薬が効かない!/三瀬勝利
時々、黄色ブドウ球菌や緑膿菌の院内感染により患者が亡くなったといったニュースを耳にします。黄色ブドウ球菌にしろ緑膿菌にしろ何処にでも、人間の体の中にも存在する常在菌で、健康で免疫力が正常な人にとっては、これら細菌が日和見感染しているだけで、とりたてて問題になることもないのでしょう。
ただ、外科手術の後など免疫力が極端に落ちた場合、日和見感染していた細菌が肺炎を起したりして、さらにその菌が多剤薬剤抵抗性だったりすると、治療の方法がないということで、大きな問題になるんだと思います。
僕の知人にも緑膿菌が原因の肺炎で入院し、菌の薬剤耐性を調べたらすべての薬が効かないわけではないけれど、多くの薬に耐性を持っていたといったことがありました。
結局、知人は自分の免疫力で肺炎を克服して退院しました。ただ、他の入院患者への院内感染を防ぐため、個室に押し込められていましたが。
「薬が効かない!」は、そんなこともあって読んだ本です。
主に抗生物質が細菌にどのような仕組みで効くのか、どのように耐性を獲得してきたのかが書かれています。
また、耐性菌発生の過程に抗生物質への過度の依存や日常生活における過度の清潔志向が関係していること、そしてそれに対する警鐘と対応が記されています。
アオカビから抗生物質のペニシリンが発見されたことは有名な話です。アオカビは外敵から身を守るためにペニシリンを作るのと同時に、ペニシリンから自分自身を守るための耐性も有しています。細菌はそのアオカビの耐性遺伝子をちゃっかり自分に取り込み、自分も耐性化していまうとのことです。
何かマイクロメータの世界で生き残りをかけた、それぞれの戦略があるんだと面白く思いました。
エボラ出血熱、エイズ、腸管出血性大腸菌O157、サーズ、そしてまだ見ぬ新型インフルエンザなど、これから対峙しなければならない新たな感染症に加え、多剤耐性菌の出現により戦後あまり問題とならなくなった細菌とも対峙しなければならない厄介な時代だと、読んでいて考えさせられました。
薬が効かない!
三瀬勝利/文春新書/2005
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