結局、この曲の間奏をカットも編集もせず、無音にしただけで発売されたレコード、そして、この曲のもととなった10年前に死んだ作家の文章を起点に、10年、20年、30年後の別々の物語がつながりながら語られます。

伊坂幸太郎は、違った時間をほんの少しだけど重要なことで、つながりをつけるのがうまいなあと思います。

作家の残した「僕は世界に見捨てられたわけじゃない」という言葉、録音から消された「なあ、誰か、聴いているのかよ。」という言葉が、しっかりと受け継がれ素敵な物語になります。

「フィッシュストーリー」は、この「フィッシュストーリー」のほか、「動物園のエンジン」「 サクリファイス」「ポテチ」の3つの物語が収録され、伊坂の洒脱な文章が楽しめる短編集です。

本フィッシュストーリー
・ 動物園のエンジン
・ サクリファイス
・ フィッシュストーリー
・ ポテチ
伊坂幸太郎/新潮社/2007

書籍の紹介一覧 B0088

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フィッシュストーリー
伊坂 幸太郎
新潮社 ( 2007-01-30 )
ISBN: 9784104596027
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2009.01.30

デジタルネイティブ/三村忠史,倉又俊夫,NHK「デジタルネイティブ」取材班

「デジタルネイティブ」は、電車の中で読もうと思ったけれど、鞄の中に1冊も本がないことに気づき、本屋に立ち寄り買った本です。
その時は、藤原智美の「検索バカ」が最初に目に留まり、「デジタルネイティブ」は余り期待せず、ついでに買った感じです。

ところが、「デジタルネイティブ」の方が数段、面白かったです。「検索バカ」は、納得できる点もあるけれど、主張が筆者の独断の域を出ていないんじゃないかと…

「デジタルネイティブ」のプロローグに「ロスト・ジェネレーション」(1970年代前半から10年間に生まれた世代)という否定的な言葉に対する違和感が書かれています。
僕もこの言葉には、以前から釈然としないものを感じていました。僕が接するその世代から受ける感覚と「ロスト・ジェネレーション」から受けるイメージがどうしても一致しないのです。

「デジタルネイティブ」は2008年11月に放送されたNHKスペシャルの取材をもとに本にされたものですが、ロスト・ジェネレーションよりも若い世代を含めた若者達に対する取材を通して、彼等の考え方や行動様式が書かれています。

インターネットというコミュニケーション・ツールを使って、当たり前に世界と繋がっていく彼等。若い世代のすべてがそうとは思えないけれど、確実に増えているのかなあと感じました。

こうした動きに膠着した世界を動かす希望を感じます。「ロスト・ジェネレーション」とラベルを貼ってわかったつもりにならないと落ち着かない大人の脇を、彼等は擦り抜けていくんだろうね。

マスメディアは、どちらかというとインターネットにまつわる事象を否定的に捕らえることが多いと思います。まあ、一般人の僕らが前より簡単に情報のソースにたどり着けたり、逆に発信できたり、インターネットは、マスメディアの既得権益を侵害する面があるから、否定的なスタンスをとるのもわからないわけではないけれど…
そうしたなか、NHKがこうした極めて好意的・肯定的なスタンスの番組や本を作るのは、面白いね。

本デジタルネイティブ - 次代を変える若者たちの肖像
三村忠史,倉又俊夫,NHK「デジタルネイティブ」取材班/日本放送出版協会(生活人新書)/2009

書籍の紹介一覧 B0087

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デジタルネイティブ
三村 忠史, 倉又 俊夫, 「デジタルネイティブ」取材班
日本放送出版協会 ( 2009-01 )
ISBN: 9784140882788
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検索バカ
藤原 智美
朝日新聞出版 ( 2008-10-10 )
ISBN: 9784022732408
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2009.01.14

安全。でも、安心できない…/中谷内一也

僕らの日常生活の中で、他人の手に委ねられていな物はあるんだろうか?僕の生活の中では、ほとんど思いつきません。
ほとんどを外部に依存している生活において、その物の安全性、そして得られる安心感は、とっても重要ですね。

最近、「安全・安心」に対する意識が高くなっていて、「安全・安心」は行政のスローガンにさえなっています。
ただ、「安全」と「安心」を得るためには、違ったアプローチが必要なんじゃないかと、漠然と思っていました。「安全」は科学的に捉えることができるけれど、「安心」は心の問題と・・・

「安全。でも、安心できない…」は、少し逆説的なタイトルですが、そのあたりのことが上手く説明されています。

物を供給する側(リスク管理者)は、「安全・安心」を捉える場合、どうしても「安全」について重点を置く傾向にあると思います。それは当然のことで、ある物のリスクを最小限にしなければ、安全な物として供給できないでしょう。(昨今は、安全性をまったく無視した論外の問題もありますが・・・)

しかし、筆者は安全の担保だけではリスク管理者の対応は不十分だと、それだけでは消費者は安心はしないと論じます。

安全が安心に直接結びつくのは、消費する側もその対象に十分な知識がある場合に限られると分析します。
僕らを取り巻く物や事象に対して、僕らは深い知識を持ち合わせていないことが多いと思います。ひとつひとつを深く勉強していたら、とても生活なんてできないものね。
そうした時、僕らはどうやって安心を得るか?

物を供給する側にリスクを管理する能力があると、僕らが信じられるかどうかが重要なんだそうです。そこには、リスクを管理する側の技術的な能力ばかりでなく、価値観までもが信頼に影響するのだと。

そのとおりなだろうと思うけれど、リスクを管理する側にとっては結構難しいことなんだろうなあ。

「安全」と「安心」を考える時、読んでおいても損のない本だと思いました。

本安全。でも、安心できない… - 信頼をめぐる心理学
中谷内一也/筑摩書房(筑摩新書)/2008

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2008.12.29

脳はなにかと言い訳する/池谷裕二

これまで僕は、脳の神経細胞は、歳とともに減少していくものと思っていました。
歳を追って、物をなかなか覚えない、すぐ忘れる、回転が遅くなる、そんな状況を壊れていく僕の脳細胞のせいにしていました。
でも、池谷裕二の「脳はなにかと言い訳する」を読むと、その僕の詭弁というか、言い訳は通用しないみたいです。

この本の中で、'右半球の視覚野に含まれる神経細胞数'の年齢による推移の研究データが紹介されています。(277頁)それによると、生まれたばかりは3億個近くあった神経細胞が、2~3歳くらいまでの間に急速に1億個程度まで減少し、その後は年齢を重ねても数を維持していくとしています。筆者はこの現象を、とりあえず過剰な数の神経細胞を用意しておき、早い段階でその中から必要な数を確保し維持すると説明しています。

このことが脳全体の神経細胞にも言えることなのかわからないけれど、僕の物覚えの悪さや物忘れの増加は、単なる僕の怠慢が原因なのかな。

「脳はなにかと言い訳する」は、雑誌「VISA」(僕はこの雑誌を読んだことないのでどんな雑誌なのか知りませんが…)に連載された記事をベースに、さらに詳しく解説を加える形で構成されています。
「脳はなにかと記憶する」とか「脳はなにかと疲れを溜める」とか、「脳はなにかと○○する」といった26の項目で章立てし、脳の機能を説明します。
多くの最近の研究データが引用し、それを判りやすく解説しています。

筆者があとがきに「科学的な知見から派生した私の妄想」と記すように、仮説の仮説的な部分も含まれていますが、どこからが「妄想」かが読んでいてわかるので、その点は余り気になりません。
巻末に引用した文献の一覧を掲載していることも好感が持てます。

以前、紹介した彼の著作「進化しすぎた脳」もそうでしたが、脳科学が楽しくなる本です。

ただ、本を出すことに熱心になって、本来の自身の研究が疎かにならないかと、お節介な心配をしてしまうのだけど…

本脳はなにかと言い訳する - 人は幸せになるようにできていた!? -
池谷裕二/祥伝社/2006

書籍の紹介一覧 B0085

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脳はなにかと言い訳する
池谷裕二
祥伝社 ( 2006-09 )
ISBN: 9784396681135
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2008.12.15

新型インフルエンザから家族を守る18の方法/大槻公一

先月の末、タイのスワンナプーム国際空港が反政府勢力に占拠される事件がありました。
タイの政情のことを僕は詳しく知らないので事件について何か言うことはできませんが、そのニュースを聞いて、足止め状態の日本人が約1万人いることに驚きました。

そして、思ったのは、これは占拠により空港機能がストップしたことが原因で日本に帰れなくなってしまったけれど、何処かの国や地域で新型インフルエンザがパンデミックした時、そこに滞在している1万人規模の日本人はどうなるんだろうと・・・
たとえば、1万人規模で日本人が滞在している国や地域で新型インフルエンザがパンデミックした場合、日本国内へのウイルスの侵入や拡大をどのように防ぐのか、その時、それらの国や地域からの日本人の入国を制限するのか、国内で隔離するのか、そんなことを思いました。

「新型インフルエンザから家族を守る18の方法」は、筆者が鳥インフルエンザの研究者ということもあって、新型インフルエンザばかりでなく、鳥インフルエンザのことにも多くのページが割かれています。

ただ、スペイン風邪(H1N1)やアジア風邪(H2N2)、香港風邪(H3N2)の過去の新型インフルエンザは、鳥インフルエンザが変異したと考えられているから、鳥インフルエンザのことを理解しておくことも必要だと思います。

厚生労働省の新型インフルエンザの流行予測では、日本の1億2700万人のうち25%の3200万人が感染し、17万人~64万人が死亡するとされています。
この予測がどの程度正しいものかは別として、被害を最小限に抑えるためには、僕らの行動の自由はかなり制限されるだろうし、ある程度、覚悟をしておかなけえばね。

そういった意味でもこの本は、新型インフルエンザを理解する足がかりとしていいかもしれません。

参考資料:「新型インフルエンザ対策行動計画」の概要について(2005年11月)(PDF 45KB)/厚生労働省

本新型インフルエンザから家族を守る18の方法
大槻公一/青春出版社(青春新書)/2008

・ 書籍の紹介一覧 B0084

引用文空港占拠から1週間、タイ混乱収まらず…経済全体に打撃
タイの空の玄関スワンナプーム国際空港占拠事件は1日で1週間を迎えるが、収拾のめどは立たず、ソムチャイ政権は機能不全を世界に露呈した。
膠着(こうちゃく)状態の中、11月29日深夜から30日未明にかけ、反政府勢力「市民民主化同盟(PAD)」が占拠を続ける首都バンコクの首相府とドンムアン空港で爆弾が爆発、50人が負傷した。政情混乱は基幹産業の観光に加え、経済全体に打撃を与え始めた。
爆発で負傷したのは首相府占拠者ら。一方、政権を支えるタクシン元首相派は30日夕、首相府付近で2万人(警察発表)集会を行い、PADの暴挙を批判。PAD排除まで連日集会を開くとしており、衝突の緊張が高まっている。
邦人約1万人を含む足止め状態の観光客ら約10万人に対し、バンコク南東約150キロの軍用空港を使った代替空輸が11月28日に始まったが、完了に1か月かかる。また、1390万人(2006年実績)にのぼる観光客のうち、約160万人が年末までのタイ旅行をキャンセル。観光関連で100万人が09年に失業するとの予測が出た。
2008/11/30/読売新聞

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新型インフルエンザから家族を守る18の方法
大槻公一
青春出版社 ( 2008-10-02 )
ISBN: 9784413042154
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2008.12.05

Murakami Diary 2009/村上春樹

「Murakami Diary 2009」は、タイトルのとおり、見開き1ページに月曜から日曜日の予定が書き込める、2009年の手帳なんだけれど、手帳として使うにはもったいないような気がします。

ページの合間に村上作品の英訳された一節が、イラストや写真とともに引用されていたり、Vintage Books で作品が最初に出版された日が日付欄に記載されていたりして、村上春樹の読者なら楽しめる構成になっています。

基本的には英国で出版されたダイアリーなんだけど、日本の祝日の代表的なものが紹介されたりしています。

このダイアリー、どんな使われ方をするんだろう。

Murakami Diary 2009

Murakami Diary 2009

Vintage Books のサイトをブラウズしていたら、英国版の村上春樹のサイト "Haruki Murakami"を見つけました。

本Murakami Diary 2009
村上春樹/Random House UK Ltd/2008

・ 書籍の紹介一覧 B0083

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Murakami Diary 2009
Haruki Murakami
Random House UK Ltd ( 2008-07-31 )
ISBN: 9780099523673
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2008.11.18

iPS細胞/八代嘉美

このところ、iPS細胞(人工多能性幹細胞 induced pluripotent stem cell)に関する一般書を何冊か読んでいます。

10年以上前に脳死をめぐる話に興味があって、やはり一般書を数冊読んだのだけど、脳死が問題になるのは臓器移植との関係なんだろうなと思いました。
心臓や呼吸が止まって、瞳孔の反射がなくなり、医者が死亡と診断すれば、僕らは死を受け入れていたのでしょう。
ところが人工呼吸器など技術が発達して、脳の機能が停止し再生しない段階になっても、心臓や肺を器械の力を借り動かし、いくつかの臓器は脳の機能停止後も生かしておけるようになりました。
臓器移植の場合、脳死の状態の新鮮な臓器を使えば、かなり移植の成功率が高いんだろうね。
ただ、脳死の判定の技術的な問題と脳死を人の死とするかという倫理的な問題なんかがあって、当時、社会的な話題になっていたんだと思います。

そんなことが、頭にあったので、去年の11月に京都大学の山中新弥教授が、iPS細胞を開発したというニュースを聞いた時、凄い技術が開発されたもんだと感心しました。

細胞の特化した機能をリセットし多能性を持たせる技術として、ES細胞の技術が先行しているけれど、卵細胞を使うなど倫理上、クリアしなければならない問題がありました。
でも、iPS細胞の場合は、体細胞そのものに多能性を持たせるわけで、倫理上の問題は起こりにくいし、本人の細胞だから拒絶反応も起きない、そういった意味で凄い技術だなあと。

この本「iPS細胞」は、ES細胞とiPS細胞の仕組や再生医療への活用、その展望と問題点などが平易にわかりやすく解説されています。
筆者は、若くまだ駆け出しの研究者だそうですが、そのことがかえってiPS細胞をめぐる情勢を全般的に捉え説明することができ、僕など一般の読者には理解しやすい本になっているのかもしれません。

以前、紹介した田中幹人の「iPS細胞 ヒトはどこまで再生できるか?」と同じように、iPS細胞や再生医療の本を読もうとする時の最初の1冊にいい本だと思います。

本iPS細胞 世紀の発見が医療を変える
八代嘉美/平凡社(平凡社新書)/2008

書籍の紹介一覧 B0082

・ MediaMarker

iPS細胞 世紀の発見が医療を変える
八代 嘉美
平凡社 ( 2008-07-15 )
ISBN: 9784582854312
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2008.11.13

ジャズ・アネクドーツ/ビル・クロウ

アネクドーツ(anecdotes)とは「逸話」とか「こぼれ話」のことだそうです。
この本には1950年代から'60年代を中心に活動したジャズ・ベーシストのビル・クロウが、仲間のミュージシャンから聞いたそして流布されているジャズの逸話が、これでもかというくらいの数、紹介されています。

話は、スイング・ジャズやバップの時代のものが多く、ビバップ以降のジャズを好んで聴いている僕には、名前を知らなかったり知っていてもレコードを熱心に聴いたことのないミュージシャンの逸話も数多く紹介されます。

それでも、面白いんだよね。

音楽は、音楽そのもので完結していのは確かなんだろうけれど、それを作り出したミュージシャンの時に奇異な逸話が、音楽に奥行きを持たせることも確かなんだと思います。

「ジャズ・アネクドーツ」とクロウの自伝的な著作「さよならバードランド」、このふたつは村上春樹が訳しており、両方のあとがきに村上は、これらを読んでジャズが聴きたくなったらうれしいというようなことを書いています。

その点では、少なくとも僕に対しては成功しています。

「ジャズ・アネクドーツ」にしろ「さようならバードランド」にしろ、割とボリュームのある本です。でも、ひとつひとつの話は短いから、少しずつ読み進めるのがいいのかもしれません。

本ジャズ・アネクドーツ (JAZZ ANECDOTES)
Bill Crow/村上春樹(訳)/新潮社(新潮文庫)/2005

・ 書籍の紹介一覧 B0081

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ジャズ・アネクドーツ
ビル クロウ
新潮社 ( 2005-06 )
ISBN: 9784102181126
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2008.10.25

デジタルカメラ 「プロ」が教える写真術/長谷川裕行

僕は、フィルムカメラ、それも白黒写真は、自分でフィルム現像や引伸ばしをしていたこともあったので、ある程度の知識は持っていると思います。

ただ、最近は、ほとんど、デジタルカメラで撮ったものをPCで処理して、印刷したりウェブに掲載したりしています。

カメラ自体は、概観や操作性などフィルムカメラもデジタルカメラもそれほど変わらないけれど、撮影した後の処理は違っていて、戸惑うことやわからないことが結構あります。

それで、一度、ざっとでも知識を仕入れておこうと思って、読んだのが「デジタルカメラ 「プロ」が教える写真術」です。

この本では、デジタル画像やレンズ、露出の基礎知識、画像補正やRAW現像の方法などが解説されています。
専門的な記述もあるけれど、デジタル一眼レフカメラを少し使いこなしてみようと思ったときの最初の一冊としていいかもしれません。

また、本書と連動して、ブルーバックスのサイトにより詳しい情報がPDFで提供されています。

本デジタルカメラ 「プロ」が教える写真術 - 機材選びから撮影、画像補正まで -
長谷川裕行/講談社(ブルーバックス)/2008

書籍の紹介一覧 B0080

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2008.10.11

地球と一緒に頭も冷やせ!/ビョルン・ロンボルグ

ビョルン・ロンボルグの本を読んだのは、2003年に出版された「環境危機をあおってはいけない - 地球環境のホントの実態 -」に続いて2冊目です。

ロンボルグは主張は、以前紹介したレスター・ブラウンの「フード・セキュリティー」や「プランB 3.0」と気候変動の対策について、相対するものです。

ロンボルグも今後の地球の気温は上昇するものして捉えています。
ただ、その対策として二酸化炭素の削減に莫大な資金が投入されることに疑問を呈しています。
CO2削減の費用対効果から、その資金を貧困や紛争の解決など、別のことに使えば、CO2を削減することよりもはるかに多くの人の命が救えるのではないかと。

確かにCO2の削減することが、どの程度、気候の変動に効果があるのか、費用対効果の面からの議論は余り見かけません。

それと、ロンボルグの本は提示した数字や論点について、それを論ずる根拠資料の一覧が巻末にまとめられていて、読者が再考してみるきっかけを与えてくれています。

そういった意味でも、気候変動や温暖化を様々な観点から考えてみるのにいい一冊だと思います。

本地球と一緒に頭も冷やせ!(COOL IT) - 温暖化問題を問い直す(THE SKEPTICAL ENVIROMENTALIST'S GUIDE TO GLOBAL WARNING) -
Bjorn Lomborg/山形浩生(訳)/ソフトバンク クリエイティブ/2008

・ 書籍の紹介一覧 B0079

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地球と一緒に頭も冷やせ!
ビョルン・ロンボルグ
ソフトバンククリエイティブ ( 2008-06-28 )
ISBN: 9784797347234
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2008.09.23

20世紀少年・21世紀少年/浦沢直樹

映画「20世紀少年」のテレビの宣伝を見て、心が動かされた50歳前後のおじさんが結構いたんじゃないかな。
少なくとも、僕がその一人です。

見てと書いたけれど、正確には聞いてかな。
そう、テレビに宣伝に使われていたT.REXの'20th Century Boy'を聞いて・・・

僕はビックコミックスピリッツは読んでいなかったので、「20世紀少年」をこれまで知りませんでした。
でも、やっぱり気になるので、単行本を少しずつ読み始めました。

「20世紀少年」は、1973年、主人公のケンヂが昼の中学校の放送室を占拠し、ポール・モーリアの「エーゲ海の真珠」からT.レックスの「20センチュリー・ボーイ」にEPレコードをかけ替える場面から始まります。
これって、僕らの世代にはわかりすぎるくらいわかると思いませんか?特に一流どころではなくて、T.レックスてところが sign01
中学や高校の頃の昼の給食や弁当の時間は、決まってポール・モーリアだったものね。今だに、ポール・モーリアの曲を耳にすると、当時の昼の風景を思い出してしまいます。

「20世紀少年」のいたるところに、そうだったね、と思わせる風景や事象が描かれています。
それで、作者の浦澤さんのプロフィールをウィキペディアで調べてみると、生まれが1960年1月2日 sign02
やれやれ、僕と同学年だよ。

そんなわけで、「20世紀少年」を読み進めてみようと思います。


20世紀少年/浦沢直樹

・ 追記(2008.09.24)

遅ればせながら映画「20世紀少年」を観てきました。
映画はわりと原作に近い作りですが、2時間強の時間にまとめているため、省略されている箇所があり、原作を読んでいないとストーリーを把握しづらいかもしれません。

ストーリー自体は、原作に「本格科学冒険漫画」とあるように、荒唐無稽なものです。
でも、1960年代後半から'70年代前半に少年時代を過ごした世代には、別の面白さがあると思います。

最後のエンドロールのバックに'20th Century Boy'が流れます。まあ、この曲はこの作品全体のトーンを決めているから、そうだなあと思って聴いていました。
でも、途中から懐かしさを感じる詞と曲調のフォークソングに変わります。
岡林信康?高田 渡?加川 良?友部正人?遠藤賢司 sign02 「20世紀少年」の主人公も遠藤ケンヂ sign03 原作を読んでいる時はまったく気づかなかった。
あの歌を歌っているのは誰なんだろう sign02

-----
20世紀少年
01 ”ともだち” (2000) 01-10
02 ”預言者” (2000) 01-11
03 ”ギターを持った英雄” (2000) 01-11
04 ”愛と平和” (2001) 01-11
05 ”さいかい” (2001) 01-11
06 ”最後の希望” (2001) 01-11
07 ”真実” (2001) 01-11
08 ”ケンヂの歌” (2001) 01-11
09 ”ラビット・ナボコフ” (2002) 01-11
10 ”顔のない少年” (2002) 01-11
11 ”成分表示” (2003) 01-12
12 ”ともだちの顔” (2003) 01-12
13 ”終わりの始まり” (2003) 01-12
14 ”少年と夢” (2003) 01-12
15 ”ばんぱくばんざい” (2004) 01-13
16 ”鏡のむこう” (2004) 01-11
17 ”クロスカウンター” (2004) 01-11
18 ”みんなの歌” (2005) 01-11
19 ”帰ってきた男” (2005) 01-11
20 ”人類の勝負” (2005) 01-11
21 ”宇宙人現る” (2006) 01-11
22 ”正義の始まり” (2007) 01-13
21世紀少年
上 ””ともだちの死”” (2007) 01-08
下 ”20世紀少年” (2007) 01-08

本20世紀少年・21世紀少年 - 本格科学冒険漫画 -
浦沢直樹/小学館(ビックコミックス)/2000(第1集)~2007(第22集) 2007(上、下)

・ 書籍の紹介一覧 B0078

最終更新日:2009.01.31

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2008.08.26

プランB 3.0/レスター・ブラウン

少し前の話になるけれど、独立行政法人農業環境技術研究所が6月5日に開催したシンポジウム「穀物の争奪戦が食卓を襲う - 世界の穀物と環境問題 -」に行ってきました。

第31回 農業環境シンポジウムのパンフレット

昨年の「食料 vs エネルギー - 穀物の争奪戦が始まった -」に引き続いての開催です。
昨年は、食料や家畜の飼料として利用されているトウモロコシが、米国において燃料用エタノールとして使われ、食料との競合がテーマでした。
今年は、視点が広がって、世界的な人口の増加、中国やインドなどの経済発展による穀物の需要の増大、そして、気候変動による生産環境の悪化など、これからの穀物の需給の問題を取り上げていました。

当日のシンポジウムの様子は、農業環境技術研究所のサイトにテキストと映像がアップロードされています。
参照:第31回 農業環境シンポジウム 穀物の争奪戦が食卓を襲う - 世界の穀物と環境問題 - /独立行政法人農業環境技術研究所

テーマが今日的であることや、今年もレスター・ブラウンが、基調講演、シンポジウムのパネラーを行ったので、会場の大手町サンケイプラザホールは、満席の盛況でした。

ブラウンの講演は、彼の新著「プランB 3.0」で書かれた内容によるものでした。
といっても、この本が出たばかりで、読んでいなかったけれど…

それで、早速、購入して読んみました。

まあ、内容は以前紹介した「フード・セキュリティー」と変わらないのだけど、気候変動を抑えるために2050年までにという悠長なことを言っていないで、'20年までに二酸化炭素の正味排出量を80%削減しなければならないと主張しています。

そのために、「ブランB」を実行し、再生産可能エネルギーによるエコエコノミーを実現しろと。

本では、石油、穀物、気温、水などをめぐり世界各地で起きている、そして起きつつある問題が紹介されます。
それを読むと相当深刻な状況だと感じるのだけれど、本当かなと思う点もいくつかあります。

たとえば、

もし、グリーンランドの氷床が溶けるような事態になれば、海面は7メートル上昇するだろう。南極西部の氷床が溶けると、海面は5メートル上昇する可能性がある。
しかし、これら氷床は、部分的な融解でも、海面上昇に大きく影響する。トップクラスの科学者たちは、今世紀中に海面が18~59センチ上昇するというIPCCの予測はすでに古く、今世紀中に2メートル上昇することも十分に考えられるという。(70頁)

IPCCの第4次評価報告の最悪のシナリオA1F1の今世紀末の海面上昇の最大値が0.59m、トップクラスの科学者は2m、ブラウンは5mだったり7mだったり・・・
いろいろと調べてみなくちゃいけないね。
参考エントリー:「IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書 概要及びよくある質問と回答」は面白いよ(2008.01.13)

本プランB3.0 (PLAN B 3.0) - 人類文明を救うために(Mobillizing to Save Civilization) -
Lester R. Brown/織田創樹(監訳)/ワールドウォッチジャパン/2008

書籍の紹介一覧 B0077

・ MediaMarker

プランB3.0 人類文明を救うために
レスター ブラウン, LESTER R.BROWN
ワールドウォッチジャパン ( 2008-06-05 )
ISBN: 9784948754317
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2008.08.12

iPS細胞 ヒトはどこまで再生できるか?/田中幹人

去年の11月に京都大学の山中新弥教授が、iPS細胞(人工多能性幹細胞 induced pluripotent stem cell)を開発したというニュースを聞いた時、凄い技術が開発されたものだと思いました。

ES細胞も体細胞の核から、多機能性を持った細胞を作り出す技術だけど、対象となる動物の卵を利用して多機能性を持たせているから、倫理的な抵抗感はあるものね。

iPS細胞は、特定の機能に特化した細胞を、3つ(発表時点では4つ)のタンパク質をDNAに導入することにより、特化する前にリセットし多機能性を持たせるものだから、倫理上の問題は少ないのかもしれない。

それにしても、ES細胞にしてもいiPS細胞にしても、多機能から単機能と一方通行だと考えられていた細胞の分化が、リセット可能だとしたところが、恐ろしくもあるけれど。

「iPS細胞 ヒトはどこまで再生できるか?」は、ES細胞やiPS細胞とはどういうものか、その可能性と問題点、これら技術を利用した再生医療などを、素人の僕にもわかるように書かれた本で、iPS細胞や再生医療の本を読もうとする時の最初の1冊にいい本だと思います。

まあ、iPS細胞を利用した再生医療が一般的に行われるまでには、越えなければならないハードルが多くて、相当の時間がかかりそうだということだけど。

それと、この本に紹介されていたエピジェネティックスの考え方が面白かった。
一卵性双生児は、全く同じDNAを持っているのだけれど、成長の過程でお互いに違った個性を持つようになるけど、このことをエピジェネティックスという考え方で、ある程度説明ができるのではないかとういうことです。

どの細胞にも同じDNAがフルセットで入っているのだけど、分化の過程で、その細胞の仕事以外の情報は読めなくなる。この分化の過程のDNA情報の封印のちょっとした違いが個性として表現されるのではという考えを、エピジェネティックスと言うそうです。
その逆がジェネティックス、ES細胞やiPS細胞に関わる技術はこの封印を解き、多機能性を持たせること。
面白いね。

本iPS細胞 ヒトはどこまで再生できるか?
田中幹人/日本実業出版社/2008

書籍の紹介一覧 B0076・ MediaMarker

iPS細胞 ヒトはどこまで再生できるか?
田中 幹人
日本実業出版社 ( 2008-05-22 )
ISBN: 9784534043849
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2008.06.19

鳥たちの旅/樋口広芳

鳥インフルエンザウイルスの媒介者として、渡り鳥が有力視されています。
昨年、宮崎・岡山でニワトリ、今年、秋田・北海道でオオハクチョウに感染が確認された鳥インフルエンザH5N1亜型ウイルスを日本に持ち込んだのは、渡り鳥ではないかという説です。

それで、渡り鳥について1冊と思って読んだのが「鳥たちの旅」です。
なお、著者の樋口広芳さんは、オオハクチョウのH5N1感染の経路を調査するため設置された環境省の「感染経路等調査ワーキンググループ」の委員です。
・ 関連エントリー:ハクチョウが感染したH5N1と、今年、韓国で発生しているH5N1がほぼ一致(追記)(2008.05.22)

この本を読んで思ったのは、渡りの経路て意外とわかっていないんだなてこと。
渡りの経路がある程度わかるようになったのは、この本の主題の衛星による鳥の追跡ができるようなってからのようです。
鳥に付ける発信機が小型化され、バッテリーの改良により寿命が長くなって、ハクチョウやハチクマなど発信機を付けられても、まだ、研究は、渡りに影響しない比較的大型の鳥に限られています。

それでも、随分色々なことがわかってきているんですね。

オオハクチョウは東日本からシベリアの繁殖地に渡るまでの間に、何回か湖沼で一休みするということや、集団で渡っているイメージが強かったのですが、家族単位の小集団で渡るということなど、新鮮に感じました。

そして、越冬地や繁殖地の環境ばかりではなく、中継地の環境も、渡り鳥の生息に大きく関係しているとのことです。

まだまだ、わからないことが多いみたいだけれど、なかなか面白い本です。

本鳥たちの旅 - 渡り鳥の衛星追跡 -
樋口広芳 (Higuchi Hiroyoshi) /日本放送協会(NHKブックス)/2005

・ 書籍の紹介一覧 B0075

・ MediaMarker

鳥たちの旅―渡り鳥の衛星追跡
樋口 広芳
日本放送出版協会 ( 2005-09 )
ISBN: 9784140910382
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2008.05.28

オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎

「アヒルと鴨のコインロッカー」に始まり「ラッシュライフ」「チルドレン」「陽気なギャングが地球を回す」「重力ピエロ」「死神の精度」「陽気なギャングの日常と襲撃」そして「オーデュボンの祈り」と、この半年ほどの間に、伊坂幸太郎の作品を断続的に読んでいます。

伊坂作品の時間と空間の絡め方の上手さ、そして、語り口の新鮮な軽妙さに惹かれて、僕は何作か読むことになったんだと思います。

今回紹介する「オーデュボンの祈り」は、彼の最初の頃の作品です。読んでいて、ふと思ったというか感じたというか、もう30年近く前に「群像」に書き下ろされた村上春樹の「1973年のピンボール」を読んだ時のことが頭に浮かびました。

「1973年のピンボール」に感じた浮遊感に似たものを「オーデュボンの祈り」にも感じました。

「オーデュボンの祈り」は、世の中から隔離された島に古くから佇む喋るカカシの優午を軸に話が進みます。
ミステリー小説には違いないんだろうけれど、もう少し深いところで読者に何かを感じさせる作品です。

今まで読んだ伊坂作品の中では一番好きです。
彼の多くの作品は娯楽性の高いものに仕立てられているけれど、彼が40歳、50歳になった時にどんな世界を提示するのか、ちょっぴり興味があります。

本オーデュボンの祈り
伊坂幸太郎/新潮社(新潮文庫)/2000

書籍の紹介一覧 B0074

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オーデュボンの祈り
伊坂 幸太郎
新潮社 ( 2003-11 )
ISBN: 9784101250212
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2008.05.14

有頂天家族/森見登美彦

「有頂天家族」を読み始めて、そう、最初の20ページくらいは、その文体や設定に体が馴染まず、物語に入り込めませんでした。以前、このブログでも紹介した「夜は短し歩けよ乙女」を読んだ時は、冒頭から物語に入り込めたので感じなかったけれど、森見登美彦の作品に抵抗感を示す人は、きっとこの奇妙な設定や語り口に馴染めないんだろうなと思います。

「有頂天家族」は、鍋にされあっけなくこの世を去った偉大なる父を持つものの、それぞれに欠点を持つ狸4兄弟とその気丈な母の話です。

狸、天狗そして人間が絡み合いながら物語が進み、段々と父の死の真相がわかっていきます。そして、自分達家族の汚名を挽回するために兄弟が協力する姿に、僕は引き込まれていきました。

まあ、「有頂天家族」もハチャメチャな話ですが、どこかのほほんと暖かくなるのが森見の小説の魅力かな。

それと、「夜は短し歩けよ乙女」と同じように京都の街が素敵に描かれています。下手なガイドブックよりもずっと京都に行きたくなる本でもあります。

本有頂天家族
森見登美彦/幻冬舎/2007

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有頂天家族
森見 登美彦
幻冬舎 ( 2007-09-25 )
ISBN: 9784344013841
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2008.03.26

クール・ジャズ・コレクション/デアゴスティーニ

デアゴスティーニから隔週で「COOL JAZZ COLLECTION」が発売されています。
これは、1950年代以降のビバップ・ジャズを中心に毎号一人のジャズマンをとりあげ、プロフィールと代表作のCDを添付した雑誌です。

僕は、余りこの手のベスト版は買わないほうだけど、一人ずつ順番に代表作を聴いてみるのも悪くないなと思って、購入しました。

第1号はマイルス・デイビスです。
CDには次の5曲が収録されています。( )はその曲が収められたアルバム名。

Someday My Prince Will Come(Someday My Prince Will Come)
My Funny Valentine(Cookin')
On Green Dolphin Street(1958 Miles)
'Round Midnight(And The Modern Jazz Giants)
Generique(Ascenseur pour L'echafaud)

第2号はビル・エヴァンズです。
やはり、5曲が収録されています。

Waltz for Debby(Waltz for Debby)
Autumn Leaves(Portrait in Jazz)
Stella by Starlight(Simple Matter of Conviction)
Grandfather's Waltz(Getz & Evans)
Danny Boy(Empathy)

そして、第3号はジョン・コルトレーン。
同じく5曲が収録されています。

Say It(Ballads)
Good Bait(Soultrane)
Like Someone in Love(Lush Life)
Come Rain or Come Shine(The Last Trane)
Violets for Youre Furs(Coltrane)

いずれも有名な曲でジャズ・ファンには馴染みの深い演奏ばかりだけど、改めて並べて聴いてみるとやっぱり凄いですね。

COOL JAZZ COLLECTION 1

本COOL JAZZ COLLECTION
デアゴスティーニ/2008

書籍の紹介一覧 B0072

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2008.02.28

ラッシュライフ/伊坂幸太郎

僕が、初めて読んだ伊坂幸太郎の作品は「アヒルと鴨のコインロッカー」です。この本、ストリーの展開が面白くって、伊坂作品をもう一冊読もうと思いました。

そして選んだのが「ラッシュライフ」、ジョン・コルトレーンが演奏する曲と同名のタイトルに魅かれました。

物語は、金ですべての物を手に入れてきた初老の画商の戸田と本意ではないが彼に従わざるを得ない新進画家の志奈子、己の美学に基づき盗みを働く泥棒の黒澤、新興宗教の教祖に心魅かれる絵の上手な青年河原崎、お互いの配偶者の殺害計画を進める精神科医京子とプロサッカー選手青山、不本意にもリストラにあい就職活動中の中年豊田と老いた野良犬、を軸にその他の人物がからみ、別々の話が、数日の時間、仙台という空間で進みます。
2つの物語がひとつの話に収斂していく小説は割りとあるけれど、5つの物語が重なり合うとのは珍しいんじゃないかな。

ひとつの物語で語られる話題、アイテム、背景の風景が、別の物語で登場し、ハッとさせられます。

なかなか新鮮なストーリー設定で面白い作品です。

「ラッシュライフ」は、やはりコルトレーンの曲として、冒頭の戸田と志奈子との会話で登場します。また、キース・ジャレットやボブ・ディラン、ビートルズと1971年生まれの伊坂にとっては過去の音楽が物語の中に織り込まれています。でも、背景によく溶け込んでいて、いい感じです。

本ラッシュライフ
伊坂幸太郎/新潮社(新潮文庫)/2005

・ 書籍の紹介一覧 B0071

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ラッシュライフ
伊坂 幸太郎
新潮社 ( 2005-04 )
ISBN: 9784101250229
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Lush Life
John Coltrane
Universal Japan ( 2006-03-21 )
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2008.02.14

失敗は予測できる/中尾政之

不祥事やら事故やらがよく報じられるけれど、多くの場合、遠くで起こったことであったり別の分野のことであったりするので、非難的、評論的な立場をとっても、そのことを自分や自分の周りにも起こりうることと、なかなか関連付けて考えることは難しいですね。ましてや、そこから得られたものを教訓として、自らの仕事や生活に活かすとなると、さらに行われないじゃないでしょうか。

きっと、同じような不祥事やら事故が繰り返すのは、そういった不祥事や事故を他人事として考えているからと思ったりもします。

「失敗は予測できる」では、失敗の事例を数多く集めると、いくつかのパターンに分類できるとします。まったく違った場面で起こった失敗を、自分の周りでも起こりうると関連付ける想像力が必要と説きます。

そして、失敗が何故起きたか、その原因を探る時に、「いかに作るか(how to make)」の段階ばかりではなく、「何をすべきか(what to do)」まで遡って考えなければならないと記します。
これは、何のために行った行為の失敗なのか、手段ではなく目的まで遡ることだから、結果として大きな方針転換になるのかもしれません。
こういうことは、組織でも個人でもなかなかできないものだよね。

「他山の石」とか「人のふり見て我がふり直せ」とか昔から言われていることだけど、そのことを改めて考えさせられました。

本失敗は予測できる
中尾政之/光文社(光文社新書)/2007

書籍の紹介一覧 B0070

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失敗は予測できる
中尾 政之
光文社 ( 2007-08 )
ISBN: 9784334034146
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2008.01.30

死因不明社会/海堂 尊

「チーム・バチスタの栄光」(宝島社文庫 上下巻)が、僕の読んだ海堂 尊の最初の作品です。「チーム・バチスタの栄光」は、優秀な心臓外科医とそのスタッフがバチスタという特殊な手術を立て続けに失敗する。その原因を、学生以来手術をしたことのないパッとしない神経内科医と、変人ではみ出した厚生労働省の官僚が、解き明かすという医療ミステリーです。
その謎解きの決め手となったのが、死亡時画像病理診断(Autopsy imaging)です。

「死因不明社会」は、「チーム・バチスタの栄光」のキーとなったAiの必要性をわかりやすく論じた本です。

僕らは、誰でも何時かは何らかの原因で死にます。死亡の原因が死因で、死因がわからないものを異常死と言うそうです。そして、全死亡者数の15%が異常死と筆者は記します。
外から観察して死因がわからない場合、解剖をして死因を特定しようとするのだけれど、日本の解剖実施率は全死亡者の2%。これでは、死因が不明な事象が増え、医学の進歩に寄与せず、犯罪の特定も難しくなると問題提起します。

死因を特定する有力な方法の解剖は、労力や費用、制度など、現在の医療をとりまく様々な要因で行われなくなってきているそうです。

その問題を解決し死因不明社会を無くすために有効なのは、CTやMRIを利用した死亡時画像病理診断の導入だと筆者の持論を展開します。

現在、医学界で死因不明がどの程度問題視され、その解決策としての死亡時画像病理診断がどの程度議論されているのか、その世界に疎い僕にはわかりません。
でも、今まで生きている人間に対する医療への意識はあるにはあったけれど、死んだ後の医療にほとんど意識がなかった僕には、なかなか興味深い内容の本です。

また、「チーム・バチスタの栄光」で登場した厚生労働省の変人官僚 白鳥圭輔と記者の別宮葉子のコミカルな対話もはさんだりして、読みやすい構成になっています。

本死因不明社会 - Aiが拓く新しい医療 -
海堂 尊/講談社(ブルーバックス)/2007

書籍の紹介一覧 B0069

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死因不明社会
海堂 尊
講談社 ( 2007-11-21 )
ISBN: 9784062575782
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

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2008.01.15

東京漂流/藤原新也

僕は、藤原新也を1981年に創刊された写真週刊誌 FOCUS で初めて知りました。当時、写真週刊誌という形態は珍しく、その珍しさも手伝って創刊号を購入しました。そして、創刊号に彼の 東京漂流 の第1回が掲載されました。

東京漂流 は、藤原の力強いけれど重く暗く硬質な写真と文章で、東京で起こっている事象を綴った連載でした。それは人の心の深い澱みのようです。
しかし、この連載は6回で突然終了してしまいました。
当時、連載中止の理由について、いくつかの憶測がありました。でも、今思うに FOCUS は、たとえば駅の売店で買い、通勤・通学の途中に読むような大衆紙を目指していたのではないか。そのような雑誌の読者は、自分自身の心の影をえぐられるような記事を求めるのだろうか。とりあえず自分は安全な場所においておけるゴシップ記事を求めるんじゃないかな。そんなふうに思います。

今回、紹介する「東京漂流」は、FOCUS の連載を含め、1980年代の東京を描いたものです。
彼はあとがきに「東京漂流」を書いた理由を次のように記しています。

日本人はかつての「いつくしみ」の血は、「憎しみ」の血へと変質したのではないか。街行く誰もが、小さな憎悪の矢をつがえており、時に、それは選ばれたいけにへに向かっていっせいに放たれ、体のよい血祭りをあげた。 何が、そんなに憎いの? 私は、あの「いつくしみ」から「憎しみ」に至る日本の二〇年とは何だったのか、はっきり見極めたいと思った。(P444-445)

そこに描かれる'80年代の東京は、きっと現在だって変わらないんだろうし、開高 健が「ずばり東京」で描く'60年代とも変わらないんじゃないかな。

だからこそ、藤原の

「いつくしみ」は人を変えるが、「憎しみ」は変えない。(P445)

というメッセージに、僕は希望を感じるのだけど。

本東京漂流
藤原新也/情報センター/1983

・ 書籍の紹介一覧 B0068

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藤原 新也
情報センター出版局 ( 1983-01 )
ISBN: 9784795801721
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

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2008.01.01

ウェブ時代をゆく/梅田望夫

以前、紹介した「ウェブ進化論」にしろ、この「ウェブ時代をゆく」にしろ、梅田望夫さんの本、いいですね。
楽観的なスタンスで誰にもわからない未来を見据え、今日を生きる、彼の姿勢は、すがすがしくも感じます。

梅田さんと僕はほぼ同世代、あと数年で50歳に手が届く年齢です。でも、既存の組織、仕組みの中で毎日を生活をしている僕にとって、たとえば次のような言葉にドッキとするとともに手厳しさを感じます。

何でも政治や社会の構造のせいにして結論づける「格差社会」や「下流社会」をめぐる現代日本の言論の風潮は、裏を返せば一人ひとりの可能性をおそろしく限定して見ているのも同然で、それはかえって失礼だと私はいつも思うのである。 (P235-236)

恐らくここ暫くは、過去半世紀の社会(自然環境も含めて)の仕組みから次の新たな仕組みへの移行期間なんだと思います。
その中で、僕は何をすればいいのか?その答えを見つけるのは大変そうだけど、楽観的に前に進むってのもいいかもね。

本ウェブ時代をゆく -いかに働き、いかに学ぶか-
梅田望夫/筑摩書房(ちくま新書)/2007

書籍の紹介一覧 B0067

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ウェブ時代をゆく
梅田 望夫
筑摩書房 ( 2007-11-06 )
ISBN: 9784480063878
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

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2007.12.24

ずばり東京/開高 健

最近、テレビや映画、雑誌などで昭和、それも30年代が取り上げられることが多いように思います。
映画「always 続・三丁目の夕日」のテレビ・コマーシャルで、151系特急こだま号がチラッと映っていました。50歳を少し前にした僕は、こうした映像に弱いんだよね。

こんな懐かしさとは別に開高 健の「ずばり東京」を読みました。
「ずばり東京」は、東京オリンピックが始まる前の東京の多様な側面を切り取ったルポルタージュです。
兎に角、これでもかというくらい、つながりの無い場所を取材しています。
まさに「混沌」、当たり前のことだけど昭和30年代の東京が、現在として描かれています。

「ずばり東京」を読んでいると、僕が昭和30年代に感じている柔らかな懐かしさは何なんだろうと思います。
なんともやりきれない現在、でも、昭和30年代も同じじゃなかったか、いや、今のほうが少しはましじゃないかと思ったりします。

開高の身体性を持った知性が描き出した混沌とした東京です。

本ずばり東京 - 開高健ルポルタージュ選集 -
開高 健/光文社(光文社文庫)/2007

書籍の紹介一覧 B0066

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ずばり東京
開高 健
光文社 ( 2007-09-06 )
ISBN: 9784334743093


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2007.12.11

人類進化の700万年/三井 誠

チンパンジーがヒトより、瞬間的に表示されたものに対する記憶力は優れているという、京都大学霊長類研究所の研究結果は面白いですね。
人類がチンパンジーと1,000万年位前に枝分かれし、両者とも現在まで絶滅せずに生き残っているわけだけど、チンパンジーは能力を維持しヒトは退化させた、その原因は何なんだろう?
研究をした京大霊長類研の松沢所長は、「ヒトとチンパンジーの共通の祖先が持っていた記憶能力を、人は進化の過程で言語や複雑な思考を獲得するのと引き換えに失ったのではないか」と言っているけれど、そのあたりにヒントがありそうですね。

「人類進化の700万年」は、チンパンジーから枝分かれして現生人類(ホモ・サピエンス)に至るまでの人類が歩んだ経過が書かれた本です。
生物の歴史は38億年とも40億年とも言われ、それに比べ人類が歩んだ700万年は余りにも短い時間だけど、その短期間にそれまでの生物が持ち得なかった特長を持った人類が出現したことに驚きを覚えます。その間に何が起こったのだろう?

700万年前にアフリカで誕生した人類が、いくつも枝分かれして、その間に絶滅してしまった人類も結構あるんですね。
そして、運良く?上手く環境に適応して生き残ることができた現生人類は、その過程で、新たな能力を手に入れ不必要になった能力はなくなってしまった、そのひとつが、冒頭のチンパンジーにはできてヒトには難しい瞬間的な記憶能力かもしれません。

なかなかロマンティックな本です。

本人類進化の700万年 -書き換えられる「ヒトの起源」-
三井 誠/講談社(講談社現代新書)/2005

書籍の紹介一覧 B0065

引用文チンパンジー 優れた記憶力
京都大学霊長類研究所の松沢哲郎所長のグループは、5歳半のチンパンジーの子ども3匹と、大学生の男女9人の記憶力を比較しました。実験では、事前に小さな数字から大きな数字への順序を覚えさせたチンパンジーと大学生をモニター画面の前に座らせ、5つの数字をばらばらに3段階で瞬間的に表示して数字を小さい方から順番に答えさせていきました。大学生は、それぞれの段階で50回ずつ実験を行った結果、表示時間が短くなるにつれて正答率が80%程度から40%程度に下がっていきましたが、チンパンジーは、500回ずつ行った結果、80%前後の高い正答率を維持したということです。松沢所長は、「ヒトとチンパンジーの共通の祖先が持っていた記憶能力を、人は進化の過程で言語や複雑な思考を獲得するのと引き換えに失ったのではないか」と話しています。
2007/12/04/NHK

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2007.12.04

ワンピース/尾田栄一郎

尾田栄一郎のワンピースが読みたくて、週刊少年ジャンプを買っています。また、日曜日の朝に放映しているアニメ版もビデオに録画して後から見ています。
おまけに最近は、連載が10年と長くなってきたので、コミックを1巻から何かのついでに順番に買って読み直しています。

ルフィ海賊団の荒唐無稽な冒険物語、面白いですね。

週刊少年ジャンプとワンピース第1巻

以下に読み終わったコミック版を順次追加していきます。

01 ”ROMANCE DAWN -冒険の夜明け-” (1997) 1-8
02 ”VERSUS!!バギー海賊団” (1998) 9-17
03 ”偽れぬもの” (1998) 18-26
04 ”三日月” (1998) 27-35
05 ”誰が為に鐘は鳴る” (1998) 36-44
06 ”誓い” (1998) 45-53
07 ”クソジジイ” (1998) 54-62
08 ”死なねェよ” (1999) 63-71
09 ”” (1999) 72-81
10 ”OK,Let's STAND UP!” (1999) 82-90
11 ”東一番の悪” (1999) 91-99
12 ”伝説は始まった” (2000) 100-108
13 ”大丈夫!!!” (2000) 108-117
14 ”本能” (2000) 117-126
15 ”まっすぐ!!!” (2000) 127-136
16 ”受け継がれる意志” (2000) 137-145
17 ”ヒルルクの桜” (2001) 145-155
18 ”エース登場” (2001) 156-166
19 ”反乱” (2001) 167-176
20 ”決戦はアルバーナ” (2001) 177-186
21 ”理想郷” (2001) 187-195
22 ”HOPE!!” (2002) 196-205
23 ”ビビの冒険” (2002) 206-216
24 ”人の夢” (2002) 217-226
25 ”一億の男” (2002) 227-236
26 ”神の島の冒険” (2002) 237-246
27 ”序曲” (2003) 247-255
28 ”「戦鬼」ワイパー” (2003) 256-264
29 ”聖譚曲(オラトリオ)” (2003) 265-275
30 ”狂想曲(カプリッチオ)” (2003) 276-285
31 ”ここにいる” (2003) 286-295
32 ”島の歌声(ラブ・ソング)” (2004) 296-305
33 ”DAVY BACK FIGHT!!” (2004) 306-316
34 ”「水の都」ウォーターセブン” (2004) 317-327
35 ”船長(キャプテン)” (2004) 328-336
36 ”9番目の正義” (2005) 337-346
37 ”トムさん” (2005) 347-357
38 ”ロケットマン!!” (2005) 358-367
39 ”争奪戦” (2005) 368-377
40 ”ギア” (2005) 378-388
41 ”宣戦布告” (2006) 389-399
42 ”海賊 vs CP9” (2006) 400-409
43 ”英雄伝説” (2006) 410-419
44 ”帰ろう” (2006) 420-430
45 ”心中お察しする” (2007) 431-440
46 ”ゴースト島(アイランド)の冒険” (2007) 441-449
47 ”くもり時々ホネ” (2007) 450-459
48 ”オーズの冒険” (2007) 460-470
49 ”ナイトメイア・ルフィ” (2008) 471-481
50 ”再び辿りつく” (2008) 482-491
51 ”11人の超新星” (2008) 492-502
52 ”ロジャーとレイリー” (2008) 503-512
53 ”王の資質” (2009) 513-522
54 ”もう誰にも止められない” (2009) 523-532

本ONE PIECE(ワンピース)
尾田栄一郎/集英社(JAMP COMICS)/1997(巻一)~2009(巻五十四)

・ 書籍の紹介一覧 B0064

最終更新日:2009.06.09

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2007.11.06

走ることについて語るときに僕の語ること/村上春樹

村上春樹は積極的に自分を語ることの少ない作家だと思います。勿論、彼の小説やエッセイ、旅行記そして村上朝日堂での読者の質問に対する回答などから、彼の考え方の断片を垣間見ることはできます。
でも、2005年の「意味がなければスイングはない」のように、彼の考え方(この場合は音楽を通してですが)をまとめて語る作品が発表されるようになりました。

「走ることについて語るときに僕の語ること」も、マラソンやトライアスロンを通して、彼の考え方や思いが語られています。
この本を読み始めて、少し違和感と言うほどではないけれど、今までの作品とは違った、上手く表現できないけれど、ストレートな力強さを感じました。
そして読み進めるうちに、この本は村上の「歳をとる」ことの受け入れ方が書かれているのではないかと思うようになりました。

村上は1949年生まれ50代後半で、僕より10歳ほど年上です。
40代後半の僕は、「歳をとる」ことを肉体的に実感しつつその前で戸惑っています。そんな時に読んだからこんなことを思っただけかもしれませんが。

本走ることについて語るときに僕の語ること
村上春樹/文藝春秋/2007

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走ることについて語るときに僕の語ること
村上 春樹
文藝春秋 ( 2007-10-12 )
ISBN: 9784163695808
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

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2007.10.24

夜のピクニック/恩田 陸

ベストセラーになった本を割と読むようになったのは、ここ数年のことです。そんなわけもあって、恩田 陸の名前はNHKのドラマの「六番目の小夜子」を通して知っている程度でした。
「夜のピクニック」は、近所の本屋の店頭に平積みにされていたのが目に留まり、余り予備知識も無く、週末の読書用にと買ってきたものです。

読んでみて、とても面白かった。それで、恩田作品に興味を持って、「六番目の小夜子」「麦の海に沈む果実」「黄昏の百合の骨」「三月は深き紅の淵を」「図書室の海」と立て続けに読んでみました。ただ、これら作品がサスペンスというかホラーというかドロドロしているのに対し、「夜のピクニック」は切ない青春小説といった印象を受けました。
ただ、共通しているのは、それぞれの物語はそれはそれで完結しているけれど、次につながりがあるようなすっきりした終わり方をしないという感じを持ちました。

「夜のピクニック」は、主人公の高校生の男女ふたりの過去とそして現在に至るわだかまり、戸惑い、思いが、高校の夜間歩行というただひたすら一昼夜歩き続ける行事の中で、彼らの仲間とともに淡々と語られます。
切なく優しい、いい物語です。

すでにベストセラーになった本を読むのは、照れというか、やせ我慢というか、食わず嫌いというか、妙な抵抗感があったのですが、やっぱりそれは損なことだと、この小説を読んで思いました。

追記
2007.10.21付け朝日新聞の朝刊に「千人70キロ 夜のピクニック」というタイトルで、茨城県立水戸第一高等学校の強歩大会を紹介していました。この記事を読むまで、「夜のピクニック」が実在する行事をベースにしていること、恩田さんが同校の卒業生であることを知りませんでした。

本夜のピクニック
恩田 陸/新潮社(新潮新書)/2004(初出)

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夜のピクニック
恩田 陸
新潮社 ( 2006-09 )
ISBN: 9784101234175
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

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2007.10.13

H5N1/岡田晴恵

ヒトのA型インフルエンザの起源は鳥インフルエンザとされ、過去にも1918年のH1N1(スペイン風邪)、'57年のH2N2(アジア風邪)、'68年のH3N2(香港風邪)が新型インフルエンザとして発生し、猛威を振るいました。
そして今、もっとも新型インフルエンザへの変異が懸念されているのが鳥インフルエンザH5N1亜型です。2007.10.06のエントリーに書いたけれど、少しずつ人間の感染に適するように変異していて、不気味に感じます。

H5は、H7とともに高病原性鳥インフルエンザに分類され、H5N1ウイルスはニワトリなどに致命的な病原性を現します。この毒性のまま、ヒトに最適化される変異が起きたらと考えると空恐ろしくなります。
現在のH1N1、(H2N2)、H3N2のA型インフルエンザは、高熱が出て辛い病気ですが、それでも呼吸器を中心とした病気です。ところがH5N1がニワトリなどで示す毒性のまま新型インフルエンザになった場合は、呼吸器にとどまらず全身にウイルスが感染し機能不全を起すとされています。

「H5N1」は、アジアの架空の国で鳥インフルエンザが変異し強毒性の新型インフルエンザが発生・拡散、そしてパンデミックに至る経過が書かれた近未来小説です。
筆者の岡田晴恵さんは、国立感染症研究所の研究員でインフルエンザを始めとした感染症についての本を多く記しています。この本は、以前紹介した「パンデミック・フルー」を物語仕立てにしたものです。

火種→苦悩→焦燥→憂鬱→発生→上陸→拡大→連鎖→混迷→破綻→崩壊という章立てで物語が進み、H5N1が日本社会を崩壊して行く様が描かれます。
最悪の事態として描かれているのでしょうが、現在の鳥インフルエンザの状況から出発しているので、あながち絵空事と笑えないところが恐ろしいところです。

新型インフルエンザ対策として、今の日本にプレ・パンデミック・ワクチンやタミフルの備蓄はどの程度あるのだろう?
そして、なにより篭城作戦のための食糧備蓄を1か月分くらいはしないとね。

本H5N1 -強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ-
岡田晴恵/ダイヤモンド社/2007

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2007.10.05

いつか王子駅で/堀江敏幸

僕が初めて堀江敏幸の名前を知ったのは、NHK BS2で日曜日の朝8時から放送している「週刊ブックレビュー」で、彼の著作「バン・マリーへの手紙」が紹介されていたからです。その中で「思考の寄り道」といった表現を紹介者の方が使っていて、興味を持ちました。

そして、最初に読んだのが「熊の敷石」という作品です。「思考の寄り道」というだけあって、物語が進んでいく中で、主人公の考えや思いが、記憶や知識の中を浮遊し、しばらくするもとの物語に戻っていく、それがひとつの物語の中で何度も何度も繰り返される、不思議な読後感があります。

それで、もう一冊読んでみようと思い読んだのが、今回紹介する「いつか王子駅で」です。
僕が小学生の頃、祖母が東十条に住んでいて、夏休みになると東京へ帰省していました。王子は、京浜東北線で東十条のひとつ東京よりの駅で、駅前の飛鳥山公園の名主の滝に、夏の昼下がりよく遊び行きました。
そんなこともあって、「王子」のタイトルに惹かれてこの作品を読もうと思ったのです。
物語は、主人公の知人の印鑑職人が或る日、姿を消してしまうという話なのだけど、この作品も主人公の考えや思いが幾度となく浮遊します。
下町や昭和の情緒が雰囲気を持って描かれ、それはそれで心地よいものです。

でも、物語はなかなか進まず、何処にもたどり着かず終わります。
その浮遊感、今の僕には少々しんどいかも。

本いつか王子駅で
堀江敏幸/新潮社(新潮文庫)/2006

書籍の紹介一覧 B0060

いつか王子駅で
堀江 敏幸
新潮社 ( 2006-08 )
ISBN: 9784101294711
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2007.10.02

大地動乱の時代/石橋克彦

昨日のエントリーに昨日未明に発生した神奈川県西部の地震について書きました。
マグニチュード4.9(暫定値)の規模の小さな地震だけど、東海地震との関係が少し気になりました。
それは、随分前に読んだ石橋克彦さんの「大地動乱の時代」の内容を思い出したからです。

石橋さんは東海地震説を唱えた研究者ですが、この本では主に東海・関東地方に発生する巨大地震のメカニズムについて書かれています。
その中で小田原付近の神奈川県西部の地震と東海地震、関東地震の周期的な連動性を指摘しています。

下の図は、同書から引用したものですが、小田原地震は1633年3月、1703年12月、1782年8月、1853年3月、1923年9月におよそ70年周期で発生しています。
一方、東海地震は1707年10月、1854年12月、1944年12月(1944年の地震は駿河湾の部分では発生せず空白域と呼ばれている)に発生し、1703年12月、1853年3月、1923年9月の小田原地震に引き続き発生しています。
また、関東地震は1703年12月、1923年9月と1703年12月、1923年9月の小田原地震と同時に起きています。
もちろん、筆者はわずか最近400年と前置きしていますが、この周期性と連動性は僕の興味を引き、小田原で大きな地震が起こったら東海地震を注意しなければなあ、とこの本を読んだ時思いました。

まあ、東海地震140年周期や小田原地震の70年周期を現時点で経過しても、この地域では巨大地震は発生していないし、今回の地震は小さな規模のものだけどね。このあたりが自然現象の予測の難しところでしょうね。

「大地動乱の時代」P163 図5-1
・ 引用:石橋克彦 「大地動乱の時代」P163 図5-1

静岡の周辺は、フィリピン海、太平洋、それと大陸のプレートなどが複雑に重なり合っているところです。この本は、そのプレートの動きの歪により発生する巨大地震のメカニズムがわかりやすく書かれています。

※ 今回の神奈川県西部の地震は、フィリピン海プレートと大陸のプレートの衝突しているところで発生したようで、詳しくは気象庁の「2007年10月1日02時21分ころの神奈川県西部の地震について」(PDF)に掲載されています。

本大地動乱の時代 -地震学者は警告する-
石橋克彦/岩波書店(岩波新書)/1994

書籍の紹介一覧 B0059

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大地動乱の時代―地震学者は警告する
石橋 克彦
岩波書店 ( 1994-08 )
ISBN: 9784004303503
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

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2007.09.24

安全と安心の科学/村上陽一郎

日本では、屠殺される牛すべてについて牛海綿状脳症(BSE)の検査を行っているけれど、厚生労働省は検査の補助金のうち20ヶ月齢以下の牛については、来年の7月末で打ち切るそうです。
この決定は、2006年年5月に食品安全委員会が出した「我が国における牛海綿状脳症(BSE)対策に係る食品健康影響評価」(PDF)に基づいてされたものだと思います。
科学的な評価に基づけば、全頭検査でも、21ヶ月齢以上の検査でもそのリスクは変わらず、感染源とされる飼料としての肉骨粉の利用禁止や適正な屠殺処理が行われれば、20ヶ月齢以下の検査をしなくても、安全性は変わらないとの判断なのでしょう。だから、20ヶ月齢以下の検査に補助金を出すことは、税金の無駄遣いにもつながると。

でも、店頭に20ヶ月齢以下の牛肉で、BSEの検査をしてあるものとないものが並んでいたら、僕らはどちらを選ぶのだろう。両方の安全性は変わらないけれど、やっぱり検査してあるほうを安心して選ぶんじゃないか?

このへんが、科学的根拠に基づいた「安全」と、多分に心理的な要素も含んだ「安心」を「安全・安心」とひとくくりにまとめられない難しさがあると思います。

村上陽一郎の「安全と安心の科学」には、前述のBSE検査のことは語られていないけれど、安全を中心にそのあたりのことが書かれています。

どんな事象にも100%絶対安全は、存在しないこと。安全はリスクと得られる利益とで考える、最近、定着してきたリスク・マネジメントの考え方を説きます。
そして、例えば統計的には、自動車の事故のほうが原子力発電所の事故よりも、はるかにリスクが高いのに、僕らは原子力発電所よりも自動車のほうに安心感を持っていることなど。

これは、BSEの全頭検査の問題にもあてはまるなあと思いながら読んでいました。

最近、行政や企業などでよく語られる「安心・安全」を考えるきっかけになる本です。

本安全と安心の科学
村上陽一郎/集英社(集英社新書)/2005

書籍の紹介一覧 B0058

引用文BSE検査、20カ月以下「一斉終了を」 厚労省
厚生労働省が月齢20カ月以下の牛の牛海綿状脳症(BSE)検査に対する全額補助を来年7月末に打ち切るのに対し、一部自治体が独自に継続する方針を示している問題で、同省が都道府県などに通知を出し、全国一斉に検査を終了するよう求めていることがわかった。検査のある・なしが表示されれば「消費者に不安を与える」などと同省は説明しているが、消費者の選択肢を奪うとの指摘もある。
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同省が国産牛の全頭検査を始めたのは、日本初のBSE感染牛が見つかった01年。05年には、内閣府の食品安全委員会が「20カ月以下の感染リスクは低い」と結論づけたのを受け、補助対象から20カ月以下をはずそうとした。しかし、消費者の不安は根強く、同年8月から3年間に限るとの条件で補助を続けた。
2007/09/11/朝日新聞

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安全と安心の科学
村上 陽一郎
集英社 ( 2005-01 )
ISBN: 9784087202786
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2007.09.17

しをんのしおり/三浦しをん

恩田 陸や佐藤多佳子、森見登美彦など、このところ少しずつ読んでいます。
あまり流行りの作家の作品を読むことがなかったので、不思議な気持もするし新鮮な気持にもなります。
三浦しをんもそうした中の一人で、初めて読んだ「風が強く吹いている」は素敵な作品でした。

「しをんのしおり」は、エッセイ集で彼女の日常が軽快に痛快に語られます。

「二度目の青い果実」の中で「思春期は少年少女の時に一度だけ訪れるのではなく、実は生きていると周期的に訪れるもやもやとした季節なのだろうとここ数年で了解した。」と三浦は語るのだけど、そうなんだよなと思ったりしました。
恩田、佐藤、森見、そして三浦の描く若い世代の物語を最近読んでいる僕にとって、はっとする一文です。

本しをんのしおり
三浦しをん/新潮社(新潮文庫)/2005

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しをんのしおり
三浦 しをん
新潮社 ( 2005-10 )
ISBN: 9784101167527
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2007.08.14

「法令遵守」が日本を滅ぼす/郷原信郎

官にしろ民にしろ政にしろ、バブル経済の崩壊以降、不祥事が多いような気がします。実際に多いのか、ただそうした報道に接する機会が多いだけなのか、本当のところはわかりません。
ただ、いったん不祥事が発生すると、集中砲火的な非難の報道がされ、完全無欠でない僕は、なんだか辛くなってきます。
本当に知りたいのは、何故、不祥事が起こったのか、今後、どうすればいいのか、そしてそのことに対して僕は何ができるのか、そんなところなのに。

そして、不祥事の対応として語られるのが"コンプライアンスの徹底"です。

コンプライアンスは、「法令遵守」と訳されるのですが、気の小さい僕なんかは、とりあえず法律やら規則やらを守っておこうと思うわけです。まあ、その程度なら問題はないのだろうけど、これが法律を守っているからいいだろうとなると、別の話になるのでしょう。「「法令遵守」が日本を滅ぼす」は、法律を遵守さえしていればいいということの危険性を書いています。

コンプライアンスの前に萎縮し、思考停止し、失敗をするような新しいことには挑戦しなくなる。
一方で、常識からはずれたことをしても、法律上問題はないからと、言い逃れをする。
このような、コンプライアンスの弊害が、例をあげて書かれています。

そして、本当の意味のコンプライアンスとは、法令以前に社会の要請に答えること、筆者は説きます。

自分の頭で考え、自分の判断で行動すること、これは勇気のいることだけどね。

本「法令遵守」が日本を滅ぼす
郷原信郎/新潮社(新潮新書)/2007

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「法令遵守」が日本を滅ぼす
郷原 信郎
新潮社 ( 2007-01-16 )
ISBN: 9784106101977
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2007.08.08

メディア・バイアス/松永和紀

白か黒か、良いか悪いかの文脈で物事が語られている時、それはわかりやすいけれど、意識的に注意をして聞かなければね。恐らく、物事の本質は白と黒の間に存在しているのだから。
松永和紀の「メディア・バイアス」は、そんなことを教えてくれます。

この本では、健康情報番組、警鐘報道、自然志向など、巷にあふれる僕らがすぐに飛びつきそうな情報の接し方が書かれています。
さまざまな具体例から、その弊害と、リスクとベネフィットによる判断の重要性が語られます。

また、筆者は、一方的に批判するのではなく、何故、そのようなことが起こるのか、原因まで掘り下げて説明するので、説得力があります。

面白い本です。

本メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学
松永和紀/光文社(光文社新書)/2007

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2007.07.24

リスクのモノサシ/中谷内一也

ひとつのリスクを軽減するために行った行為が、別のリスクを増大させてしまう「リスクのトレードオフ」として、有機塩素系殺虫剤DDT(Dichloro-diphenyl-trichloroethane)が、よく例にあげられます。

DDTは、終戦直後の日本の衛生状態の改善や農作物の生産性の向上に貢献する一方で、環境中での長い残留が問題視され、また、環境ホルモン作用、発癌性などが当時疑われれたこともあって、1970年代の初めに農薬としての使用が禁止されました。

多分、他の低毒性であったり低残留性であったりする代替というかより優れた農薬があった日本では、DDTの使用禁止はさほど大きな問題にならなかったのでしょう。
ただ、貧しい国では安価なDDTに代替する農薬や薬剤がなく、マラリア原虫を媒介する蚊の防除ができず、一時は減少したマラリアが増えてしまった。そこで、一部の発展途上国ではDDTが、今でも使われているそうです。

DDTのリスクを低減したがために、マラリアのより生命に関わるリスクを増大させた「リスクのトレードオフ」の現象なんでしょうね。

中谷内一也の「リスクのモノサシ」は、100%安全なんてない現実の中で、リスクの程度を評価し、より安全な選択をするにはどうしたらよいかが、よく書かれています。

何か危険だという情報に接した時、それが何に比べてどの程度危険なのか、じっくりと考えて判断する、それが「リスクのものさし」なんだろうね。

本リスクのモノサシ 安全・安全生活はありうるか
中谷内一也/日本放送出版協会/2006

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リスクのモノサシ―安全・安心生活はありうるか
中谷内 一也
日本放送出版協会 ( 2006-07 )
ISBN: 9784140910634
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2007.07.06

写真で見る 農作物病害虫診断ガイドブック 新増補版/静岡県植物防疫協会

静岡県植物防疫協会から出ている「写真で見る 農作物病害虫診断ガイドブック」は、日頃、植物に付く虫や病気の名前や性状を調べるのに重宝している1冊です。

今回、新増補版としてリニューアルされました。
ガイドブックでは、静岡県の主要農作物76種類とそれに発生する病害虫642種類を扱っています。
本来は農家や指導者向けの本だけど、写真が豊富で、とにかく綺麗。素人の僕なんかが読んでも楽しめます。
また、病害虫の発生消長が図示されているので、病害虫個々の特徴を知るのにも役立ちます。
ちなみに価格は、送料別で3,000円(税込み)でした。

・ ガイドブックの問い合わせ先
静岡県植物防疫協会 Tel. 054-221-5678

写真で見る 農作物病害虫診断ガイドブック 新増補版/静岡県植物防疫協会

本写真で見る 農作物病害虫診断ガイドブック 新増補版
静岡県植物防疫協会/静岡県植物防疫協会/2007

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2007.07.03

これが「週刊こどもニュース」だ/池上 彰

僕もその一人だけど、NHKが土曜日の午後6時10分から放送している「週刊こどもニュース」をよく見ている人が、僕のまわりには結構います。
定時のニュースは別として、テレビの報道番組(特に民放)は、進行役や意見をする人の個性というか主張というか、そういったものが強すぎて、なんだか見ていてつらくなる。もう少し、淡々と事実を伝えて、その事象に対する考え方は視聴者に預けてくれればと思ったりもします。そんなわけで、テレビの報道番組は「週刊こどもニュース」を除いて、最近、余り見なくなりました。

6月16日のこどもニュースでは、「メディア・リテラシー」を取り上げていました。
映像やインタビューや会見の報道は、編集してその一部しか伝えていないから、放送されない部分があることを考えてとか、音楽やグラフも表現の仕方によって印象が変るから気をつけてとか、大人だって結構、伝い手の意図に乗せられてしまうことがあるんで、注意しなきゃなと思ったりしていました。

それと、こどもニュースが、僕のまわりで人気があるのは、物事の全体をまずとらえわかりやすい言葉で、割りと中立なスタンスで伝えてくれるところにあります。

「これが「週刊こどもニュース」だ」は、前のお父さん役だった池上 彰さんが、こどもニュース製作の舞台裏を書いたものです。世の中で起こる事件、事故などを平易な言葉で中立的に伝え、さらに視聴者にその判断をゆだねるという良質な番組を作る苦労が書かれています。

本これが「週刊こどもニュース」だ NHK「週刊こどもニュース」の制作現場から
池上 彰/集英社(集英社文庫)/2000

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これが「週刊こどもニュース」だ
池上 彰
集英社 ( 2000-09 )
ISBN: 9784087472448
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2007.06.15

安心社会から信頼社会へ/山岸俊男

Web2.0の底流に、他者に対する信頼という考えがあるのだと思います。それは、魅力的ですが、これからの社会の基本的な考え方になるのか、単なる幻想に過ぎないのか、興味があります。
そんなこともあって「信頼」という言葉が、最近、気になっていました。

僕は、山岸俊男の「安心社会から信頼社会へ」を読むまでは、「信頼」があって「安心」があると、漠然と思っていました。

しかし、この本では、「信頼」と「安心」を明確に分けています。
安心は、社会における不確実性を最小限にすることで得ることができ、信頼があるとかないとかとは直接は関係ないということに、読んでいて気がつきました。
そして、信頼は不確実な状況の中で、他者に対する考え方の問題でであるということ。

本では、社会心理学の多くの実験結果を例に、そのことが語られます。
この実験結果自体は興味深く説得力のあるものですが、0.4程度の相関係数をかなり強い正の相関としているところがちょっと気になりました。

監視や規制により得られる安心社会より、不確実な状況の下で他者を信頼する社会のほうが、素敵ではあるけれど、どうしたらそういった社会を作れるのか難しい問題ですね。

本安心社会から信頼社会へ 日本型システムの行方
山岸俊男/中央公論新社(中公新書)/1999

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安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方
山岸 俊男
中央公論新社 ( 1999-06 )
ISBN: 9784121014795
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2007.06.06

フード・セキュリティー/レスター・ブラウン

このところの米国のバイオエタノールの増産で、その原料となるトウモロコシを含めた穀物の相場が昨年の秋頃から上昇しています。
このトウモロコシのエタノール化は、米国としてみれば、二酸化炭素の削減という温暖化対策もあるのでしょうが、むしろ国際情勢に左右される石油への依存の軽減や国内の農業対策といった意味合いの方が強いと思います。
このことは、家畜の餌としてトウモロコシをはじめとする穀物の多くを米国に依存している日本への影響は大きいでしょうし、主食として穀物を輸入している国々がトウモロコシなどを買えなくなるなんてことが起こるかもしれません。

そんな中、先日、東京のイイノホールで行われた独立行政法人農業環境技術研究所主催の農業環境シンポジウム 「食料 vs エネルギー - 穀物の争奪戦が始まった -」 に行ってきました。
今日的テーマを取り上げているし、基調講演をレスター・ブラウンが行うこともあって、800人ほど収容できる会場は、ほぼ満員でした。

農業環境シンポジウム 「食料 vs エネルギー - 穀物の争奪戦が始まった -」のパンフレット

シンポジウムは、ブラウンの「バイオ燃料が食卓を脅かす」と題された基調講演と、ブラウンを加えた5人の専門家によるパネルディスカッションで構成されていました。

ブラウンの基調講演の内容は、「フード・セキュリティー -だれが世界を養うのか」のダイジェストで、特に新しい内容や見解を聞くことはできませんでした。

・ シンポジウムの様子は、農業環境技術研究所のウェブの「シンポジウム・研究会・ワークショップの開催記録」にテキスト、PDF、動画がアップロードされています。(追記 2007.06.21)

今、石油とバイオエタノールとトウモロコシ、エネルギーと食料が、連動して経済が構成されるという、新たな時代をむかえていると思います。
そして、現状ではその動きは経済の原理にのみまかされ、大局的に動きをコントロールする組織や機関がないことなどを考えさせられました。

最近、環境問題に関わる本を少しずつ読んでいます。
「フード・セキュリティー」を読む少し前に、ビョルン・ロンボルグの「環境危機をあおってはいけない - 地球環境のホントの実態」を読みました。こちらは、環境問題を広範に扱っていますが、「フード・セキュリティー」の対極にある本です。
環境問題については、是非の両面からいろいろと本を読みたいと思っています。でも、両方ともそれはそれで正しいように感じてしまって、そうした中で僕は何をしたら良いのか考えることって難しいね。

いずれ「環境危機をあおってはいけない」も紹介しようと思います。

本フード・セキュリティー -だれが世界を養うのか
(OUTGROWING THE EARTH - THE FOOD SECURITY CHALLENGE IN AN AGE OF FALLING WATER TABLES AND RISING TEMPERATURES -

Lester R.Brown/福岡克也(監訳)/ワールドウォッチジャパン/2006

・ 書籍の紹介一覧 B0050

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フード・セキュリティー―だれが世界を養うのか
レスター ブラウン
ワールドウォッチジャパン ( 2005-04 )
ISBN: 9784948754225
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2007.04.20

インターネット的/糸井重里

東京都知事候補者の政見放送をクリップした動画が、YouTubeなどに投稿され、東京都選挙管理委員会が政見放送の公平性が確保できないとして、投稿サイトの管理者に削除の要請をしていることを、4月5日の読売新聞が報じていました。

詳しいことはわからないけれど、政見放送の公平性や著作権などで、政見放送のインターネットへの投稿は微妙な問題があるのでしょう。でも、この現象は、まさに「インターネット的」な現象だと思います。

政見放送、いや、テレビ自体を最近、余り見なくなりました。定時のニュースやサッカーの試合、それと毎週見るのはルフィー海賊団の荒唐無稽な冒険アニメ「ワンピース」ぐらいです。
それと引き換えに情報はラジオとインターネット、特に常時接続するようになってからインターネットの割合が増えてきました。いっそのこと政見放送も選管がサイトで配信すればなんて思ったりします。

糸井重里の「インターネット的」は、2001年に発行された少し古い本ですが、中心を持たず価値が平坦化し、そして誰もが生産者でも消費者でもあるインターネットの世界を平易な言葉で語っています。
最後に幸福とは何かにつながっていくところなど、その後のWeb2.0の考え方によく似ています。というより、それほどITやPCに長けていない糸井の感性が、2001年の段階でインターネットの本質のひとつを捉えていたのでしょう。

僕は糸井重里について、コピーライターとして有名で、矢野顕子の作品のいくつかの詞を手がける、その程度の知識しか持っていませんでした。
「インターネット的」を読んで、糸井重里てまともで健全な発想をする人なんだと思いました。

本インターネット的
糸井重里/PHP研究所(PHP新書)/2001

・ 書籍の紹介一覧 B0049

引用文動画サイトに都知事候補の政見放送、選管が削除要請
ンターネットの複数の動画投稿サイトに、東京都知事選の立候補者の政見放送の映像が投稿されている問題で、都選挙管理委員会は5日夜、米国の動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」と、日本の投稿サイト「アメーバビジョン」を運営するサイバーエージェント(渋谷区)に映像の削除を要請した。
政見放送のネット投稿が野放しになっている中、「政権放送は公職選挙法で回数が定められており、特定の候補者の映像がいつでも視聴可能になっているのは公平性が保てない」と判断した。
投稿サイトで流されているのは、過激な発言内容で注目された一部の候補者の政見放送。都選管ではこの2サイト以外でも政見放送の投稿を確認し次第、同様の要請をする方針だ。
2007/04/05/読売新聞

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インターネット的
糸井 重里
PHP研究所 ( 2001-07-14 )
ISBN: 9784569616148
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2007.03.31

パンデミック・フルー/岡田晴恵

このところのタミフルの副作用に関する報道を見聞きしているうちに、マスコミの新型インフルエンザに対する怖さの認識が弱いのかなと思うようになりました。
まあ、これから起こるかもしれない問題を想定に入れて、今起こっている問題を論じると、話がわかりづらくなって面白くないのかもしれないけれど。

新型インフルエンザに対する積極的な対策がない中で、ウイルスのノイラミニダーゼの働きを阻害するタミフルなどの薬が実用化されたと聞いたとき、十分でないにしろ対抗手段が出てきたと思いました。
ですから、昨年1月に僕がインフルエンザに感染し、タミフルが処方されたとき、タミフルの実物にちょっと感激したのとともに、普通のインフルエンザでも処方されるのが意外にも思いました。(→ 関連エントリー 2006.01.27 インフルエンザに感染したかも

今回紹介する「パンデミック・フルー」の著者、国立感染研究所の岡田晴恵さんが、少し前のNHKのテレビニュースに出ていました。
新型インフルエンザの対策として、一般人の僕らは、ウイルスに感染しないこと、そのために2週間程度だったかもっと長かったか、食料の備蓄をすることなどを説明していました。
特に印象に残ったのは、終わり際に、お願いしますと頭を下げたことです。
そこに、新型インフルエンザに対する僕らの対抗手段は多くないという、恐ろしさを垣間見たような気がしました。

新型インフルエンザとして、懸念されている鳥インフルエンザA/H5N1型は、ニワトリに対して全身症状を出し極めて致死率の高い高病原性に分類されています。
新型インフルエンザとして問題となった、スペインかぜA/H1N1型、アジアかぜA/H2N2型、香港かぜA/H3N2型も鳥インフルエンザがヒトに感染するように変異したものと言われていますが、H5N1型のような高病原性鳥インフルエンザではありません。
ですから、鳥インフルエンザH5N1のヒトのインフルエンザへの変異に、専門家は相当な危機感を持っているのだと思います。

「パンデミック・フルー」は、一般向けにインフルエンザの歴史や性質、現在の鳥インフルエンザの状況、そして新型インフルエンザへの僕らがとれる対策などが、わかりやすく書かれています。
ちょっと、危機感を煽りすぎかなと思いますが、毒性の強い新型インフルエンザのパンデミックが起こった場合、この本に書かれていることが実際に起こるかもしれません。

ただ、巻末に参考文献の一覧をつけてくれれば、あれこれ情報が手に入ってありがたかったけれど。

鳥インフルエンザが新型に変異するとき、ヒトと折り合いをつけて毒性を弱めてくれればいいけれどね。それは淡い期待かな?

本パンデミック・フルー 新型インフルエンザ Ⅹデー ハンドブック
岡田晴恵/講談社/2006

関連エントリー:2007.03.22 タミフルと副作用と新型インフルエンザ

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・ この記事は「タミフル騒動は、厚労省のマッチポンプ。」(空とぶ海猫亭)にトラックバックしました。

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2007.03.16

悦楽GR/青山祐介 マニュアルカメラ編集部編

本屋で見かけて、思わず買ってしまいました。

「悦楽GR」は、リコーのコンパクトカメラGRシリーズを紹介した本です。

僕は、GR1を持っています。このカメラは、28mmf2.8というコンパクト・カメラには難しいと思われる単焦点広角レンズを装着した35mmフィルムカメラです。

タバコの箱ほどの大きさしかないカメラですが、そのレンズの描写力が素敵です。
別にフィルターなど架けないのに空の青が、空の青として綺麗に写ります。これって、とても重要なことだと思います。

それと、絞り優先での撮影ができ、レンズの性能を十分に引き出すことができます。
オートフォーカスが、少し気難しいところが難点ですが。

最近はデジタルカメラばかりですが、GR1も使わなきゃと、この本を読んで思いました。

GR1と悦楽GR

本悦楽GR
青山祐介 マニュアルカメラ編集部編/枻出版社(枻文庫)/2007

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悦楽GR
青山 祐介, マニュアルカメラ編集部
エイ出版社 ( 2007-01 )
ISBN: 9784777906826
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2007.02.28

夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦

背景として京都の街がよく書き込まれたファンタジーです。

真面目で思いやりがあり自分に正直で、それでいてその行動は相当はずれているなんとも可愛らしい彼女と、彼女に思いを寄せ、それを遂げるため彼女の外堀を一生懸命埋める努力を惜しまない、情けない青年の物語です。

物語はひとつの事柄に対して彼女と青年、それぞれから語られ展開します。その捉え方の違いがとてもほほえましいく映ります。
また、それをとりまく怪しげな登場人物たちの個性が物語に奥行きを持たせます。

読んでいる僕自身が、彼女に魅了されながら、青年に同情してしまう楽しい物語です。

本夜は短し歩けよ乙女
森見登美彦/角川書店/2006

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夜は短し歩けよ乙女 
森見 登美彦
角川書店 ( 2006-11-29 )
ISBN: 9784048737449
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2007.02.16

ネットvs.リアルの衝突/佐々木俊尚

2004年5月にウィニー2の作者が、著作権侵害行為を幇助した疑いで逮捕された時、これが裁判になれば裁判官はどういった判断をするのか、興味がありました。

「幇助」に対して誰もが思ったことだろうけど、自動車や包丁は凶器に成り得るし、電話だって犯罪に利用されることがあります。けれども自動車や包丁や電話を作ったメーカーは、その行為を「幇助」したとは一般に考え難いよな。というようなことを思っていました。

僕自身はウィニー2をインストールしたことも使ったこともないので実感がわかないけれど、末端のPCを直接結びデータのやり取りをする仕組は、正にインターネット的だし、それを可能にしているソフトは優れた利便性を提供するんだろうと思います。

でも、一方でウィニー2が、デジタル化された著作物の交換を容易にし、それが不特定多数で大規模に行われ、著作権者に損害を与えているとすれば、それはそれで問題があるなとも思ったりもしました。

僕自身はどう軸足を置いたらいいのかわからなかったので、現実社会でオーソライズされた判断をする裁判官が、どう解釈し結論を出すのかに興味を持ちました。

「ネットvs.リアルの衝突」では、ウィニーに関わる一連の騒動を半分以上のページを割いて取り上げています。丹念に取材がされ書かれているので、この事件の流れをつかむのに役に立つかもしれません。
残りのページは、OSの標準化、オープンソース、IPアドレスやドメインの管理、デジタル家電、そしてWeb2.0など、これまでPCやインターネットの世界で起こってきたことや起こりつつあることが述べられます。

筆者は、現実社会とインターネット社会の考え方の違い、そして対立といった視点から、この本全体をまとめているように思います。
中心を持たない分散され、様々なものを共有し発展してきたインターネット社会が、利用者が増え現実社会のインフラの一部になりつつある時、確かに現実社会の制度設計の中で暮らしている僕らと、様々な場面で軋轢が生じているのでしょう。
ウィニーに関する裁判もそのひとつなんだと思います。

この本が脱稿されたのが2006年10月16日で、当然、12月13日の判決については書かれていません。
下にasahi.comに掲載された判決理由をの要旨を引用しました。
現実世界の京都地裁の判断は、なんともおじさん的というか、おじさんの僕にはなんとなくですが理解できるような判決です。

自動車も包丁も電話もウィニーもそれ自体は、価値は中立で幇助に当たらない。でも、どのような意図で開発され、実際にどのように使われているかで、幇助かそうでないか判断すべきだ。て、ことでしょうか。

まだ、地裁の判断だからこれから上級審の判断はどうなるのだろう。

この本の最後の「どうやってわれわれは生きていけばいいのか?」の項に、小飼弾さんというプログラマーが答えています。
「もし技術に毒があるとして、でもその技術が後世へと残っていくとしたら、その毒は弱毒化されいるからだ」「結局、結論としてはさほど面白くないものになってしまうんだよね。でもわれわれは、そうやって弱毒化した毒に慣れる以外に、毒とのつきあい方を知らないんだから」

なんかこれって、今までヒトが病原性の高いウイルスや細菌などと、お互いにどこかで折り合いをつけて生き延びてきたのと似ていないかなあ。


本ネットvs.リアルの衝突 - 誰がウェブ2.0を制するか
佐々木俊尚/文春文庫/2006

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引用文「ウィニー」裁判、判決要旨
ファイル交換ソフト「ウィニー」の開発・公開をめぐる刑事裁判で、京都地裁が13日、開発者を有罪とした判決理由の要旨は以下の通り。
●被告の行為と認識
弁護人らは、被告の行為は(著作権法違反の)正犯の客観的な助長行為となっていないと主張する。しかし、被告が開発、公開したウィニー2が、実行行為の手段を提供して、ウィニーの機能として匿名性があることで精神的にも容易ならしめた客観的側面は明らかに認められる。
ウィニー2は、それ自体はセンターサーバーを必要としない技術の一つとしてさまざまな分野に応用可能で有意義なものだ。技術自体は価値中立的であり、価値中立的な技術を提供することが犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助(ほうじょ)犯の成立範囲の拡大も妥当でない。
結局、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、提供する際の主観的態様によると解するべきである。
被告の捜査段階における供述や姉とのメールの内容、匿名のサイトでウィニーを公開していたことからすれば、違法なファイルのやりとりをしないような注意書きを付記していたことなどを考慮しても、被告は、ウィニーが一般の人に広がることを重視し、著作権を侵害する態様で広く利用されている現状を十分認識しながら認容した。
そうした利用が広がることで既存とは異なるビジネスモデルが生まれることも期待し、ウィニーを開発、公開しており、公然と行えることでもないとの意識も有していた。
そして、ウィニー2がウィニー1との互換性がないとしても、ウィニー2には、ほぼ同等のファイル共有機能があることなどからすれば、本件で問題とされている03年9月ごろにおいても同様の認識をして、ウィニー2の開発、公開を行っていたと認められる。
ただし、ウィニーによって著作権侵害がネット上に蔓延(まんえん)すること自体を積極的に企図したとまでは認められない。
なお、被告は公判廷でウィニーの開発、公開は技術的検証などを目指したものである旨供述し、プログラマーとしての経歴や、ウィニー2の開発を開始する際の「2ちゃんねる」への書き込み内容などからすれば、供述はその部分では信用できるが、すでに認定した被告の主観的態様と両立しうるもので、上記認定を覆すものではない。
●幇助の成否
ネット上でウィニーなどを利用してやりとりされるファイルのうち、かなりの部分が著作権の対象となり、こうしたファイル共有ソフトが著作権を侵害する態様で広く利用されている。
ウィニーが著作権侵害をしても安全なソフトとして取りざたされ、広く利用されていたという現実の利用状況の下、被告は、新しいビジネスモデルが生まれることも期待し、ウィニーが上記のような態様で利用されることを認容しながら、ウィニーの最新版をホームページに公開して不特定多数の者が入手できるようにしたと認められる。
これらを利用して正犯者が匿名性に優れたファイル共有ソフトであると認識したことを一つの契機とし、公衆送信権侵害の各実行行為に及んだことが認められるのであるから、被告がソフトを公開して不特定多数の者が入手できるよう提供した行為は幇助犯を構成すると評価できる。
●量刑の理由
被告は、ウィニーを開発、公開することで、これを利用する者の多くが著作権者の承諾を得ないで著作物ファイルのやりとりをし、著作権者の有する利益を侵害するであろうことを明確に認識、認容していたにもかかわらず、ウィニーの公開、提供を継続していた。
このような被告の行為は、自己の行為によって社会に生じる弊害を十分知りつつも、その弊害を顧みることなく、あえて自己の欲するまま行為に及んだもので、独善的かつ無責任な態度といえ、非難は免れない。
また、正犯者らが著作権法違反の本件各実行行為に及ぶ際、ウィニーが、重要かつ不可欠な役割を果たした▽ウィニーネットワークにデータが流出すれば回収なども著しく困難▽ウィニーの利用者が相当多数いること、などからすれば、被告のウィニー公開、提供という行為が、本件の各著作権者が有する公衆送信権に与えた影響の程度も相当大きく、正犯者らの行為によって生じた結果に対する被告の寄与の程度も決して少ないものではない。もっとも被告はウィニーの公開、提供を行う際に、ネット上における著作物のやりとりに関して、著作権侵害の状態をことさら生じさせることを企図していたわけではない。著作権制度が維持されるためにはネット上における新たなビジネスモデルを構築する必要性、可能性があることを技術者の立場として視野に入れながら、自己のプログラマーとしての新しい技術の開発という目的も持ちつつ、ウィニーの開発、公開を行っていたという側面もある。
被告は、本件によって何らかの経済的利益を得ようとしていたものではなく、実際、ウィニーによって直接経済的利益を得たとも認められないこと、何らの前科もないことなど、被告に有利な事情もある。
以上、被告にとって有利、不利な事情を総合的に考慮して、罰金刑に処するのが相当だ。
2006/12/13/朝日新聞

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2007.02.06

感染爆発/マイク・デイヴィス

インフルエンザウイルス関係の本を読んでいると、特に新型インフルエンザの恐ろしさとともに、生物としての巧みさ、したたかさを同時に感じてしまいます。
そして、新型インフルエンザにヒトがどこまで対応できるのか、個人のレベルで何ができるのかを考えてしまいます。

「感染爆発」は、1918年のH1N1(スペイン風邪)、'57年のH2N2(アジア風邪)、'68年のH3N2(香港風邪)などの新型インフルエンザウイルス、2003年のSARSウイルス(重症急性呼吸器症候群)、そしてアジアからヨーロッパに広がっている鳥インフルエンザH5N1を軸に、過去から現在までのパンデミックの経過が記されています。

筆者は生物学の専門家ではないため、生物学的というよりも社会的な観点からパンデミックが描かれています。少し文章に迫力を持たせ過ぎだなと感じるところもありますが。

記憶に新しいSARSの感染拡大の経過は、新型インフルエンザのパンでミックを具体的にイメージするのに役立つと思います。ただ、SARSウイルスは発病後に感染力を持つのに対し、インフルエンザウイルスはもっと早くから感染力を持つという違いがありますが。

新型インフルエンザが発生した際、いかに初期に点としての発生で押さえ込むことの大切さを教えてくれる本です。

本感染爆発 - 鳥インフルエンザの脅威
(THE MONSTER AT OUR DOOR - THE GLOBAL THREAT OF AVIAN FUL -)

MIKE DAVIS/柴田裕之 斉藤隆央(訳)/紀伊国屋書店/2006

書籍の紹介一覧 B0044

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感染爆発―鳥インフルエンザの脅威
マイク デイヴィス
紀伊國屋書店 ( 2006-03 )
ISBN: 9784314010016
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

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2007.01.22

環境問題の杞憂/藤倉 良

納豆のダイエット効果をうたった生活情報番組に関する一連の騒動が、ネット上のあちこちで取り上げられています。僕自身はこのテレビ番組を見ておらず、騒動の情報はマスコミを通して知るだけだから、内容についてあれこれ言えません。
ただ、健康や環境問題て、ひとつひとつの細分化された事象は、それはそれで正しいけれど、総体としてみるとなんだかおかしいということが、結構あると思います。

ちょうど、藤倉 良の「環境問題の杞憂」を読み終えたところだったので、そんなことを感じたのかもしれません。

「環境問題の杞憂」は、環境問題に対する世間一般の理解と科学的に検証した場合の差異がまとめられています。
たとえば、近年、環境が悪化し健康に影響を及ぼしていると一般に思われているが、実際は日本人の平均寿命は伸びているとか。

ただ、筆者も記していますが、全体を通して歯切れが悪い印象を受けます。

あることを安全だとか危険だとか、効果があるとか無いとかを科学的に言うとなると、歯切れが悪くなるのは当然だと思います。
どんなものでもリスクはあるものだし、結局は背負い込むリスクと得られる便益で判断せざるを得ないのかな。
そして、その判断の基準は、判断する人の置かれている環境で変わってしまう場合もあるのだから。

納豆だって、人によっては必ずしも食べやすい食品ではないけれど、日本の食生活に定着しているのは、便益がリスクを相当上回っているからでしょう。
余りにも便益やリスクを断定して語るのは問題があるし、聞き手としては疑ってかからなければね。
でも、それでは番組にならないのかな。

この本は読みやすい本だから、健康や環境問題が話題になった時、こういう見方や考え方もあるんだと、ワンクッション置く意味で、読んでみても良いかもしれません。

本環境問題の杞憂
藤倉 良/新潮新書/2006

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環境問題の杞憂
藤倉 良
新潮社 ( 2006-11-16 )
ISBN: 9784106101922
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2007.01.16

風の影/カルロス・ルイス・サフォン

「風の影」という忘れられた本を手にした少年ダニエルと、本の作者フリアン・カラックスの数十年を隔てた二つの物語が、平行して語られ、そして次第にひとつの物語に収斂していく、ファンタジーです。
基本的には陰鬱としたストーリですが、ひとつの悲恋がもうひとつの恋を救うというロマンティックな最後に、ほっとします。

800ページを越える大作ですが、展開にテンポや起伏がありどんどん読み進められます。

それと、バルセロナの街が美しく描かれます。これは、訳者の日本語の使い方の上手さに負うところもあると思います。

面白い本です。

本風の影(LA SOMBRA DEL VIENTO) 上・下
Carlos Ruiz Zafon/木村裕美(訳)/集英社文庫/2006

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風の影〈上〉
カルロス・ルイス サフォン
集英社 ( 2006-07 )
ISBN: 9784087605082
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風の影〈下〉
カルロス・ルイス サフォン
集英社 ( 2006-07 )
ISBN: 9784087605099
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2007.01.06

はじめての文学 村上春樹/村上春樹

文藝春秋から出された「はじめての文学」シリーズの村上春樹編です。現在、村上春樹と村上龍が既刊され、今後順次、日本の近代小説の作家が追加されていく予定のようです。
「はじめての文学 村上春樹」には、若い人向けの短編小説として村上自らがピックアップした17編が収められています。
そして、巻末には「かえるくんのいる場所」と題して、選んだ短編の手短な解説が書かれていて、村上ファンならこの部分も楽しんで読めるかもしれません。

主に短編集「カンガルー日和」「夜のくもざる」「レキシントンの幽霊」「神の子どもたちはみな踊る」からピックアップされているので、読んだことを憶えていたり、すっかり忘れていたりで、割と新鮮な感覚で読むことができました。

僕は、村上の短編も長編も好きですが、短編は主題がすっきりしていていいですね。はじめて村上作品を触れる場合は、短編から入るのも手かもしれません。

はじめての文学と取り上げられた短編集

本はじめての文学 村上春樹
村上春樹/文藝春秋/2006

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はじめての文学 村上春樹
村上 春樹
文藝春秋 ( 2006-12-06 )
ISBN: 9784163598109
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2006.12.29

風が強く吹いている/三浦しをん

痛快に面白い本です。

走ることに見放され、それでも走ることを考え続けている二人、清瀬灰二(ハイジ)と桑原走(かける)を軸に竹青荘の下宿人10人で、箱根駅伝を目指す荒唐無稽な話です。
10人の個性がよく描かれていて、特にラストの箱根駅伝の各区のひとりひとりの物語に惹きつけられます。

「速く」ではなく「強く」の意味や「頂点」の意味が全編を通して語られます。

現実にはあり得ない話と云々する前に、楽しんで読んでしまった本です。

本風が強く吹いている
三浦しをん/新潮社/2006

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風が強く吹いている
三浦 しをん
新潮社 ( 2006-09-21 )
ISBN: 9784104541041
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2006.12.14

ガイアの復讐/ジェームス・ラブロック

先日、職場に出勤した時、打合せテーブルに並べられた朝刊の中の「2040年夏、北極の氷ほぼ消滅」という見出しの産経新聞の記事が目にとまりました。ちょうど前の晩にジェームス・ラブロックの「ガイアの復讐」を読み終えたのばかりだったので、特にその見出しが目にとまったのかもしれません。

僕が初めて読んだラブロックの著作は、もう20年近くも前の「ガイアの時代」(工作舎)でした。
その中に記された、環境が低温の場合は黒いデイジーが優勢で太陽光を吸収し自身と周辺環境を暖め、高温の場合は白いデイジーが優勢で太陽光を反射し自身と周辺環境を冷やし、生育に適した環境に調整するというデイジー・モデルが、特に印象に残りました。
このような地球上の生命が自ら最適な環境に調整するというラブロックとリン・マルグリスのガイア仮説(その後のガイア理論)は、環境への適応により生物は進化すると思っていた僕には新鮮でした。

1990年代に入り、地球環境問題がグローズアップされ、'ガイア'という言葉をよく耳にするようになりました。
そして、その言葉の使われ方に、ラブロック達が唱える'ガイア'との違いを感じていました。
ガイアが地球環境の文脈の中で使われる時、その多くはあくまで人間にとっての地球環境として使われているように思います。でも、ラブロックは、人間もガイアの一部で、むしろガイアにとってその調整機能を破壊する有害な存在として捉えています。

「ガイアの復讐」はそのことが端的に語られています。さらに、ガイアは人間を排除にかかっていると。
ガイアが人間を受け入れるためには、人間の数が多すぎるとも。
その多すぎる人間を支える基本となっている電気は、核融合や水素エネルギー技術が確立するまで、環境にもっとも負荷の少ない核分裂エネルギーに頼るしかないと記します。
ラブロックの危機感が伝わってくる一冊ですが、日々、電気による快適な生活を享受している僕にとって、手厳しい本です。
大江健三郎は作家を未来の危機を予測する「炭鉱のカナリア」と言いました。ラブロックも科学者としての「炭鉱のカナリア」なのかもしれません。

ラブロックが地球温暖化の臨界点を二酸化炭素濃度500ppmとしています。北極の氷の溶ける量が増加すれば、氷の中の二酸化炭素が放出されて温暖化に拍車がかかると思います。気温の上昇による海水の膨張により、日本の海岸に面した平野は水没を逃れるために、防波堤に囲まれるようになるのだろうか?

本ガイアの復讐(The REVENG of GAIA)
James Lovelock/秋元勇巳(監修)・竹村健一(訳)/中央公論社/2006

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ガイアの復讐
ジェームズ ラブロック, 秋元 勇巳
中央公論新社 ( 2006-10 )
ISBN: 9784120037740
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引用文2040年夏、北極の氷ほぼ消滅
地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスの増加をこのまま放置すれば、北極の氷はこれまでの4倍のスピードで減少、2040年夏にはほぼ消滅するという試算結果が12日、米国地球物理学連合の学会誌「地球物理学研究レター」で発表された。
2006/12/12/産経新聞

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2006.11.22

月刊アスキー 2006年12月号/アスキー

月刊アスキーは、12月号から内容が一新されました。「ビジネスとITのギャップを埋める」と表紙に記されているように、その内容はITに軸足を置いたビジネス雑誌といった趣です。
従来の月刊アスキーのPCやソフトウエアの仕組や使い方など技術的な情報を中心にした編集から、大きく方向転換した感じです。

専門家とマニアのものだったPCが、今ではごく普通に仕事や家庭に入り込んできています。このことを考えれば、今回の編集方針の転換はなんとなくわかるような気がします。
装丁は薄くなり、価格は590円に下がり、出張の際、移動の電車の中で読むには手頃になりました。
掲載されている記事も力の入ったものです。

でも、その内容は月刊アスキーでない他の雑誌てもいいんじゃないて、気持ちがどうしても残ります。これからどうのようにして月刊アスキーらしさを出すか、興味のあるところです。
それと、出張に僕は月刊ではなく、駅の売店で売っている週間アスキーを持って行きます。

新装刊の月刊アスキー(上)/週間アスキー(下)

本ascii 12 2006 Dec.No.351
ASCII/2006

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2006.10.26

「負けるが勝ち」の生き残り戦略/泰中啓一

お茶の害虫のひとつにカンザワハダニという赤い色をした0.5mmほどの小さなダニがいます。このダニを防除するために、合成ピレスロイド剤を使うと、いったんはいなくなるのですが、暫くすると以前にも増して大発生することがあります。
このような現象はリサージェンスと呼ばれます。その原因は、カンザワハダニとともに天敵のケナガカブリダニ(ダニを餌にするダニ)も一緒に防除されたため、いったんいなくなったカンザワハダニの天下になるためと言われています。

こんなことを泰中啓一の<「負けるが勝ち」の生き残り戦略>を読みながら思っていました。

この本では、生物の進化を軸に人間社会まで、「利他主義」が生き延びるための最適な戦略であることを、コンピュータ・シュミレーションの結果や様々な事例などをとおして説明されます。
短期的には自分の利益にのために行動する「利己主義」のほうが有利だけれど、長期的には他を助けて行動するほうが絶滅せず生き残ると語ります。
集団の中では助け合ったほうが、その集団の寿命が長いということだろうか。
この考えがどのくらい生物の進化や人間社会にフィットするものか、僕には判断できません。ただ、どうしても目先の利益にとらわれてしまう僕にとって、少し考えされられる本です。

この本の筆者は、静岡大学工学部システム工学科の研究者です。以前紹介した「素数ゼミの謎」の著者、吉村 仁さんも静大工学部の研究者です。工学分野(といっても幅が広いと思いますが)からの進化の研究のアプローチも面白いですね。

本「負けるが勝ち」の生き残り戦略 - 何故自分のことばかり考えるやつは滅びるか -
泰中啓一/KKベストセラーズ/2006

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「負けるが勝ち」の生き残り戦略
泰中 啓一
ベストセラーズ ( 2006-09 )
ISBN: 9784584121214
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2006.08.24

グーグル Google/佐々木俊尚

先日、Googleのオンライン・ワープロ「Writely」を紹介しました。

僕は、ワープロはMSワードを常用しています。職場のPCと自宅のディスクトップ、ノートPC、併せて3台のPCにインストールされたワードを普段使っています。つまり、マイクロソフトにワープロソフトだけでも、公私の違いはあるけれど3つのライセンス料を支払っていることになります。
一方、Writelyは、インターネットにアクセスできれば、ブラウザから無料で使うことができ便利です。この文章だってPC-Aで書きはじめ、PC-Bで続きを、PC-Cで完成させるなんてこともできます。

ワープロばかりでなく、表計算やプレゼンテーションでもWritelyのようなのアプリケーションが提供されれば、既存のアプリケーションのライセンス料で成り立っているソフト会社には脅威だと思います。
ただ、既存のアプリケーションに比べ、その機能は遠く及ばないし、企業秘密や個人情報を扱う場合はその情報のセキュリティの確保が確立されなければ、すぐには脅威にはならないとは思いますが。

しかし、WritelyにWeb2.0の世界の一端を感じます。そして、Googleが展開しようとしている戦略の一端も。

「グーグル Google」は、そんなGoogleの戦略を具体的な事例を紹介しながら、わかりやすく解説しています。
精度が高くなった検索エンジンを背景に、キーワード広告やロングテール、あまり意識しない中で日常的に僕の生活の中に入り込んできています。
これから、その世界に好む好まざるにかかわらず巻き込まれていくのでしょう。

でも、たとえば、停電になったり通信手段が途切れたりしたらその世界も機能しなくなるし、その世界とは別に現実世界にしっかりと足を付けておかないといけないね。

本グーグル Google -既存のビジネスを破壊する
佐々木俊尚/文春新書/2006

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グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する
佐々木 俊尚
文藝春秋 ( 2006-04 )
ISBN: 9784166605019
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2006.08.18

「みんなの意見」は案外正しい/ジェームズ・スロウィッキー

邦訳は柔らかいタイトルですが、この本の内容は柔らかくはありません。
既存の社会の制度やそれに基づく組織で日々を送っている僕にとって、割と重たい問題を提示していると感じました。

<「みんなの意見」は案外正しい>は、少ない専門家の判断よりも、一見烏合の衆と捉えられる一般大衆が相対として示した判断のほうが正しいことが多いということを、様々な事例をひきながら、説明をしています。
そして、これら集団の知恵が機能するためには、構成員が多様で分散し独立した集団であり、さらにそれをひとつにまとめる仕組みが必要であることが書かれています。

この本は、これからの社会システムの方向性のひとつを示している本だと思います。
ただ、既存の社会システムと対峙する側面を多く持っているので、スロウィッキーの提示する社会に変革していくためには、現社会(その中には当然、僕も含まれています)との相当の軋轢が生じるんだと感じます。
それとも、少しずつ変わっていくのだろうか。

読んで面白い本でした。

本「みんなの意見」は案外正しい(THE WISDOM OF CROWDS)
James Surowiecki/小高直子(訳)/角川書店/2006

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「みんなの意見」は案外正しい
ジェームズ・スロウィッキー, 小高 尚子
角川書店 ( 2006-01-31 )
ISBN: 9784047915060
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2006.07.02

ウェブ進化論/梅田望夫

何時の頃から本やCDの多くを僕は、Amazon.co.jpで買うようになりました。それは、Amazon.co.jpでは1500円以上の注文は送料無料になるし、時間を問わず注文ができ、特殊な本やCDでなければ翌々日くらいには届くという利便性があるからです。
また、検索のシステムが充実していて、目的の本やCDを探している過程で思わぬ作品に出くわす喜びがあったりします。それは、実際のお店で本やCDの背表紙を眺めながら、掘出物に出くわした時の喜びに似たものかもしれません。

Amazon.co.jpで購入を続けていると、恐らくその履歴などから計算して機械的に表示させるのだろうけれど、購入を促す本やCDがブラウザ上に紹介されます。
「ウェブ進化論」はそんな本の一冊でした。
でも、薦められて本を買うなんてちょっと癪だから、この本は気にはなるけれど購入はしませんでした。それが、近所の本屋に行った時に、たまたま書棚の「ウェブ進化論」が目にとまって、その場で購入し読んでみました。

「ウェブ進化論」は面白い本でした。

この本では、ブログ、ロングテールそしてWeb2.0など、コンピュータとインターネットの技術を背景に、今起こりつつあり、これから起こりうることを、大きな社会的な視点で捉え、語られています。

不特定多数無限大への信頼を、既存の枠組の外に置くWeb2.0の考え方は斬新で、19世紀から20世紀にかけて確固たるものとして作り上げられた社会を大きく変える21世紀の考え方なのかもしれません。
ただ、現実社会にどっぷりとつかって生きている僕には、ヤーフー、楽天、Amazon.co.jpあたりまでのビジネスモデルは理解(本当の理解ではないかもしれませんが)できても、その先のWeb2.0の考え方は面白いと思っても、実感としてなかなかイメージできないところがあります。

ただ、この新しい考え方については、今後、注目ししていきたいと思いました。

「ウェブ進化論」とは、まったく分野の関連性ありませんが近未来を語るという意味で、二十歳の頃に読んだ安部公房の「砂漠の思想」の読後感に似ています。

本ウェブ進化論 -本当の大変化はこれから始まる
梅田望夫/ちくま新書/2006

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ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
梅田 望夫
筑摩書房 ( 2006-02-07 )
ISBN: 9784480062857
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2006.04.28

解剖学教室へようこそ/養老孟司

出張の宿泊先で飲み歩いたり食べ歩いたりしない僕は、荷物になららない文庫本を持っていて、大抵は夜、ホテルでその本を読んでいます。

今回の出張には、たまたま出張前の週末に本屋で見つけた養老孟司の「解剖学教室へようこそ」を持っていきました。
養老の著作は、以前紹介した「唯脳論」をはじめ、折に触れて読んでいるけれど、「解剖学教室へようこそ」は読んでいなくて、文庫本ということもあり、出張に持っていくことにしました。

この本は、解剖学者の養老の経験をとおして、解剖学の歴史や意義が語られます。そして、人体構造や生と死についても言及しています。
「バカの壁」に代表される最近の著作のようなわかり易さやまとまりのよさはありませんが、中高校生を意識して書かれているので、全体を通して読みやすい本です。

そして、研究者や技術者の書いた本は、やはり現役時代のものが面白いとあらためて感じました。
現役時代に書かれたものは、時として専門的であり広がりに欠けることがありますが、現在進行形で書かれているため、新鮮な印象を受けます。そして、洗練されず不完全な分、読み手の想像力を掻き立ててくれます。
ただ、当然、現役の時は本業に忙しいわけで、本として出版される機会が少ないのが残念ですが。

「解剖学教室へようこそ」もそんなことを感じた一冊です。

本解剖学教室へようこそ
養老孟司/ちくま文庫/2005(初版1993)

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解剖学教室へようこそ
養老 孟司
筑摩書房 ( 2005-12 )
ISBN: 9784480421616
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2006.04.14

ダ・ヴィンチ・コード/ダン・ブラウン

「ダ・ヴィンチ・コード」が、上・中・下巻の3冊セット1,740円の文庫本になったので、買って読みました。
この手の繰り返して読む可能性の少ない本は、単行本だと高すぎてなかなか買うのには二の足を踏んでしまいます。

最初は余り期待せずに読み始めたけれど、これが結構面白く読めました。
僕はキリスト教に詳しくないので、この本のストーリーの骨格となっているキリストの解釈が、以前から議論されていたものなのか、新解釈なのかはわかりません。また、何処までが既定の事実で、何処からが推測かも判断できません。
恐らく、キリスト教やレオナルド・ダ・ヴィンチの作品群に詳しい人が読めば、僕が感じたものとは違った深い面白さがあるんだと思います。

僕は、単純にミステリーとしての面白さを感じました。

大学教授ローバート・ラングドンと暗号解読官ソフィー・ヌヴーが、事件に巻き込まれ、その謎を解いていくストーリー展開、そしてラストのこの二人の関係は、ミステリーの王道のように思います。ダ・ヴィンチの「モナリザ」や「ウィトルウィウス的人体図」「最後の晩餐」などに仕組まれた謎解きは、余りにも有名な作品群だけにダイナミックに展開します。

5月20日には映画が公開されるそうです。謎解きの鍵が視覚的だから、映画は見ようと思っています。
また、修道僧シラスの生き様がどのように描かれるのかも興味があります。

ダ・ヴィンチを少し勉強してみようかと思わせる作品です。

本ダ・ヴィンチ・コード(DAVINC CODE) 上・中・下
Dan Brown/越前敏弥 (訳)/角川文庫/2006

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ダ・ヴィンチ・コード(上)
ダン・ブラウン
角川書店 ( 2006-03-10 )
ISBN: 9784042955030
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ダ・ヴィンチ・コード(中)
ダン・ブラウン
角川書店 ( 2006-03-10 )
ISBN: 9784042955047
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ダ・ヴィンチ・コード(下)
ダン・ブラウン
角川書店 ( 2006-03-10 )
ISBN: 9784042955054
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2006.02.11

プリオン説はほんとうか?/福岡伸一

年末に米国産牛肉の輸入が条件付で再開されたと思ったら、牛海綿状脳症(BSE)の病原体がたまりやす特定危険部位である脊柱が混入されていて、再び輸入が中止されました。
以前もブログに書きましたが、BSEの問題が話題になるたびに、病原体とされる異常型プリオンタンパク質についての疑問がわきます。
どうやって飼料に混入してた異常型プリオンタンパク質が、分解されず体内にとり込まれ、脳や脊髄などの特定危険部位に到達するのか。
そして、異常型プリオンといえどもタンパク質が正常型プリオンタンパク質に働きかけて異常型に変えてしまうのか。
そのような疑問です。

病原体といえばウイルスにしろ細菌にしろ遺伝子を持っていて、そのプログラムに基づいて増殖する過程で病原性が発現するのだと、僕は理解していました。
ですから、遺伝子のプログラムによって作り出されるタンパク質が自らの意思があるかのように増えていくことが、不思議でなりません。

まあ、それだからこそプリオン説を唱えたスタンリー・プルシナーは、新しい病原体の感染原理としてノーベル生理学・医学賞を受賞したのでしょう。

今回紹介する「プリオン説はほんとうか?」は、プリオン説の不完全さを指摘するとともに、レセプター仮説を提示しています。

本の巻末に書かれているように「不溶性の凝集タンパク質が、経口的に体内に入った後、消化を免れることはともかくとして、消化管を突破し、末梢のリンパ組織で増殖してから全身に広がり、最後は、脳血管関門を超え脳に侵入し大増殖する」ことに対する疑問から筆者の研究は出発しています。
この疑問は、プリオン説に対して誰もが抱く素朴な疑問だと思います。

そして、筆者の提示するレセプター仮説は、異常型プリオンタンパク質が病原体ではなく、真の病原体は未知のウイルス(あるいは何らかの核酸を持った病原体)としています。そして正常型プリオンタンパク質は、病原体の感染レセプターとして機能し、ウイルスが感染した結果、その副産物として異常型プリオンタンパク質が蓄積されるのだという仮説です。
確かにこの仮説は、とても理解しやすいものです。
ただ、未だにウイルスやその断片である核酸すら見つからない。プリオン説を覆す決定的な証拠がつかめないようです。

プリオン説が正しいのか、レセプター仮説が正しいのか、それとも他の原因があるのか、これからの研究が待たれるところです。

しかし、それはそれとしてこの本は、読んでいて面白いし、BSEの原因についての知識を得るにはいいかもしれません。

本プリオン説はほんとうか? タンパク質病原体説をめぐるミステリー
福岡伸一/講談社 ブルーバックス/2005

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2006.02.09

All About Niagara 1973-1979+α/大瀧詠一

先日、Amazon.co.jpを眺めていたら大瀧詠一の「All About Niagara」を見つけました。もう絶版になっているものと思ってよくよく見ると、ナイアガラ・レコード創立30周年ということで、増補改訂して再版されたものようです。

「All About Niagara」はその名のとおり、ナイアガラ・レコードのディスコグラフィやレコードのライナー・ノーツを中心に、雑誌での対談やら記事やらが載っていて、さらに大瀧詠一のいい意味での偏執さが加わって、ナイアガラのファンなら相当に楽しめる一冊です。逆に言えば興味のない人にとっては、まったく価値を見出せない本かもしれません。

1982年版(写真の下の本)は八曜社から発行されて1,200円でした。2005年版(写真の上の本)の発行元は白夜書房でなんと4,700円!もします。この値段を見て買おうか買うまいか相当迷いましたが、'82版はページがほつれたりして相当ボロボロになっているので、買ってしましました。

届いてみて納得しました。'82版は225ページでしたが、'05版は787ページに増補されています。
'82版の範囲は'73~'79まで(一部の作品は'81まで掲載されています)でしたので掲載されていなかった、その後のヒット・アルバム「ロング・バケーション」や「イーチ・タイム」もきちんとした形で載っています。

'81の「イーチ・タイム」以降、単発での作品のリリースはあるけれど、オリジナル・アルバムは出ていないんじゃないでしたっけ。
勿論、この本は面白いけれど、新しい作品を待ち焦がれているおじさんが、ここにも一人いるんです。

All About Niagara 上 2005年版、下 1982年版

本All About Niagara 1973-1979+α
大瀧詠一/白夜書房/2005

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増補改訂版 オール・アバウト・ナイアガラ
大瀧 詠一
白夜書房 ( 2005-12-07 )
ISBN: 9784861910982
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2006.02.03

インフルエンザ危機/河岡義裕

以前、僕が新型インフルエンザに興味を持ったきっかけとなった本として、菅谷憲夫の「インフルエンザ 新型ウイルスの脅威」を紹介しました。
この本が出たのは1999年ですので、当然、その後に発生した山口県や京都府、そして最近の茨城県の鳥インフルエンザのことは書かれていません。また、インフルエンザの治療薬のタミフルに代表されるノイラミニダーゼ阻害薬は開発中の薬として紹介されています。
2004年年初に山口県で発生した鳥インフルエンザH5N1型以来、新型インフルエンザとの関係からマスコミでも折に触れて報道され、僕も気になるニュースとして注目してきました。
でも、「インフルエンザ 新型ウイルスの脅威」から後のインフルエンザ関係の本を読んでいないと思って、河岡義裕の「インフルエンザ危機」を読みました。

筆者のインフルエンザウイルスの研究を軸に、インフルエンザウイルスの研究の歴史が素人の僕にもわかり易く書かれています。また、茨城県での鳥インフルエンザH5N2型やノイラミニダーゼ阻害薬など最近の話題まで書かれていますので、インフルエンザに関する知識を俯瞰するにはちょうど手頃な本だと思います。

僕の住む静岡県でもタミフルの備蓄を平成18年度、19年度の2ヶ年で実施するようです。新型インフルエンザがどんな形で出現するかはわかりませんが、現時点での有効と考えられる対応策がノイラミニダーゼ阻害薬しかないとすれば、その備蓄と発生した時の体制を準備しておくことが大切だと思います。

本インフルエンザ危機(クライシス)
河岡義裕/集英社新書/2005

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インフルエンザ危機
河岡 義裕
集英社 ( 2005-10 )
ISBN: 9784087203134
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2006.01.26

薬はなぜ効かなくなるか/橋本 一

前回、三瀬勝利の「薬が効かない」を紹介しました。今回、紹介する橋本 一の「薬はなぜ効かなくなるか」も一般向けの本ですが、「薬が効かない」よりも耐性菌が発生する仕組がもう少し詳しく書かれています。
文中に出てくる薬剤の名前や化学式などは、僕には手に負えないと思うところもあるけれど、細菌の薬剤耐性化する仕組は面白く読めました。

細菌が耐性化する方法も攻撃的な方法と守備的な方法があるところなど、人間社会と似ていると感じます。

まず、攻撃的方法として細菌を無力化する薬剤の構造を壊してしまう方法。そして、「修飾」と呼ばれる薬剤の構造に余計なものを付け加えて薬剤の効力を失わせてしまう方法が挙げられています。

守備的な方法としては、薬剤が作用し不活性化される細菌の酵素の量よりも多くの酵素を作る方法や攻撃対象の酵素の機能を維持しながら攻撃されないよう形態を変えてしまう方法。また、細胞内に薬剤が侵入されないように透過性を変化させたり、逆に入った薬剤を細胞外に排出する機能の強化などが挙げられています。

細菌も生き残るため、あの手この手を使って耐性化する方法に、やっかいなものと感じながら変な感心をしてしまいました。

それともうひとつ面白かったのは、細菌は薬剤耐性の遺伝情報を水平遺伝により伝達しているところです。簡単に言うと細菌にもメスとオスがいて接合により遺伝子の交換が行われるということ。
本書143ページには、接合の状況の顕微鏡写真が8枚掲載されています。オスが線毛でメスを捕らえる写真やメスに逃げられる写真があったりして、面白く読めました。
細菌はもっとも古い生物と考えられているけど、男女関係ってその頃からの永遠のテーマなんですね。

まあ、薬剤耐性ひとつとっても細菌はかなりしたたかなわけで、それを相手にしなければならない人間も大変です。

本薬はなぜ効かなくなるか - 病原菌は進化する -
橋本 一/中公新書/2000

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2006.01.03

薬が効かない!/三瀬勝利

時々、黄色ブドウ球菌や緑膿菌の院内感染により患者が亡くなったといったニュースを耳にします。黄色ブドウ球菌にしろ緑膿菌にしろ何処にでも、人間の体の中にも存在する常在菌で、健康で免疫力が正常な人にとっては、これら細菌が日和見感染しているだけで、とりたてて問題になることもないのでしょう。
ただ、外科手術の後など免疫力が極端に落ちた場合、日和見感染していた細菌が肺炎を起したりして、さらにその菌が多剤薬剤抵抗性だったりすると、治療の方法がないということで、大きな問題になるんだと思います。

僕の知人にも緑膿菌が原因の肺炎で入院し、菌の薬剤耐性を調べたらすべての薬が効かないわけではないけれど、多くの薬に耐性を持っていたといったことがありました。
結局、知人は自分の免疫力で肺炎を克服して退院しました。ただ、他の入院患者への院内感染を防ぐため、個室に押し込められていましたが。

「薬が効かない!」は、そんなこともあって読んだ本です。
主に抗生物質が細菌にどのような仕組みで効くのか、どのように耐性を獲得してきたのかが書かれています。
また、耐性菌発生の過程に抗生物質への過度の依存や日常生活における過度の清潔志向が関係していること、そしてそれに対する警鐘と対応が記されています。

アオカビから抗生物質のペニシリンが発見されたことは有名な話です。アオカビは外敵から身を守るためにペニシリンを作るのと同時に、ペニシリンから自分自身を守るための耐性も有しています。細菌はそのアオカビの耐性遺伝子をちゃっかり自分に取り込み、自分も耐性化していまうとのことです。
何かマイクロメータの世界で生き残りをかけた、それぞれの戦略があるんだと面白く思いました。

エボラ出血熱、エイズ、腸管出血性大腸菌O157、サーズ、そしてまだ見ぬ新型インフルエンザなど、これから対峙しなければならない新たな感染症に加え、多剤耐性菌の出現により戦後あまり問題とならなくなった細菌とも対峙しなければならない厄介な時代だと、読んでいて考えさせられました。

本薬が効かない!
三瀬勝利/文春新書/2005

・ 書籍の紹介一覧 B0027

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薬が効かない!
三瀬 勝利
文藝春秋 ( 2005-08-19 )
ISBN: 9784166604593
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2005.12.27

意味がなければスイングはない/村上春樹

この本を読んでいて「スイングしなけりゃ意味ないね」を聴きたくなったと12月21日のブログに書いたけれど、ようやく読み終わりました。

村上春樹の小説と音楽は密接に関連していますが、彼が音楽についてまとまって書くことは稀なので興味深く読みました。

ここでは、シダー・ウォルトン、ブライアン・ウィルソン、シューベルト、スタン・ゲッツ、ブルース・スプリングスティーン、ゼルキン、ルービンシュタイン、ウイントン・マルサリス、スガシカオ、フランシス・プーランク、ウディー・ガスリーとクラシック、ジャズ、ロック、ポップスなど幅広く11人が紹介されています。

この中で、僕が少しでも音楽を聴いたことがあるのは、シューベルト、スタン・ゲッツ、ブルース・スプリングスティーン、ウイントン・マルサリスだけです。

でも、丁寧にそして個人的に紹介されるそれぞれ音楽家は、その音楽を耳にしたことがなくても面白く、1枚CDを買ってみるかといった気分になります。(そうすると村上のバイアスのかかった聴き方になってしまうかもしれませんが)
勿論、知っている音楽家ならもっと面白く読めるけれどね。

ウイントン・マルサリスの紹介のタイトルは「ウイントン・マルサリスの音楽はなぜ(どのように)退屈なのか?」となっていますが、読んでいて、心の中でそうだよなとつぶやいてしまいました。

デューク・エリントンの作品に「キャラバン」というジャズのスタンダードがあります。この曲を、エリントン自身がアルバム「マネー・ジャングル」で、マルサリスは「スタンダード・タイム」の中で取り上げています。
このふたつの「キャラバン」を聴き比べると、マルサリスの演奏はとても洗練され完成度が高くしっかりしたもです。一方、エリントンは荒削りで泥臭く力強い演奏です。
僕はエリントンの演奏の方を気持ちがしっくりくるのでよく聴きます。マルサリスの演奏は、なんか教科書を読んでいる気分になるんで・・・。(でも、マーカス・ロバーツのピアノはなかなかいいよ)

このように、この本は音楽家の作品をよく知っていれば、なるほどとか違うよとか、より深く楽しめるんだと思います。

それにしても、帯の「月が消え、恋人に去られ、犬に笑われても、なにがあろうととも音楽だけはなくすわけにいかない。」は、なかなか素敵なキャッチ・コピーですね。誰が考えたのだろう。

本意味がなければスイングはない
村上春樹/文藝春秋/2005

・ 書籍の紹介一覧 B0026

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意味がなければスイングはない
村上 春樹
文藝春秋 ( 2005-11-25 )
ISBN: 9784163676005
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2005.11.15

墨東綺譚/永井荷風

(※ タイトルの墨東綺譚の「墨」の字は偏のさんずいがつきます。ただ、コンピュータ上ではその字がないので便宜的に「墨」の字を使いました。)

大江健三郎の新作「さようなら私の本よ!」を数週間から読んでいます。でも、どうにも文章が僕に馴染まず116ページまで読んだところで一旦投げ出して、永井荷風の「墨東綺譚」を読み始めてしまいました。
20年くらい前に一度読んだことがあったのですが、最近、村上春樹の「東京奇譚集」を読んで、ふと思い出して読み返しました。

この小説の昭和初期の東京下町の描写は、生活の香や音がよく描写されていて感心します。街角を切り取った少し粒子の粗いモノクロームの写真を見ているようでいいですね。

さて、この小説で描かれる老人と娼婦の淡くて深く、近くて遠い恋心は、せつないです。何か憧れてしまいます。でも、そんなことって僕の現実にはない話なんだろうな。

本墨東綺譚
永井荷風/岩波書店/1937(初出)

・ 書籍の紹介一覧 B0025

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ぼく東綺譚
永井 荷風
岩波書店 ( 1991-07 )
ISBN: 9784003104156
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2005.10.12

海辺のカフカ/村上春樹

「海辺のカフカ」を最近、読みました。発売と同時に購入したから、もう3年も読まずにほったらかしにしていたことになります。
最近、発表された「東京奇譚集」を皮切りに、同じくほったらかしにしておいた「アフターダーク」、そして「海辺のカフカ」と立て続けに最近の村上作品を読みました。(それに「ふしぎな図書館」と「地球のはぐれ方」、「少年カフカ」、随分読まずにため込んでいたものです。)
村上春樹は、僕が継続的に読んでいる作家のひとりですが、ここ数年、新作を購入しても何故だか読む気になれずにいました。

「海辺のカフカ」の読後感は、少々しんどくせつないものでした。
ナカタさんと佐伯さんの抱く空虚がしんどく、カフカと佐伯さんの今は存在しないひとへの思いがせつなく感じました。

せめてもの救いは田村カフカのこれからが残されていることでしょうか。

本海辺のカフカ (上)(下)
村上春樹/新潮社/2002


・ 書籍の紹介一覧 B0024

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海辺のカフカ〈上〉
村上 春樹
新潮社 ( 2002-09-12 )
ISBN: 9784103534136
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海辺のカフカ〈下〉
村上 春樹
新潮社 ( 2002-09-12 )
ISBN: 9784103534143
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2005.09.07

素数ゼミの謎/吉村 仁

アブラゼミの声がいつの間にかツクツクボウシの声に変わり、道端に力尽きたセミの成虫が目立つようになると、もう秋はすぐそこですね。

そんなわけでもないのですが、セミをテーマにした本を読みました。
この「素数ゼミの謎」は、アメリカの東部・南部で13年とか17年周期で発生する周期ゼミが、何故長期間かけて成虫になるのか、何故極めて狭い範囲で同時にしかも大量に発生するのか、そして何故13年と17年なのか、その謎を解き明かす本です。

文章はところどころ漢字にルビをふり、石森愛彦の挿絵を加え、子供にも読める作りで、1時間もあれば読めます。

読んでみて、考えさせられました。
僕は、今まで生物は多様性を担保しながら生き残ってきたのだと漠然と考えていました。多様性を失った種はいい時は隆盛を極めるけれど、ひとたび環境が変化すると変化に適応できず絶滅の一途をたどるのだと、そんなふうに思っていました。

ところが、この本を読んで、氷河期のような昆虫にとって余りにも厳しい環境下で、多様性が排除されることにより、生き残ってきた種もあるんだと思い直しました。

この本に書かれている内容も仮説のひとつでしょうが、話としてとても面白く読むことができました。

それにしても数理生態学なんていう研究分野があるんですね。

本素数ゼミの謎
吉村 仁/文芸春秋/2005

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素数ゼミの謎
吉村 仁
文芸春秋 ( 2005-07-12 )
ISBN: 9784163672304
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2005.07.12

夢をつかむ イチロー262のメッセージ/「夢をつかむイチロー262のメッセージ」製作委員会

この本は、メジャーリーグ挑戦以降の2001年から2004年にかけてのイチローが、各メディアなどに発言した断片をまとめたものです。

読んでみて思うのは、当たり前のことだけどイチローはプロなんだと言うこと。ストイックで自分に厳しく、なおかつ自分を絶えず客観的に見ている。

イチローのメッセージの数々は、感銘は受けるけれど、自分に置き換えるとかなりしんどいです。

本夢をつかむ イチロー262のメッセージ
「夢をつかむイチロー262のメッセージ」製作委員会/ぴあ/2005

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イチロー 262のメッセージ
『夢をつかむイチロー262のメッセージ』編集委員会
ぴあ ( 2005-03-11 )
ISBN: 9784835615127
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2005.06.02

沈黙/村上春樹

僕が村上春樹の「沈黙」をはじめて読んだのは、1996年に出版された短編集「レキシントンの幽霊」の一編としてでした。
たまたま最近、Amazon.co.jpで、全国学校図書協議会から集団読書テキストとして「沈黙」が出版されているのを見つけて、興味を引かれ、読み返してみました。

この短編は、心の深くに淀みのような読後感が残ります。
自分は安全なところにいて、受入れやすい情報を無批判に受け入れ、そして他人を傷つけていないかと。

集団読書テキストとあるように学校の授業のテキストに「沈黙」が使われているとしたら、その授業でどんなことが語られるのだろう。

本沈黙
村上春樹/全国学校図書館協議会/1993


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沈黙 (集団読書テキスト (第2期B112))
村上 春樹
全国学校図書館協議会 ( 1993-03 )
ISBN: 9784793381126
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レキシントンの幽霊
村上 春樹
文藝春秋 ( 1996-11 )
ISBN: 9784163166308
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2005.05.20

失踪日記/吾妻ひでお

僕は吾妻ひでおの熱心な読者ではないけれど、漫画雑誌で折にふれて彼の作品を読んできました。
「失踪日記」は吾妻の最近の作品で、そのタイトルに惹かれ読んでみました。

2回の失踪、アルコール依存症と闘病生活の実話を漫画化し、タッチはソフトですが、少々重たい内容です。
1回目の失踪は路上生活が描かれ、2回目の失踪とアルコール依存症の闘病生活はそこでの人間関係が描かれています。描写は柔らかだけど、観察眼の鋭さは流石、漫画家だと思います。

路上生活やアルコール依存症の勉強になったりして・・・。

本失踪日記
吾妻ひでお/イースト・プレス/2005


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失踪日記
吾妻 ひでお
イースト・プレス ( 2005-03 )
ISBN: 9784872575330
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2005.04.28

唯脳論/養老孟司

先日(4月17日)に静岡県が主催する「未来の森づくり」シンポジウムに行ってきました。特別講演の講師に養老孟司が招かれていることもあって、400人収容の会場は満員でした。

僕が初めて養老孟司の名前を知ったのは、廃刊になった「朝日ジャーナル」の誌面です。うろ覚えで心もとないけれど、確か「幽霊はいるか」といったテーマに養老が寄稿しいました。「幽霊は心(脳だったか頭だったか、正確には思い出せません)の中にいる」という主張が面白くて、彼の著作を読んでみたくなりました。

そして、最初に読んだ著作が「唯脳論」です。
人間の社会=都市は脳の上に作り出された人工的なものという視点から自然や体を論じるところは、「唯脳論」から現在まで一環しています。

「唯脳論」は、最近のベストセラーになった著作より話題の広がりが少ないし、解剖学者としての少々マニアックなところがあり、読みづらい一面もありますが、僕が養老の著作で最初に思い浮かぶのがこの本です。

本唯脳論
養老孟司/青土社/1989

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唯脳論
養老 孟司
青土社 ( 1989-10 )
ISBN: 9784791750368
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2005.03.17

銀河鉄道の夜/宮沢賢治

もう25年も前の学生の頃、東北地方を2週間ほど旅行し、釜石から花巻まで釜石線に乗りました。列車は、北上山脈を越え遠野に向かうとき、山越えのためヘアピンのようにループして登っていきます。トンネルに入って次の風景が見えると、先ほど見た景色のはるか上を走っていることに気がつきます。そのときの不思議な感覚を、今でも憶えています。
この釜石線に乗ろうと思ったのは、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」が気になっていたからです。

「銀河鉄道の夜」は、10年に一度くらい思い出したように読み返す本です。

主人公の少年、ジョバンニをとおして孤独や死、そして現実という重いテーマが淡々と静かに語られます。
そして語られる内容を解釈や理解するのではなく、そっとしておこうと、読むたびにその思いを強くする不思議な物語です。

ところで、野原の小さな停車場で聞える「新世界交響楽」は、やっぱり第2楽章なんだろうか。

本新編 銀河鉄道の夜
宮沢賢治/新潮文庫/1924(初稿)

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新編銀河鉄道の夜
宮沢 賢治
新潮社 ( 1989-06 )
ISBN: 9784101092058
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2005.02.15

進化しすぎた脳/池谷裕二

この本は、コロンビア大学の研究員の筆者が、ニューヨークの邦人高校生に行った大脳生理学の講義をまためたものです。

高校生を対象としているので、大脳生理学の最前線の話題を扱っていながら、素人にもわかりやすく、かといって手を抜かず、その丁寧な語り口に好感が持てました。
また、現時点で解明されていること、されていないこと、推測されることなどを、ごちゃまぜにせず語っている点にも、若き研究者の熱心でかつクールな姿が垣間見えます。

大脳の仕組みは、神経細胞レベルではかなり詳しくわかってきている点。しかし、細胞がネットーワークになり、それがどのように機能しているかということになると、まだ、ほとんどわかっていない点。そしてそれを解明するためには、複雑系の考え方がいる点など、面白く読めました。

また、脳を扱った本は、ともすると哲学的になったりするのですが、この本はその様なところがない点もいいなと思いました。

本進化しすぎた脳 -
中高生と語る[大脳生理学]の最前線 -

池谷裕二/朝日出版/2004

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2005.02.03

ご冗談でしょう、ファインマンさん/R.P.ファインマン

この本は、20世紀を代表する物理学者 R.P.ファインマンが自らの体験を語った自伝です。
まあ、当然といえば当然なのですが、時々、物理の理論が出てきて、基礎的な知識がない僕にはわからないところもあります。でも、物理の世界に特化してなく、全編をとおして天衣無縫なエピソードが語られ、とても面白く読めました。

下巻の最後に、カルフォルニア工科大学の卒業式でのファインマンの式辞が、収録されています。
ここで語られる科学的良心、誠意を尽くす姿勢は、別にサイエンスの世界だけではなく、一般社会にも通じるものと感じました。
この項目だけでも十分読む価値のある本と思います。

本ご冗談でしょう、ファインマンさん (上)(下)
(SURELY YOU'RE JOKING, MR. FEYNMAN !)

Richard P. Feynman/大貫昌子(訳)/岩波現代文庫/1986

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ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉
リチャード P. ファインマン
岩波書店 ( 2000-01 )
ISBN: 9784006030056
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ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉
リチャード P. ファインマン
岩波書店 ( 2000-01 )
ISBN: 9784006030063
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2005.01.11

大人の科学マガジン Vol.06/学習研究社

忌野清志郎が蓄音機の背景に写っている表紙が目に付いて、手にとってページをぱらぱらしていると、清志郎ばかりでなく細野晴臣も載っていて、この「大人の科学マガジンVol.06」を買ってしまいました。
「大人の科学マガジン」はこれまでにピンホール・カメラやラジオ、顕微鏡などを取り上げその存在は知ってはいましたが、実際購入したのはVol.06の蓄音機が初めてです。

蓄音機の歴史や構造、それと思い入れが書かれた冊子と、録音・再生ができ簡単に組み立てられる蓄音機のキットがついて、結構楽しめます。

CDプレイヤーなどのデジタル機器の仕組みって僕なんかにとってはブラック・ボックスなんですが、蓄音機が音を再生する仕組みはなんかわかりやすくていいですね。

本大人の科学マガジン Vol.06
大人の科学マガジン編集部/学習研究社/2004

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2005.01.06

アメリカ乱入事始め/山下洋輔

僕がジャズを聞き出したのは20歳前後の学生の頃で、その心地よさに惹かれながら、一方で何処か理屈で聴いていたところがありました。
そんな中でジャズ・ピアニスト、山下洋輔の一連のエッセイとか旅行記とかを読むと、ジャズを理屈で考えたり難しく考えたりすることが馬鹿馬鹿しくなり、肩の力を抜いてジャズを楽しむことができるようになりました。
「アメリカ乱入事始め」もそんなことを思わせた一冊です。

この本はジャズの発祥の地ニューオリンズを皮切りに、セントルイス→カンザスシティ→シカゴ、そして現在のジャズの本場ニューヨークまで旅をしながら演奏をする旅行記です。
その様子が落語の語りにも似た山下独特の文体で綴られ、痛快に面白く読み進められます。また、同行した北島敬三のスナップ風のモノクローム写真がジャズの雰囲気や匂いを伝えます。
そして、ジャズ・ジャイアント達の名前があちらこちらに登場するのも僕を楽しませてくれました。

それにしても、僕は山下のレコードを数枚持っていますが、山下の音楽の楽しさは録音ではなくライブが一番なのかもしれません。

本アメリカ乱入事始め
山下洋輔/文藝春秋/1986

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2004.12.17

理科年表 第78冊/国立天文台編

平成17年版の理科年表が、最近発刊されました。
理科年表は、暦、天文、気象、物理/化学、地学、生物、環境の部門で構成されているデータ集で、毎年更新されています。でも、僕はこの本を使って何かをするわけでもないので、数年に一度買い替えるだけです。

暇なとき、理科年表のページをめくっていると面白いです。

たとえば、静岡は風が余り吹かない静かな街ですが、日最大風速10m/s以上の日数の平均値が年2.6日です。近くの浜松は18.1日、表に載っている最小は軽井沢の0.1日、最大は富士山の313.4日です。軽井沢て静かなところなんですね。

別にこんなことを知っていても日常生活には役に立たないですが。

本理科年表第 78冊
国立天文台編/丸善/2004

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2004.12.07

1973年のピンボール/村上春樹

村上春樹は僕がその作品を継続して読んでいる作家のひとりです。でも「アフターダーク」にしても「海辺のカフカ」、最新の「地球のはぐれ方」にしても、最近の作品は購入はするけれど何故か気分がのらず、まだ読んでいません。ちょっと不思議です。

僕が村上の作品に初めて接したのは、「群像」に書き下ろされていた「1973年のピンボール」でした。大江健三郎のエッセイが読みたくて買った「群像」に掲載されていて、偶然読んだのが最初です。
確か冬だたと思います。午後から読み始めて、夕方読み終える頃には辺りはすっかり暗くなっていました。読後の浮遊した感じを今でも憶えています。センチメンタルな閉塞感と不思議な共生感は、今まで味わったことのないものでした。

それからです。村上の作品が発表されるたびに読むようになったのは。

本1973年のピンボール
村上春樹/講談社/1980

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1973年のピンボール
村上 春樹
講談社 ( 1980-01 )
ISBN: 9784061168626
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